母がアルコール依存症と気づいてから10日間地獄を見た話。3日目。
家に帰ると母がタバコを吸い始めた。
タバコを持った手で何かを払ったり、タバコで追いかけたりしていた。
ハエがたくさんいるから。
ハエなんていない。
さっきも車の中でハエがいると言ってたな…と思った。
どうも私と父には見えないものが見えているらしかった。
この前は夜中に素っ裸で
両手両足にスーパーの袋つけて
四つん這いで床を払っていた
借金で、なんもかんもどうしょうもないんよ…
父が言うように、本当になすすべはないのだろうか?
私もどうすればいいのか分からなかった。
とりあえず、お母さんをお風呂に入れよう…
さっき吐いてちょっと汚れてるし…
お風呂場でも幻覚
落ち着きがないので目を離すとどこに行くか分からなかったのが心配だった。
お風呂に一緒に入った。
一緒につかって、背中を流して、髪も洗ってやった。
母はお風呂が大好きだった。
しかしその日はお風呂をいやがった。
早く出たいと駄々をこね、私が自分の頭を洗っている隙に脱衣所で着替え始めた。
お願いやからそこにいて。
一人でウロつかないでよ!
またどこかに行ってしまう、危ないと思った私は焦った。
適当にシャンプーした頭は洗った気が全くしなかったが急いですすいだ。
ガバッと脱衣所に上がると、母は素直にそこにいた。
ほっとした私は安心して体を拭いて着替えた。
しかし髪を拭くとき目が離れてしまうので、
下を向いたまま、髪を拭きながら母の姿を確認していた。
脱衣所から伸びる廊下の方を母はずっと見つめていた。
突然目をむき出したかと思うと表情がこわばり出し、体を震わせ縮こまり出した。
何かに怯えるように震えていた。
異変を感じた私は母を寝かせようと、一緒に部屋へ向かった。
母の手を引くと、震えていた。
脱衣所から出ることを拒否したが、なだめながらゆっくり部屋へ行った。
濡れた髪のまま母をベットに横にさせた。
まだ怯えていたので私は添い寝した。
ものごごろついた頃から親と別に寝ていた私は、母と寝るなどありえなかった。
こんなに怯えて、とても心配だったのだ。
一体何が見えていて、何に怯えていたんだろう。
それを知るのは母だけなのだが。
父と交代で見張りをする
母が眠ったと思っていたら、実際は目を閉じているだけだった。
眠っていない。
薄眼を開けて眼球がせわしなく動き、まぶたが痙攣していた。
添い寝する私を振りほどくように起きては座ったり立ったりする。
部屋は二階にあったのでウロつかれて階段から落ちたりしたらまた面倒だ。
父と交代で寝て母を見張ることにした。
母は寝たかと思えば起きたりしていたので、その日はほぼ眠れてなかったと思われる。
明日もこれが続くのか?
と言うより一生続くのか?
そうなった場合誰が母の面倒を見るのか?
こうつきっきりでは何も出来ないではないか。
もうこのまま元のお母さんには戻らないのか?
不安ばかりで私も眠れなかった。
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