恩師との別れ…

高校進学を控えた中学3年生の初春。学年末テストも終わり、英語暗唱大会も終わり、あと残されたことといえば…卒業式だった。
中高一貫に通っていたので、卒業したところで10日後にはまた同じメンバーと顔を合わせるので、特に変わることなんて無かった。
私たちの話題といえば…
教師達の入れ替わりの話だった。
やれ数学の〇〇先生が結婚で退職、だの〇〇先生が教頭先生になるらしい、だの。
その中で一番私が不安になった話は…
担任の先生の退職の噂だった。
自分をここまで支えてくれた先生が退職?それは考えたくないことだった。
だが、中学3年生。されど、中学3年生。オトナの事情、というものが何となく分かっていた。
担任の先生はほぼ定年に近い歳だった。きっと退職してゆっくりされるんだろう、そんなことを考えていた。
卒業式の日。明るく卒業式を終えた私たちは教室に集結し、最後のクラス会を開いた。
それまで泣くことが無かった担任の先生が…花束を抱えて声を震わせた。
「泣いたら…カッコ悪いもんな。」
そう言って顔を歪めて、無理やり先生は笑った。
「先生はこれから何をするんですか?」そんな質問が教室のどこからか聞こえた。
「先生は…夢を叶える為に、教師を辞めます。」
私は驚いた。冗談にも若いとは言えない先生が…夢を叶える為にまだまだ頑張る…?
でも誰1人それを否定も、笑うこともせず、その空気の温かさを感じた。
泣くのは…カッコ悪い…そう思い、私も先生の前で涙は堪えた。
いつか私も大人になった時。先生にどこかで会うことがあれば、先生に感謝の気持ちを述べたいと思った。
だからその時は…何も言わなかった。何故かわからないけど、何も言葉が浮かばなかった。
先生から貰ったものはあっても、私はまだ歩き出したばかりだったからだ。まだまだ道の途中。先生に感謝を述べるのは今じゃなくてもいいかな…そう思い、先生には笑顔で挨拶をした。
外に出ると…季節はもう春だった。

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