食文化が違うエストニア人に唯一馬鹿受けした日本食、それは「◯◯○」(エストニアどうでしょう⑲)
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魚を生で食べるのはありえない。焼き魚は煙が臭いのでNG。僕が作ったおかゆにはリンゴジャムをかけて食べる。そんな国で日本食が通用するのか?
前回のエピソードでは、エストニアの人たちと日本人の食文化は根本的にかなり違うということを書いた。そんなエストニア人たちと食を通じてお互いをすることは可能なのだろうか?もっと言えば僕が作った日本食を食べてもらって「これはうまい!」と言ってもらうことは可能なのだろうか?
僕はこの「おかゆジャム事件」以降、エストニア人から日本食を気に入ってもらうことを半ば諦めてしまっていた。シュールストレミングと酢漬けのキャベツを食べる北欧の人たちに日本食を理解してもらうのは不可能なのだと感じていた。
人にもよるけど、北欧ではこういうのはあまり好まれないらしい↑
しかしそんな絶望を吹き飛ばすほどの絶賛をいただいた日本食があった。
それは・・・・
カレーライスである。
カレーライスである
カレーライスは完全な日本食
そういう声が聞こえてきそうだが、インドのカレーは日本のカレーライスとは似て非なるものである。日本のインド料理レストランは日本向けに味がローカライズされているので日本で売っているインドカレーでは参考にならない、ぜひ本場のインドカレーを食べに行って日本のカレーとどれほど違うのか、その差を体験してきて欲しい。(カレーの味の差を確認するためだけに行ってきて欲しい)
たしかにカレーは昔インドを支配していたイギリスから入ってきたという説もある。が、イギリスの「カレー&ライス」もやっぱり違う。(イギリス人も中々のカレー好きみたいだけど・・・)日本にカレー文化が入ってきてもう100年を超えている。起源がインドやイギリスでも、やっぱりカレーライスは日本独自の食文化なのである。中国から入ってきて独自発展を遂げたラーメンのように。
日本のカレーも寿司に負けない世界的ブームになってほしい
海外では誇張表現無しで寿司がブームだ。大国から小国まで様々な国でこの目で見たから間違いない。ヨーロッパに行くと寿司のレストランが山程あるし、どこのスーパーにも寿司のパックが置いてある。とは言ってもヨーロッパの寿司レストランはベトナム人やタイ人が自国の料理と同時に寿司を売るというような寿司人気に便乗したようなお店が多い。もちろん味は残念ながら「まずい店」も多いし、良くても「そこそこ」な味であることの方が多い。日本で言ったら味は回転寿司にも負けると思う。ラトビアでは「最も評判の良い寿司屋」で食べた寿司がシャリがカチカチのシロモノであった。彼らは日本人が握った寿司を食べたことすらないのではないだろうか。見よう見まねで作った劣化コピーに劣化コピーを重ねているのではないだろうか。まるでVHSテープに記録された映像のようである。(2000年以降生まれの方、例えが分からなくてすいません。)それでも彼らが寿司を売り物にしてやっていけるのは、本物の寿司を握ることが出来る技術を持った日本の寿司職人が海外に進出していないからである。日本の腕のある、もしくは舌の肥えた寿司職人が海を渡れば、世界のSushi産業全体のクオリティの底上げになり、どこに行ってもおいしい寿司が食べられるようにもなるだろう。(ただしタリンのアメリカ大使館の近くにあるお店amjamiだけはエストニア人の寿司シェフが日本人から修行を受けていて味は完璧なので是非行ってみてください。)
日本人とカレー
それにしてもなぜ世界で寿司が流行ったのに、なぜ日本のカレーが流行っていないのか。だって日本人って寿司よりカレーの方が食べる頻度高いでしょ、回転寿司が日本国内でこれほど普及したと言っても。つまり日本人は概して寿司よりもカレーの方が好きだと僕は思っている。いやどっちも好きだと思うが、毎日食べるのにどちらかを選べと言われたら、カレーが好きな人の方が多いと僕は思う。日本人とカレーは絶対に不可分だ。日本政府がカレーを禁止にしたら暴動かクーデターが起こってもおかしくないと思う。日本人は基本的には礼儀正しいが歴史的にも「米不足」など食が関わった時には本気をだす。現代版米騒動による打ち壊しがショッピングモールの食品コーナー目掛けて発生していくだろう。少なくとも僕は起こす。
僕の作ったカレーがエストニア人にウケた
僕の作った日本のカレーがエストニア人から喜ばれた。
それは日本の食事を作って外国の人に喜ばれた初めての体験だった。
カウチサーフィンでエストニアを代表する島の一つヒーウマー島に行った時のことだった。たくさんのエストニア人とともにヒーウマー島を散策し、疲れきっていたところに、僕が日本のカレーを作ったのだ。
調理は手伝ってもらった
みんなで作る
そして・・・・
ジャーン!日式カレーが出来た!(カレールウは日本から持参しました)
皿に盛った所
早速食べてもらったところ・・・
大絶賛の嵐だった!
