インドネシアで起業することを決めて2年が経つ。僕はまだ生きている。(後編) 〜2年が経った今〜

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前話: インドネシアで起業することを決めて2年が経つ。僕はまだ生きている。(前編) 〜最初の1年〜
次話: インドネシアの会社が4年目に突入。それでもまだ僕は生きている。


2014年5月にインドネシアジャカルタで会社を立ち上げ、2015年5月の今、設立からちょうど1年が経ちます。この1年のできごとをざっと振り返っていきます。


■ "1年かかってしまった?" それとも "1年で出来た?" 


事業を開始して1年が過ぎ、正直な感想は本当に早いスピードで時間が "経ってしまった" ということです。


毎月、毎週、毎日のレベルで、目指すべきものに対して今いる自分の立ち位置を確認しています、事業の大筋の方向性や根っこの部分は変えることはありませんが、戦略やアプローチ手法などは市場の変化やユーザーニーズにあわせて、試行錯誤しながら微修正を繰り返しています。日本では一定のマーケット熟成があったのでこのサイクルは頻繁にまわす必要がなかったのですが、インドネシアでは1年かけてこの作業をしてきました。


本来であれば、活動量が増えれば成果も比例して上がっていくような筋肉質な状況が望ましいのですが、僕たちは事業開始からすぐにはマーケットを掴みきれなかったということを認めなければなりません。


そして今、ようやく着実に積み上がっている数字や、経験値やネットワークの拡大から、1年がたってようやく市場を捉えはじめてきた感覚がでてきました。


ここまでを "1年かかってしまった"と考えるか "1年で出来た" と考えるかは、ビジネスモデルやプロダクトによって違いはあるかと思いますが、僕はまだどちらだったのかは分かりません。

もう1年かけて市場に問いかけてみたいと思います。


おこがましい言い方かもしれませんが、僕たちは市場を創り育てていくプレーヤーになることを目指しています。しかし市場が生まれるタイミングを計ることは難しいと思っています。いかに市場のそばで流れを感じ、来たるべき時を待ち瞬時に反応する事ができるか。これが重要だと思っています。



■会社というイキモノには血液が流れている

よくそれは、事業資金といわれています。会社が存続するため、営業をするため、新しいものを作るため、なにをするにしても資金が必要です。


言うなれば呼吸をするだけでも血液が必要なのと同様に、

会社も、ただ立っているだけでも資金が必要です。

そして長生きするためには血液の循環が必要です。


幸運な事に、事業を開始するための資金として少なくない金額を預けていただきました。


少し自分の話をします。

日本で働いている頃、毎月待っていれば口座に給与が振り込まれてきました。給与が入ったら何に使おうかなー、もっと給与上がらないかなー、なんてことをちょくちょく思っていた気がします。

今はどうかというと、もちろん会社のコストとして一定の金額は口座に振り込まれてきます。しかし預かっている事業資金の口座残高も同時に毎月目減りしていくの見て、

「おおお、このコストがあったら、事業のために広告打てるよ、あれも導入できるよ」

なんて事を思ったりもします。

何が言いたいかと言うと、毎月振り込まれてくる給与は自信をもって受取れますかっていうことです。もちろん今これがゼロになったら僕の血液が無くなってしまうので困っちゃうんですが。

僕はいま人生史上一番お金と向き合っていると思います。

その中で気付いたことは、


「無駄遣いに繋がるコストならびた1円も払わねーぜ」

「価値があるものには1,000万円だって即払いだぜ」

ってことです。


資金を繊細にコントロールし大胆に投資していくことを徐々に覚えてきました。

この国を経済的に豊かにしたいし、会社もばんばん新鮮な血液を循環させていきたい、

ステークホルダーにも貢献したい、一緒に働くメンバーには1番豊かになってもらいたい。


ただ目の前の事業に打ち込むだけでなく、

会社のキャッシュフローもシビアに管理してかなければならない。

俯瞰できる目と、嗅覚を磨き、

この先も永続的に続く、力強い大樹のような会社に育てあげていきたいと強く思っています。



■失敗は最大の財産であり価値となる


オフィス移転の話です。

設立当初は15m2 ほどの窓のないスペースにギュッと肩を寄せ合いデスクを構えていました。コストも節約して、コミニュケーションもしやすいはずだと1年はこれでいこうと契約しました。

先ほどの話に関連しますが、コスト削減のためといってなんでもかんでも削っていいものではありません。僕はこの時点でちょっとしたミスをおかしていたのです。

現場で実際に起きたことを紹介します。


・ミーティングスペースとコミニュケーション

もともと僕は定例で実施するような社内ミーティングはやる必要が無いと思っています。数字やレポート内容はクラウド上で管理しいつでも見れるようにしておけばいいし、報告のための資料作りをする時間も無駄であると考えています。

