高木教育センターのありふれた日々(8)

4 / 5 ページ

「そうですね。現実の研磨技術などではムリな世界か」

 Yさんとの会話は、こんな感じ。

 同じ教室で指導できると思われますか?

 あまりにレベルが違いすぎる。この二人に同じ宿題を出すわけですが、馬鹿げている。Xくんには難しい二次法的式の解の公式も、Yさんには人間がやるべき問題ではない程度にしか見えない。Xくんには苦痛かもしれないが、Yさんにも自分の時間が浪費させられ苦痛だ。

  Xくんはサッカーをしている方が楽しいのでクラブ活動に一生懸命。Yさんは勉強したいのに「強制クラブ」である制度のためにやりたくもないバレーをやらされる。

 どうして「やりたいことをやる」という程度の当たり前の原則が守られないのだろう。基本的人権を踏みにじっても平気な教師ばかりだからだろう。社会主義に洗脳されると北朝鮮のマスゲームのような全体行動が大好きになるらしい。

 学校は、アメリカの中学校のように午後2時半になったら消灯でいい。そうすれば、クラスやクラブの濃密な人間関係の中でイジメや自殺という悲劇が避けられる。スポーツをやりたい子はプロに習いに行ってもいいし、勉強したければ予備校や塾で勉強すればいい。

 それを、全体主義的に「強制」するから登校拒否や引きこもりで抵抗するしかなくなる。内職や仮病で勉強時間を確保するしかなくなる。今の学校は、アレルギーの子の口に無理やり全員と同じソバを押し込んでいるようなものだ。

 これでは、自分の身を守るために学校に行かなくなるのは当たり前。

 Xくんと、Yさんを本当に同時に指導できるのならやってみせて欲しい。できもしないのに

「学校に来い」

 などと言わないで欲しい。できないのなら、

「できないから、家でやってください」

 と正直に言ってほしい。そして、生徒たちを学校から解放して欲しい。

第七十七章

「予備校の模試って、誰が採点してんの?」

  私の塾生の子たちは、高校1年生の頃は校内順位を気にする。四日市高校なら、上位の5番くらいが「東大」、20番くらいまでが「京大」、60番くらいまでが「阪大」「名大」という感じ。

 ところが、高校2年生になる頃から

「待てよ、名大を受けにくる1万人くらいのほとんどは他校の子じゃん」

 と気づく。それで、河合塾や駿台の模試を受け始める。それで、受験校を決める。つまり、この「模試」というのは人生に与える影響がきわめて大きいと言わざるをえない。

 では、この模試の作成や採点は誰が行っているのか。もちろん、予備校の講師だろう。では、その予備校の講師って大学受験生50万人の将来を決めるほどの人物なのだろうか。ここが、いつも疑問に思う点だ。

 なぜなら、私はその予備校・塾業界で30年生きてきたからだ。名大教育学部を出て、アメリカの中学校で教え、英検1級や通訳ガイドの国家試験を合格し、名古屋の大規模予備校・塾・専門学校で教えてきた。

 ネイティブと一緒に英検1級の過去問を解いていたら

「なんで日本人のお前がこんな問題を解かないといけないのだ?」

 と呆れるほど古い英語を見て叫んだ。私の目から見ても、ナゾだらけの問題だった。生徒に定評のある「赤本」「青本」の模範解答でさえ、

「この解答では京大では6割くらいだね」

 と思うものも多い。私は京都大学を7回受けて成績開示したので、どのレベルの解答が何割くらいの点数を与えられるのか当てるのが得意だ。問題はとてもシンプルなのだ。

「英語が上手な人って誰なの?」

  私にも、

「先生と呼ばれる人は完璧だ」

と思う時期があった。今は、たくさんの実物に出会ったので、全くそう思っていない。私は英語のプロと思われているが、それでも自分の英語が完璧だと思っていない。日本語ほど流暢にはいかない。

 だから、少なくとも自分より学歴、資格、経歴などで劣る人を先生とは認めない。私でも帰国市場には発音でかなわないこともある。京大医学部に合格した子に数学で負けたことがある。

 だから、

「私より格下の先生が京大受験生の解答を採点できるはずがない」

 と思っている。思っているのではなくて、現実だと認識している。事実、私の指導させてもらっている優秀な理系女子は大規模塾に行って

「あそこの先生ダメ」

 と言って、やめてきた子が多い。

 さて、本題。

「予備校の模試って、誰が採点してんの?」

 だが、

「採点してはいけない人が採点してんの」

 かもしれない。私は名古屋の予備校や塾で、旧帝卒かつ英検1級所持という講師の方に出会ったことがない。人前に出れる人なら

「私が採点しています」

 と公表できる。でも、スゴイ数の受験者なんだから、どう考えても学生アルバイトが採点しているのだろう。

「東大や京大受験生のハイレベルの答案を、ワンランク下の大学の学生が採点?」

「これって、可能なんですか?客観テストならいいけど、英作文や和訳は?」

  ぜんぶ透明でできない事情があるのは分かる。でも、それで受験生50万人の将来を占っているのだから大問題だと思う。

  

第七十八章

「ボクはどうして京大を7回受けたのだろう?」

  直接の理由はA子ちゃんだったが、経緯はもう少し複雑だ。

私は教師が嫌いだった。だから、大学を卒業して塾で勤務を始めたら、突然「教壇の向こう側から、こちら側」になってしまった。違和感があった。嫌いだった教師と似た立場になったからだ。せめて、マシな講師になりたかった。

それに、高校を卒業する18歳くらいで将来を決められるのは納得いかなかった。文系、理系と決めつけられるのには納得がいかなかった。AランクからFランクまでランク付けされるのに納得がいかなかった。

私が教師が嫌いなワケは、英語も話せないのに英語を教える姿勢。自分では難関校が合格できる力がないのに、生徒の前では上から目線で話すこと。だから、私は英検を受ける生徒がいたら、自分で受けて合格してみせる。京大受験生を指導するのなら、京大を受けて合格レベルにあることを成績開示してみせる。

それくらいは礼儀だと思った。

文系人間と分類されたことも覆しておきたかった。生徒が数学の指導を依頼してきたので、良い機会だと思った。それで、数学1A、2B、3Cを独学し始めた。

「やっぱり自分は文系人間だ」

 と思うこともあったが、A子ちゃんもいたし、子供がいて経営を維持しなければならないし、諦めるわけにはいかなかったのだ。それに、なんと言っても楽しかったのだ。高校の時は「卒業までの3年間」と期限を切られたので落ち着いて勉強できなかったのだ。

 私は学校も嫌いだ。自分のペースで勉強できない。

 オリジナル、チェック&リピート、1対1、赤本を2周ずつやった。Z会は8年間研究した。京大模試は10回受け、センター試験は10回受けた。京大二次試験は7回受けた。徹底的に研究し尽くした。

著者のキョウダイ セブンさんに人生相談を申込む

著者のキョウダイ セブンさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。