第5話:メキシコで学んだ語学習得法

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私はとても嬉しくて、一生懸命、片言のスペイン語を駆使してコミュニケーションを取ってみた。




メキシコの本屋で買った、スペイン語習得の本を勉強し始めて、少しだけ日常会話ができるようになっていた。


その本は、スペイン語のみの説明だったが、一から勉強していけば、全くの初心者でも、不思議と分かるようにレッスンが組み立てられているありがたい教科書だった。




カフェで知り合った新しい友達に自分が伝えたいこと、相手が伝えようとしていて分からないこと、全部ノートに書いて、宿に戻ってから、辞書で調べた。



「また明日会おうね!」と言って別れ、次の日にカフェに行くと、本当に来てくれていた。



そして、来る日も来る日も、カフェに行って、フレンドリーな彼らと会話をしながら、表現を増やしていった。



よく、語学を覚えたければ、恋人を作るのが一番だと言われるが、本当だと思う。



私も新しいメキシコの友達と、理解し合いたい!という強い気持ちがあり、どんどん上達していった。


彼らは、自分と同じ年代ながら、とても愛情深くて、面倒見が良く、一緒にいると、とても心地よかった。


だから、もっと仲良くなりたいという気持ちが、言語習得を後押ししてくれた。





それに、スペイン語のロマンチックな歌が大好きだったので、歌を歌いながらも覚えられた。


誰かに紹介してもらって、大好きになった、ルイス・ミゲル。


彼の『ボレロス』というCDを買って、毎日聴きながら、一つ一つの言葉の意味を辞書で調べて、歌った。



この学習法のおかげで、マリアッチの歌が始まっても、メキシコ人と一緒に、一体感を持って歌を歌うことができた。




どの国に行っても、その国で愛されている歌を歌うと、すぐに仲良くなれる。


相手がとても喜んでくれて、満面の笑みになり、ハートを開いてくれるのが、とても嬉しかった。





サン・ミゲル・デ・アジェンデの街を去る時、カフェで出会いスペイン語上達を助けてくれた新しい友達が、一人一人、手紙を書いてくれた。



男女問わず、とってもロマンチックなことが、たくさん書かれていた。



どうすれば、こんな表現がどんどん出てくるんだろう!!



メキシコ人は、ルイスミゲルの詩の世界のような、情熱的な表現にいつも浸っているからなのかもしれない。



この手紙は、20年経った今も、大切に大切な宝物だ。






メキシコを出て、旅人の間で噂になっていた、グアテマラのスペイン語学校にも通ってみた。



ここは、当時、1ヶ月400ドルくらいで、宿、食事、学校も全部含まれた、とてもお得なコースだった。


スペイン語のクラスは、マンツーマンで、自分のレベルに合わせてくれ、しかも、スペイン語オンリーなので、1ヶ月も毎日学べば、かなり喋れるようになっていた。



しかし、現地の人とのコミュニケーションで、面白いのは、言葉をまだほとんど喋れない頃の段階だ。



一生懸命話して、伝わった時はとても嬉しいし、


間違った言葉が、とんでもなく違う意味になって、腹を抱えるほど大笑いすることもある。




ラテンの人たちのオープンさ、優しさ、フレンドリーさのおかげで、スペイン語を学ぶのは、本当に楽しかった。


楽しいと、どんどん上達していく。




そして、1年の旅が終わる頃には、スペイン語で哲学的な内容の話もできるようになっていた。



日本へ帰る飛行機に乗る前の空港で、スペイン語圏のカップルと知り合い、哲学的なテーマで会話している自分に気づき、


そういえば、メキシコへ行く時の飛行機の中では、グラシアスとアディオスしか知らなかった1年前の自分を、とても懐かしく感じた。



日本の大学で2年間もクラスをとっていただけでは、全く覚えられなかったスペイン語。



短期間で、語学を上達させる一番の方法は、



「好き」なことを中心にして語学を覚えること、ということが体験してわかった。



私の場合は、「仲良くなりたい友達」そして「好きな歌」。



「机上の勉強」と「人と会話しながら、実際に、頭に入れたフレーズをすぐに使う」を繰り返すと上達は早い。


好きなことをしている時、人は、「勉強」とか「苦労」とかは思わないもので、


そこには、ただ、楽しさしかないのだ。



そして、気づいたら、いつの間にか、マスターしてしまっているのだ。



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