重圧から逃げた3年間

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次話: 勘違いした4年間


負けは蒔け、勝ては糧


ベスト4で対戦したのは創部間もない上宮太子高校。


結果は大差で破れ、秋季大会3回戦敗退から大阪大会ベスト4という成績で幕を閉じた。



とはいえ、当時履正社高校は2年生が主体だった事もあり、秋以降はかなり前評判の高いチームとして認識されていた。


優勝候補筆頭


心の幼い高校生を狂わすには十分な言葉だった。


個がバラバラになった最終学年


まだまだ幼い高校生にあって、周囲の評価は時に球児を狂わせる。

そんな歯車を狂わされた球児達という表現は決して他人事ではない。


それが僕たち履正社昭和59年生。


もちろん僕もその一人。


なぜなら前年度のいざこざで好き放題な選手を抑制する監督が不在、そして先輩の不在。


そして評判通り、連戦連勝だったオープン戦。


楽観するには充分過ぎた。


大阪大会は楽勝やろ。

そんな雰囲気すら漂っていた。

少なくとも危機感なんて皆無。


そして手応えとは裏腹に怪我もあり減った出番に腐る自分。


そんな選手は一人や二人ではなかった。


そうしてチームはバラバラになり個人の能力が高く、前評判も高いまま格下相手に秋季大会はあっさり敗戦。


近畿大会出場を逃した。


気がつけば、5回あった甲子園の挑戦権は、あと1回だけになってしまった。

そしてその1回も、挑戦権すらないまま終わるとは、この時は予想もしなかった。


しかし、前年の春の大会の好投、夏の大会での活躍もあり

最高学年になってからは、試合の出番すらろくにないまま、プロ注目選手に名前だけを連ねていた。


MAX142キロ右腕。

プロ注目選手。

出番の無い公式戦。


そんな状況を正確に捉える心なんて当時は持ち合わせてなかった。


自分を客観的に見る事はなかなか出来なかった。


ホントの自分はどこなんかな?

そんな事を思いながらも手応えを感じながら3年春を終えた。


夏は森田がエース。


その言葉にまたもや過信した。


涼しい夏


最後の夏を迎える準備期間である6月、異変が起きた。


それは生まれて初めて味わう”肩痛”


記憶が正しければ、歯磨きも痛かった。


ちぎれそうなくらい痛かったし、何をしても治らなかった。

マウンドからホームベースすら届かない・・・


最後の夏、ケガで終了。

よく聞く話にまさか自分が。


認めたくもないが、現実に相当やばかった。


そんな状況の中、幸か不幸か、足の肉離れも起こす。


投げれなくても投げていただろう肩。

トドメを刺すように訪れた肉離れ。


あのまま投げてたらもしかしたら・・・


今となっては救いの怪我だった。


これにより誰よりも早く、最後はマウンドに上がる事無くスタンドで高校野球を終える事となる。


久しく経験のないスタンドでの応援。

屈辱や空しさや不甲斐なさや、とにかく心のやり場に困った。


勝ち進むにつれ、選手からは甲子園まで絶対行くからその時はメンバーに入ってくれ。


そんな声ももらったが、正直当時はもうすでに心は折れていた。


ベスト8で予選敗退し、本当の終わりを迎えた。


僕の高校3年間は、実力以上の結果からは逃げ、過去の結果にはしがみついた。


重圧からはとにかく逃げ続けた。


全てが中途半端で不完全燃焼だった3年間だった。


そんな不完全燃焼を象徴するかのように、その夏はやけに涼しく感じた。


思えば野球のない夏なんて、物心ついた頃から経験がなかったからだ。


どんな形であれ、高校野球を引退すれば否が応でも次の進路を余儀なくされる。


しかし、そんな状況で進路なんて決めれなかった。


何も決めぬまま、言われるがままに以前から推薦をもらってた大学へ入学するかどうかの選択を迫られた。


しかし当時の僕には、この先4年間を選択する決断力なんてなかった。


断腸の思いで土壇場になって全ての誘いを断り、関係者にはほんと迷惑を掛けてしまった。


結果、浪人する事になる。


しかし、この推薦を断り浪人した事が後の人生を大きく変える事となった。


そしてそれが勘違いした4年間を引き起こし、

この勘違いから生まれた「本当の手応えの正体」を形成する源泉となっていた。



そして、闘うべき対象が徐々に野球の既成概念へと変わって行った。

そんな野球と対峙し、勝てると本気で思えた時期でもあった。


勘違いした4年間に続く・・・

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