夫が泥酔して寒空の下、外で寝ていたので病院に運ばれ迎えに行った妻のはなし

著者: むくもと だもの

部屋とワイシャツと私

結婚したら変わるものを歌った かの有名な歌謡曲

病院とトランクスとタクシー 今日私が夫のために払ったお金





朝の出勤時間に 救急隊を名乗る男性からの電話


救急隊
旦那様が赤坂のアパホテルの玄関前で泥酔して寝ていて これから病院に搬送するので迎えに来てください




なぜ赤坂? 今朝早朝便で鹿児島に行くからと家に帰らず泉岳寺のアパホテルに泊まると聞いていたのだけど




病院に着くと医師からまず一言


医者
院内の売店で下着を買ってきてください



…濡れているのだそうだ



無地のトランクス 566円

病院代は輸液を入れただけなので1200円で済んだ



歩くのもままならない夫を連れて タクシーで家を目指した



途中 飲みに行く前にチェックインした泉岳寺のアパホテルに荷物を取りに寄った



夫はよく泥酔して金品を失くすのだが

今回は金品の損失は、ない

財布もケータイもパソコンも、無事だった



タクシーに乗るやいなや  イビキをかき始めた夫を尻目に  前にこれと似たようなことがあったのを思い出した



あれは学生時代

じぃちゃんと2人で一緒に住んでいたころ

老人会で飲みすぎて病院に運ばれたじぃちゃんを迎えに行った 当時じぃちゃんは80歳を過ぎていた


夫は高齢ではない 42歳である



タクシーの運転手さん
旦那さん、飲み過ぎちゃったのかい?



 気難しい顔をしていたら 気を遣ってタクシーの運転手さんが話しかけてくれた

タクシーの運転手さん
この辺はね、桜が綺麗で大学も近くにあるから、毎年学生さんが飲み過ぎてマグロになって病院に運ばれるんだ、へっへっ


夫は若者ではない 42歳である


タクシー代は1万円を超えた


家に着いても夫はこんこんと眠り続けた


やり場のない怒りを鎮めるため 泥酔姿をスマホで撮って 夫のスマホの待ち受け画面に設定してやった


夕方すぎにムクっと起きてきて 予定をすっぽかしたクライアントに謝罪の電話をかけ始めた


謝罪が終わり一言 


ママ、会社休んだの?夕飯は?まだ?


客に謝れるのに なぜ目の前の妻に謝らない?



午後6時8分 埼玉県某市の民家で落雷が発生した




だけど  今日のところはこれでおしまい

まだ酔っていて 怒ってもどうせ忘れるから



※これはノンフィクションです 実在するバカ夫とそれをマネージメントできないダメ妻の話



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