あこがれの関西トップ大学の入学式にいったのがエイプリルフールだった話。
◯これは僕の高校生活までのサッカー人生と、あこがれの第一志望の大学に行っただけの話。
サッカーという夢の終わり
「ピッピッピーー・・・」
それは僕が高校3年生の夏のある日、母校のグラウンドに響き渡った試合終了を告げる笛の音であり、僕の青春であるサッカー人生の終わりを告げる音であり、現実へと向き合うための始まりの音であった。
サッカーをする者であれば、誰もがプロサッカー選手になる事は夢見るであろう。
もちろんそれはサッカーだけではないだろう。
きっと部活などでスポーツをするものであれば、1流のスポーツ選手になることは誰もが1度でも夢みるのではないだろうか。
僕はその一人だった。
僕は幼稚園の頃からサッカーを続け、小・中・高とずっとサッカー部に所属してきた。
最初の頃というものは親にいやいや行かされていた。
みんなが友達と遊ぶ中、土曜日にサッカーに行くというのが嫌でしかたなかったのだ。
ただ行ったら行ったで、サッカーをすることは楽しかったし、暇があれば家の前でリフティングをしたり、学校の壁に向かってボールを蹴る壁当てをよくしていた。
いつからかサッカーは僕の生きがいであり、生活の1部となっていたのは小学校5、6年生のころだろうか。サッカーの試合なんてあんまり見ないけれど、兄が好きだった中田英寿や、中村俊輔に影響され、後にはメッシやクリスティアーノ・ロナウドの動画をipod nano に入れ毎日のように見ては真似をするようになった。
「好きな事をして、それが仕事でお金がもらえるなんてどんなに幸せなんだろうなー」
なんて事を思うようになった。単純にサッカー選手はかっこよかった。そしていつしか僕の夢はプロのサッカー選手になることだった。
僕の性格というものは、先生の言う事は絶対だと思っていたまじめキャラで、あまり人とコミュニケーションをとるのが得意ではなかったと思う。
そのまじめさからか、中学では地元のサッカー部のキャプテンもつとめたが、あまりチームをまとめられず、学校では軽いいじめにもあったこともあるけれども、自分にはサッカーがあると心に言い続け、がんばるような人間だった。
ただそこまで秀でてサッカーがうまい訳でもないし、中学のサッカー選抜にも選ばれず、おそらくすこしサッカーが上手な普通の少年だったと思う。
それでも頑張ればいつかすごいやつになれると信じつづけ、高校でもサッカー部に入った。
1年生の頃はある程度は部活内で注目され、Aチームの練習にも何度も参加するようになり、試合にも出させてもらい、ある程度プレーできて自信が持てた。
最初は絶対レギュラーになってやるぞと思っていたけれど、だんだん先輩のピリピリした雰囲気にのまれミスを連発するようになった。最初はそんなものだと思っていたし、先輩もやさしかったけれど、2年生になり公式戦が近づくにつれ、周りの雰囲気もよりピリピリしたものとなり、何度も先輩に怒られた。
絶対いつかうまくなれると思い続け、練習もがんばったが、試合で結果があまりでなかった。
そして何より僕は怒られるのが嫌いだった。
それでも頑張り続け、自分らの代になるとレギュラーで出場していたが、練習と思ったようなプレーができづ、ベンチ要員とレギュラーを何度も行き来した。
いつからか、お前は練習だけうまい(笑)、なんてゆわれることもあった。
自分自身もある程度センスがあると思っていたし、いつかはこれを乗り越えられると思っていたし、心のどこかで、プロになりたいなんて幻想も抱いていた。しかしそれだけ努力もできていなかったと思うし、正直甘かった。それでもあきらめず僕の生き甲斐であるサッカーを続けていたけれど、試合では結果が出ず、怒られる日々。
いつからか僕はサッカーが嫌いになっていた。
うまくなりたいけど、ミスして怒られたくない。
いやサッカー自体は、大好きだったし、朝も自主練に行き頑張っていた。
ただ試合でボールを受けるのが怖くなっていたのだ。
パスがきてミスをしないだろうか。。そんなことが試合中頭によぎることが多くなった。
そして3年生になり、夏の自分ら最後のインターハイを迎えるようになった。
やはりあきらめきれずがんばってきたけど、状況はかわってなかった。ただまだ期待されてたのか、Aチームでもレギュラーもしくは後半からベンチで交代はさせてもらっていた。
そして夏のインターハイ初戦。
試合は母校のグラウンドで行われる。
そしてここからは、試合に負ければ引退となる。
僕は正直試合にでたくなかった。
サッカーだけが生き甲斐だった僕が、もう試合に出る事を恐れていた。
しかし、まだあきらめたくないし引退もしたくない。
勝ってまだ仲間とサッカーはしたい。矛盾した気持ちだった。
そして試合当日。
レギュラー発表で、
11人の中に僕の名前はなかった。
正直ほっとした。今日もベンチスタートである。
そして試合が進み、前半は0−0。
後半から交代で呼ばれるかもしれないとハーフタイムはアップをして備える。
しかし、正直でたくなかった。
自分のミスでチームが負けるのが怖かった。
しかし交代はなく、そのまま後半がスタート。
そして開始数分後、自分のチームが点をきめ1−0になった。
よしよしと一緒にベンチの仲間と喜び、そのあと監督がメンバーを一人呼び交代する。
しかしその後1点を返され1−1となった。
ベンチはピリピリした雰囲気となる。
また監督がメンバーを呼ぶ。自分ではなかった。
いつ呼ばれるのかと正直不安でしかたない。
そして試合は進みラスト15分。
また1点を決められ1−2と逆転される。
「おいおい、まじか」
このまま行けば、試合終了である。監督が選手を呼び3人目の交代。
それも自分ではなかった。交代枠はあと一人。
自分はただ外から仲間が頑張るのを見るだけだった。
いつもならこの時間帯では自分は交代していたが、まだ呼ばれない。
「でるのか?もしかしてこのまま終了なのか?」
「ここでまた出場し、ミスをしないだろうか?」
そんなことを考えていた。
終了までラスト10分。
ついに監督が選手交代のため、最後の交代メンバーを呼ぶ。
やっぱりきたか。僕は不安ながらもこの試合を変えるため、気持ちを決めた。
しかし呼ばれたのは、
僕の後輩の名前だった。
「・・・え。」
そのときの気持ちというものは、試合に出る緊張から解放されたのか、自分が試合にでれず見守っているという状況に拍子抜けしたのか、よくわからない気持ちだった。
ただ僕に残されたことは、残りの11人のメンバーを応援する事だけだった。
この試合に負ければ、そこで高校サッカーの終わり。
引退の2文字が頭によぎる。
試合前はあれほど出たくなかった自分が、引退という現実にさしかかり、愚かにもいまさらこの試合に自分が出場しチームを勝たせたいという気持ちにまるっきり変わっていた。
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