そして、実施する時は必要な時に必要に応じて開催し短時間で終了することを意識しています。

Meetingを開催するということ= "重要で緊急度の高いこと" 

これををメンバーに意識してもらうことも大きな狙いです。


以前のオフィスの場合、社内ミーティングは、自分のデスクに座りながら出来たので最初は効率がいいなと思っていました。しかしミーティングに対するメリハリ感が薄れてきていることに気付きました。どうしても同じ空間で、業務の延長でミーティングが始まるので緊張感も無く間延びしたミーティングになってしまっていたのです。発言も少なくなってきて、まるでスタートアップの活気あるミーティングとは言えないものでした。

社外の方とのミーティングについて、営業の原則は相手先に訪問することであると僕の教科書ではなっているので、自分たちのオフィスを利用することは優先度を下げていました。もしある場合は有料スペースやカフェで実施すればいいと。しかし想像以上にインドネシアの多くの企業さんは先方から来る機会も多く、改善をしなければならない状況でした。

そして窓がない、狭い、などの物理的な要因も重なり、見えないストレスが徐々に溜まっていっていき、メンバー同士のコミニケーションの質にも影響が出てくるようになりました。


その結果、数倍のコストを掛けて新オフィスへの移転を決めました。


僕の判断は遅かったと思います。今思えばそうなることは分かるだろということなんですが当時はその判断が出来なかったのです。コストを意識し過ぎていたり、これくらい我慢できるだろうとか、固定概念にとらわれた結果、改善すべきタイミングが遅くなり、投資する対象を誤ってしまったのです。実害にとらわれ、機会損失に気付けなかったことが原因です。この1年での1番の教訓です。


新オフィス移転後はたくさんの実効果が出ています。

・毎日のようにお客さんに来てもらうことができ営業効率があがる

・新オフィスのデザインが話題になり新しいお客さんとの接点が生まれる

・グループ形式のワークショップの開催でコミニュケーションが深まる

・ステークホルダーとの関係性がより強固なものとなる

・社内のコミニュケーションも格段に質が良くなっている

・壁面ホワイトボードの活用により意思疎通と進捗管理が改善される


劇的にメンバー達のモチベーションが上がっているように感じることが僕にとって1番嬉しいことかもしれません。



■ヒト、ヒト、ヒト、とにかくヒト


僕には今、すごく信頼できるチームメンバーがいます。

これは本当に恵まれていることだと実感しています。スタートアップ企業であればどこも同じかと思いますが、創業メンバーにはマルチタスクをさばけるスキルが必須で、それに加えストレスフルな環境に順応できるメンタリティーも必要です。インドネシアだけでなく多くの東南アジアワーカーにある事情ですが、こういったメンバーの採用は非常に困難です。


日本であればある程度のツテを使いながらメンバー集めができるかもしれませんが、インドネシアで立ち上げたばかりの名も無い外国企業に身を捧げることはなかなかの決断です。

しかし今僕の隣には、会計管理をしながら営業テレアポまでやるメンバーや、初めて見るシステムのデバッグをしながら数多くのセールスプレゼンをこなすメンバーがいます。


お世辞抜きに今の僕にはかけがえのない存在です。


設立からの1年は出来る限りスリムな経営を続け、市場を捉え続けクサビを打つことを意識してきました。

次のステージは、捉えたマーケットに対してリソースを増やし絶対的な活動量を積み上げて、成果をあげていくことです。


今、採用面接はメンバー全員とのインタビューを必須としています。

採用基準は、これに尽きます。


メンバー全員が "一緒に働きたい" と思えるか。




■何もないことを認める大切さと成功体験による弊害


インドネシアに来て、僕が心がけていて半ば強制的に意識改革していることがあります。それは、


今までの成功体験はゼロにする


ということ。

どれだけ日本で実績があってもそれは日本国内の限られた領域だけでのことで、今いる場所はまったく土俵が違います。無かったことにする訳ではないですが、すがることはしません。

相手もそれを意識していません。


成功体験は必ずしも武器にならないし、逆に足かせになることもある。

それは無駄なプライドや既成概念が人を傲慢にさせ、柔軟な発想をできなくさせることを意味します。


どれだけ、評価されていたビジネスモデルでも、プレゼンがうまくても、顧客がたくさんいても、一旦それらをゼロにします。僕たちはゼロから積み上げていく必要があるんです。ルーキーとして新しい土俵で勝負をしているのだから。これからの評価はユーザーや市場がするもので、自分で評価をするものではありません。過去の成功は未来を作るための材料にならないということです。


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