重度のうつ病からの生還、15年の記録

<

2 / 6 ページ

>
著者: 西條 智之

そして、その日から、5種類の処方薬を飲み始めました。


「はじめてのうつ病の薬」なのです。


そして、私のこころの状態が、その薬で全く変わり始めたのです。


抑うつ剤を飲むと、「ハイ」な感じになります。


どん底にある気持ちを、薬で持ち上げて、「気を出す」ことになるのです。


そのために、大きなエネルギーを使うので、逆に「疲れる」ことになります。


疲れては、寝る・・・


そんなリズムが続きました。


そして、夜は眠れなくなりました。


当然です、昼間に寝ていているからです。


そのために、強い睡眠薬を処方してもらいました。


「睡眠薬って、本当に強いんですね。」


飲んでから、30分も経たないうちに、腰が立たなくなりました。


そして、深い眠りに入る、気がついたら、朝の10時になっていました。


そんな日々が、ずっと続きました。


私には、何も残っていませんでした。


仕事も、勉強も、お金も失い、人と会うことすら出来ない生活になりました。


あのサブリミナルテープのせいで、


「一瞬で、生活が変わってしまった」のです。


何か人間関係の悪化があったり、仕事の厳しさが増したりして、


徐々に追いつめられたと言う感じではなく、


何があったか分からないくらい、一瞬の出来事で、こうなってしまったんです。


誰を恨むこともなく、誰かが原因であることもなく、


ただ、ただ、聞いていたサブリミナルテープのせいで、こうなったのです。


このストレスを、どこにぶつけていいかも分かりませんでした。


そして、通院していた最中に、さらに症状を悪化させる出来事がありました。


獨協大学時代の友人が、隣りのアパートに住んでいて、


ここぞとばかりに、「私をいじめ始めた」のです。


いままでずっと、私に「嫉妬」していた彼は、


弱った私を「ここぞとばかりに」


チクッ、チクッと、針を刺すがごとく、いじめ始めました。


うつ状態で、なにも返答出来ないでいる私を、執拗にいじめ始めたのです。


それも、カトリック教徒なのです。


「これが、クリスチャンのすることか・・・」


それに対して、抵抗出来ない私でした。


そんな状況の中で、私は「薬漬け」になりました。


その結果、


「ご飯がこぼれて、胸の辺りが汚れても気づかない。」


「よだれが、たれても、止められない。」


「テレビを見ても、あらすじが分からない。」


「新聞を見ても、漢字が読めない。」


「ニュースを聞いても、内容がつかめない。」


口の中にあふれるよだれを抑えられず、


口元から、溢れ出る様子を見て、


「情けない・・・どうなっているんだ・・・・」


惨めな思いが走りました。


かつての私のイメージからは、まったく想像ができませんでした。


ただ、ただ、毎日、決まった薬を飲んで、その日を暮らすだけ。


何もしないで、ただ、ボーとしているだけ。


何も考えない、


何も気づかない・・・


今日が何日で、何時なのかも分からない。


まったく鳴らなくなった電話機。


あれほど好きだったおしゃべり・・・


全てが、一瞬のうちに「消え失せた」のです。


配達される新聞を読まないまま、ポストの中でゴミになって行きました。


親も知らない、この事実・・・


誰にも相談出来ない、


ただ、自分でじっとしているだけ・・・


そして、隣人の執拗ないじめ・・・


著者の西條 智之さんに人生相談を申込む