トイレトレーニングで長女が私に教えてくれたこと

トイレトレーニング…




それは、それまでオムツでの排泄しか出来なかった子供に、トイレでの排泄を教えていくこと。

昔(30年くらい前?)は布オムツだったため、1歳になる頃にはトイレやおまるでの排泄を教えてオムツが取れていた子が多かったらしいが、ここ最近は紙オムツの品質が良くなり、3歳健診でもまだ取れている子が少ない、なんて言われている。



が家には3歳と1歳の娘たちがいる。

現役オムツ世代である。ゴミ出しの日にはオムツゴミがパンパン。

いくら高性能吸水ポリマーの恩恵に預かっているとは言え、エコ的にも経済的にも早めにオムツが取れてほしいところ。



我が家のトイトレ歴


長女が保育園の1歳児クラスだった頃、夏はオムツの取り時!と聞くので、「そろそろトイレトレーニングするんですか?」と聞いたけれど、保育士さんからは「2歳クラスで本格的にやります」という返事だった。


長女は5月生まれのため、月齢が高くて1歳児クラスでもすでに2歳だった。「2歳でもまだやらないのか~」と思ったけれど、その頃年子で生まれた次女のお世話に手いっぱいで、特にトレーニングは始めず過ごしてしまった。



2歳も後半になる頃、義母が熱心にトイレに誘ってくれ、たまにトイレで大ができたりして、「これオムツ取れるよ!」と義母に言われたけれど、私があまり気合を入れてやらなかったせいですぐにオムツでの生活に逆戻り。1歳児クラスが終わる頃、気が付いたら長女よりも月齢の低い子が布パンツを履いているのを送迎の時に見かけると少し焦り、少し積極的にトイレに誘ってみるも、そう簡単にはいかずまたオムツへ逆戻り…というのを繰り返していた。


長女はおしゃべりの上手な子で、1歳半の頃には2語文を話していて、2歳ではこちらの言う事をちゃんとわかって会話が成立していたので、おしっこを教えてくれることなんて簡単にできるだろうに…と思ったけれど、なかなか進まない(進めていない)トイトレに、たまに焦りだんだんやらなくなり…の繰り返し。


そして2歳児クラスになり3か月。もうすでに3歳になっている長女だが、相変わらずオムツ。3歳児健診でもうパンツを履いている子を見かけたり、続々と布パンツに変身している保育園の同級生を横目に見つつ、これまでぐだぐだと言い訳しながら本腰を入れなかった私もついに「本格的にやらなきゃダメだ!」とスイッチが入る。



長女の頑張り



急にスイッチの入った私は、トイレに便器が「やったね!」としゃべっているイラスト入り自作のシール台紙を貼り、「トイレで出来たら好きなシール貼れるんだよ」と長女をトイレに誘った。最初はシール目当てに何度かトイレに座ってくれたが、だんだんご褒美効果が薄れ、シール貼ろう!と言っても反応しなくなってきた。


一緒にパンツを買いに行き、長女の好きなものを選ばせて気分を上げてみた。

「おねえさんパンツ(布パンツのことをよくこう言う)かっこいいね!」とヨイショしてみた。

こまめに声をかけて「おしっこ大丈夫?」と聞いてみた。



ところが、一向に進む様子のないトイトレ。そもそも布パンツにあまり興味を示さない。

布パンツで何度も声をかけているのに、声をかけた次の瞬間にお漏らししている。

私は次第に苛々が抑えられなくなり、「なんでできないの!?赤ちゃんみたいだね!!」などと声を荒げて言い放ってしまい、一番やってはいけない対応をしてしまう自分に落ち込んだ。

次第に、比較的トイレでできていた大を、赤ちゃん時代と同じくテーブルの下で隠れてするようになってしまった。



保育園の懇談会で、もうオムツが取れている子のお母さんは、総じて「なにもしてません」と言った。

「気づいたらいつの間にか取れてました」と。

長女は大はわりと成功率が高いし、身体的にも十分準備ができているはずなのに、できるはずなのになんで!?


遊びに夢中になり、またしても声をかけた直後にお漏らしした長女に、「もう!!」と苛立ちをぶつけてしまった直後、「長女のこの姿が私に何を教えているのか」にふと気づいた。





また私の癖が出てた…

それは、「完璧主義」。





実力など全然伴っていないくせに、私は「完璧主義」という心の癖を持っていた。

自分でも無意識のうちに、「こうでないといけない」「こうあるべき」「こうなるはず」と思い込んでしまう心の癖。


保育園の他の子のように、身体の準備も整っているのだから、ある日突然うまくいくのだといつの間にか思い込んでしまっていた。想像の通りに動かない長女に、何故思い通りにならないのかと苛々をぶつけてしまった。


私は仕事柄、人の下の世話には慣れているし、とくに負担にも思わない。小、大、出血なんでも平気だ。大人と比べたら子供のお世話なんてずっと簡単だ。それなのに、長女の失敗には苛々を抑えられなかった。

長女からしたら、迷惑な話だっただろう。それまで何も言わなかったくせに急にうるさくトイレトイレと言い出し、一回失敗すれば不機嫌に怒られる。ひどく理不尽な母親だ。




保育園の連絡ノートに、それとなく現状を報告すると、いつも親身になってくれる保育士さんがすぐに声をかけてくれた。

「ママ、お洗濯が少し増えて大変だけど、園でもうパンツに変えちゃいましょうか。うんちはもう何度も教えてくれてるし…」

そして長女にもこう言ってくれた。

「ねえ長女ちゃん、一緒に頑張ってみよう。失敗したっていいよ。みんなだってできないことあるんだもん。ゆっくりやっていこう」



家に帰って「この中から好きなパンツ選んでごらん。おねえさんパンツはこう」と言う私に、

「でもぬらしちゃうもん…」と自信なさげに長女が言った。


「ぬらしてもいいよ。先生も言ってたでしょ。ママもう怒らないからやってみよう?」


「…ほんとにぬらしてもいいの?」


その時の、長女のほっとしたような表情に、私は胸が締め付けられる心地がした。




キティちゃんのパンツを履いた長女は、その日全部の排泄をちゃんと教えてくれておまるでした。

次の日も、「きょうはこのパンツにする!」と好きなパンツを選び、保育園でもきちんと教えていますよ!と先生に褒められた。



「ほんとはできるのに、ママが怒るからできなかったんだね。こんなにすごいのにね。ごめんね。」

抱きしめながらそう言うと、長女は恥ずかしそうに「うん…」と言った。


私のせいで、いったいどれだけ長女のやる気の芽を摘んでしまったのだろう。


「育児は育自」とはよく言うけれど、子供の姿は自分のできないところをよく教えてくれる。

それも辛抱強く。己の未熟さから、か弱い存在である自分に八つ当たりしてくる親のことを、じっと耐えて気づくまで教えてくれるのだ。


ごめんね、と謝った時の長女の「やっとわかってくれた」という顔を忘れずにいたいと思う。


今はトイレよりもおまるが気に入っている長女だが、きっと近々トイレでもできると思う。

長女の好きなパンツをまた一緒に買いに行きたい。



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