元心臓病のホームレス少年が カリブ海に住むようになった3つの理由
14歳の少年にはとても受け入れられる内容ではなかった
恋もしていたし
ジャーナリストになるという夢を 病気を理由に諦められるはずなどなかった
その日から緊急入院となり
暫くは個室での入院が続いた
発作が減り 大部屋に移されるようにまだなったが
80歳レベルの老人の体力にまで回復するかどうか という見込みには変化が無かった
少年はトイレに行くことも許されず
寝る事しか出来なかったので
1000円のプリペイドカードで見れるTVを眺めていた
画面に映っていたのは日本対ブラジルのサッカーの試合
なんとその試合で日本はブラジルに勝利するという大金星を挙げてしまった
少年の心は踊った
同時に心臓も発作を起こし 異常を知らせるブザーが鳴り響いた
血相を変えて部屋に飛び込んでくる看護師からは
もうサッカーを見ないようにと 暫くのTV視聴を禁止されてしまったが
少年の脳裏には海外で活躍し 日本のメディアを賑わせる選手の喜ぶ姿が焼き付いていた
【俺もいいニュースを日本に伝えるんだ】
少年の夢はウィルスによって消えるどころか更に大きくなった
ベッドの上で過ごす時間が増えるにつれて
次第に少年は何故自分が生き残る事が出来たのかを考え始めるようになった
突如現れた登山客や看護師 そして医師が母親の知り合いで心臓の権威だったという偶然等を思い返していると
もしかしたら大いなる力が 少年を生かそうとしているのではないか
と考えるようになっていった
入院中に読んだ三浦綾子等の死生観や原罪といったテーマも多少なりとも影響したのかもしれないが
それよりも自分の体の中から湧き上がってくる 生きたいという気持ちとエネルギーを感じ
命を得たからにはこの世界でやるべき使命があるに違いない
その使命を全うするまでは死なないに違いないと
考えは確信へと変化した
病状は劇的に改善し
起き上がれるかわからないとまで言われた車いす生活もあっけなく終わり
1か月後には学校へ戻れるレベルにまでなっていた
心臓の筋肉は再生しない細胞で形成されいる筈なのに ここまでの回復を見せるのは医学的にも説明が出来ないという事で
大学病院から少年の心臓を精査したいというオファーが来るようになるまでになった
大腿からカテーテルを挿入し 冠動脈を経由して心臓にチューブを入れ
先端についた摘みで 心筋の一部を採取し それを研究したいという申し出だった
協力を求められた少年は 内容を聞くや否や お断りの返答を提出した
自分の体に異物を挿入されてまで 危険の伴う実験台に使われるのはごめんだったからだ
折角拾った命だから 有意義に使わなくてはならない
中学3年に進学した少年が心に決めた次のステップは
日本で高校受験をしない事だった
その変わりにアメリカへ留学するのだ と決意した
真実を伝える国際ジャーナリストになる為には
英語が必須条件
英語を学ぶためには 本場であるアメリカに渡り
あらゆる人種や文化 そして 流行を自分の目で確かめる事が不可欠であるし
それ以外に道はないと信じていたからだ
当然両親や家族は大反対
学校も英語の成績が5段階評価で2だった少年に対して
受験から逃げないように という アドヴァイスを伝えた
しかし少年の決意は揺るがなかった
出来る時に出来る事をしておかなくては いつ何が起こるかわからない
そして1年間に及ぶ少年の長いロビー活動が始まった
留学関係雑誌の資料を山のように請求し
自分がサインする部分は全て書き終えた後で
後は親がサインする部分だけです と頭を下げたり
休みがあれば親を留学説明会に連れていき
隣の村に留学生が居る事を聞きつけて国際電話を掛け
いかに今行くことで本物の英語を身に着ける事が出来るかを説いてもらったり
その留学生が帰国すると早速自宅に呼んで説得をしてもらうという波状攻撃を延々と繰り返した
中学校の弁論大会にも自ら立候補し 他の生徒が日本語でのスピーチをする中で
唯一英語でスピーチをするという行動まで起こすようになった
その時のスピーチのタイトルは DREAMS COMES TRUE だった
バンド名をパクった訳では無く 夢を絶対に叶えて見せるという覚悟を明確に表明した瞬間だった
1年間に及ぶロビー活動の終盤 少年は両親を取引の土俵に引き釣り出す事に成功する
もし米国のビザが取得出来たら 渡米を許す
もしビザが取得出来なければ 大人しく日本の高校に行きなさい といった内容の取引だった
夢を明確にイメージして 挑戦の手を緩めなければ 必ず叶うと信じていた少年は心の中でほくそ笑んだ
幸運の女神は必ず自分に微笑むはすだ
両親の心中がどうだったかはわからないが
ビザが取得出来るとは思っても見なかったかもしれない
ビザを取得出来てからは学校への入学手続きや 法的な書類の用意等
留学の夢を叶える為の準備は着々と進んでいった
そして15歳の少年は中学校を卒業するとすぐ
単身夢のアメリカの地へ降り立ったのだった
第2話 3度に渡る高校退学事件
喜び勇んで降り立ったアメリカの地は 初めての海外の地でもあった
15歳の少年から見たアメリカの最初の姿は
ダラス フォートワース空港の 広大な滑走路だった
空港の中に電車が走る程の広さと
地平線まで広がる滑走路に沈んでいく特大の太陽を見て
村人だった少年は自分で選択した 新しい道をどこまで切り開けるのか
未知なる挑戦が出来る喜びに体を震わせた
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