中卒・元自営業が6000人規模の上場企業で働いてみて思ったこと~顔のない上司~
憧れのビジネスパーソン
私は中学生の頃、サラリーマンなんかぜってーなりたくねぇとなぜかすでに決心していた。
七三分けでスーツを着て満員電車に揺られながら、毎日同じことの繰り返しをするのが嫌だったという単純なイメージでそう決めていた。
しかし6年ほど自営業として働いているうちに、
いつの日かスーツを着た大企業のビジネスパーソンに憧れるようになった。
髪型もスッキリさせ、細身のスーツをビシッときめ、
ネクタイピンを光らせ、ネクタイをきつく締めディンプル!
裾幅17センチの気持ち短めのシングル派
iPadで日経デジタルを読みながら満員電車に揺られ株価をチェック!
ピカピカのモンクストラップを履いて丸の内を急ぎ足で歩く。
昼はお財布を持って少し高めのランチ!その後は、屋上でバレーボール!
花金アフター5は丸の内OLと飲み会!たまにガード下で一人でちょい飲み!
そんなビジネスパーソンに憧れていたのだが、31歳にして遂にこれらが全て叶ったのだ!
大きな会社には「顔のない上司」がいた
ご縁があり、私はとある大手会社に採用され憧れのビジネスパーソンになることができた。
6000人規模の大企業、これほど大きな組織に属したことは初めてである。
以前いた業界は比較的若年層が多かったことと、6年ほど個人事業主をしていたので雇われること自体が久しぶりであった。実際に身を置いてみると己がまだまだ社会人・組織人として未熟であり、ひよっ子であったと痛感した。
もちろん柔軟に謙虚に勤労しているつもりであるが、
大企業という組織的なものを大変興味深く観察していた。
しかし働き始めて2カ月が経つころ、なにか違和感をおぼえるようになった。
今回、社員になれたのは嘱託社員として採用され、私の提案したプロジェクトを軸に新規事業を立ち上げるという特別採用であった。ものすごく簡単に言えば「マネーの虎」のようなものである。
社内でディスカッションし最終的には役員の決裁をもらい事業化していく。
そのために事業プランをブラッシュアップし事業計画書とプレゼン資料をつくっていくのだ。
しかしながら私の提案する事業プランなのだが、
いつの日か気づけば会社が求めているプランを立てている気がしてきた。
ディスカッションしていく内にプレゼン資料も上司のために作成しているようなそんな気がしてきた。
こうすればきっと上司は納得するだろう・・・
こうすればきっと役員は喜ぶだろう・・・
きっと社長はこういうのを求めているのだろう・・・
組織というなにか実態のないものに流されていくような。
例えるならば、「顔のない上司」
その「顔のない上司」のために、
自分の大義までも抑えながら事業プランをつくっているようなそんな気がしてきた。
自分が自分ではなくなるような。
「顔のない上司」のためにすり合わせてやるなら、私がやらなくてもいいのではないかと。
他の人がやればいいのではないか?これでは誰がやっても同じではないかと思い始めた。
でもおそらくそれが会社の理念だったりとかするのだろう。
社員のほとんどがきちんと理念に基づき、同じ方向を見据えていることには本当にすごいと思った。
だが個々に話をしてみると、それぞれの理念や持論ももちろんあるようにも思う。
しかしこれが組織となると「顔のない上司」が現れる。
そしてこの「顔のない上司」に逆らおうとする気配があまりない。
良く言えば協調性や組織力が高いともいえるが会社は全体主義なのだろうか。
現在のポジションや妻子のために保守的となり、
「顔のない上司」のご機嫌を損ねるようなことはしなくなったりもするのだろうか。
しかしながら新卒採用ならこれはわかる。
採用にあたり会社の思いが双方に合致しているはずであり研修などもある。
なにより自ら面接に来ているわけでもある。おそらく「顔のない上司」は現れないのかもしれない。
私は、当プロジェクトの「目的」は合致してたのだが「手段」までは合致していなかったようだ。
「手段」が違えば私がやる必要がない。
「顔のない上司」もこれでは成功しないと考えているに違いない。
「顔のない上司」が求めている仕事を無難に遂行しながら、
クーラーの効いた快適できれいなオフィスで働き、
このまま己が死んでいくようなそんな気分であった。
「顔のない上司」は一体誰なのであろうか。
会社員の本音と建前
大きな会社は全体主義なのかとも感じ始めた。
なんだ。別に私がやらなくてもいいんではないか?
個性が強く出るのは居酒屋にいる時だけのような気がしてならない。
会社や上司の指示は絶対であり文句も言わずにそつなくこなす。
右向け右と言われれば、角度は様々だが全体が一斉に右を向く。
うまく立ち回る人もいれば、ノンポリ社員も多くいる。
組織を動かすのは政局に近いような気もしている。
上場企業の社員は、学歴もさることながら基本的には聡明な方が多い。
学生の頃から学習することを怠らず勤勉することを厭わない。
しかし聡明な方でも人間である(笑)
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