ちなみに彼らが言ったのはお世辞ではない、本当に心の底からカレーを褒めてくれたのだ。なぜなら前回別の場所でカレーを作った時には、なぜか自分でも美味しく作れなかったのだが、その時はそのカレーを食べたエストニア人たちの反応もやはり無言に近いものであった。エストニア人は単刀直入に言いたいことを伝える民族なのだ。だからその時は本当においしく無かったのである。しかし、今回は大絶賛の嵐、おかわりも続出した。自分でも日本のカレーのおいしさが伝わるように作れたと思う。カレーのおかわりは日本でよく見る光景だし、おかわりの光景あってこそのカレーだと思う。
このように食による国際交流はとても効果的だが、「食べる」という人間の生理現象に直結する行為なので、失敗した時が悲惨だ。前回のように泣きながらリンゴジャムをお米にかけて食べることになる。しかし今回は大成功であった。
美味しいものを食べたので会話も弾む(犬も元気そうである)
犬もカレー効果か元気そうである。
カレー効果か翌日はヒーウマー島をバリバリ散策できた
この日は16キロも湿原を歩くことが出来た。カレーパワーか。
日本のカレーが寿司を超えて外国人にウケる可能性
実は僕の実体験以外にも、日本のカレーが外国の方にウケるという証拠がある。
以下の記事を読んで欲しい。
リンク:「日本のカレーライス」を熱愛する米国人記者が語る『ゴーゴーカレーNY店』
この記事では、日本に仕事出来た記者が日本のカレーにハマった経緯について書かれている。
元は英語で海外向けに書かれた記事であり、日本向けに書いた記事ではない。そこが重要だ。
なぜそこが重要かと言うと、最近では「日本の物を褒めたら日本人が喜ぶ」ということに気づいた外国人たちがこぞって「海外の反応(あるいは"reaction")」と自分で日本語のタイトルをつけて動画やコンテンツをアップロードしているのだ。いわゆる「日本人からのアクセス数欲しさ」のために作られたコンテンツであり、そういう場合に作られたコンテンツは心の底から純粋に日本の良い所を広めたいと思っている訳ではないものが多いと思うのだ。(余談だが最近のYoutubeではこれが転じて日本に関係なく投稿者の反応を見せる"reaction"という動画が一大ジャンルとして定着している。)
ところが、この記事は前述の通り、そういった「海外の反応」ブームに火がつく前の記事であり、記事も海外向けに英語で書かれたものだ。世界の人からすると「日本式カレーって何だよ?」と言うレベルの知名度のものであるため筆者のアクセス数稼ぎという訳でも無い。
という訳で純粋な気持ちで書かれたこの記事は信用できるのだ。一度読んでみて欲しい。
(ちなみに上記の記事は動画版もある。僕はこっちの方が好き。)
このカレー体験から僕が感じたこと
この体験から僕が感じたことがある。
最近の日本では日本を礼賛する記事や、日本に来た外国人(それも白人だけ!)に日本の良い所のみを褒めさせる番組が流行っている。僕も外国の人から自国の文化をほめてもらって嫌な気持ちはない。むしろ嬉しい。ただひとつ思うのは、あの類の番組には誇張というか情報の選別があって、日本人が見て誇らしくなったり嬉しくなったりするような演出が意図的にされているということだ。昔は「ここがヘンだよ日本人」という外国人に日本の問題点を上げさせる番組が流行っていたが、今は逆のトレンドになってしまった。余裕が無くなったのか、日本人は第三者からの苦言に耳を貸さなくなくなってしまったのだ。あくまでマスメディアのトレンドとしてはそうだ。
実際その事による功罪もあると思うし、僕が思うことは色々とあるのだが、結論から言えば、僕が思うことは外国から褒めてもらって日本人として真の自信や誇りを持ちたいのなら、海外に打って出て実際に小さなことでも評価してもらって欲しいということだ。テレビには情報の選別や誇張が必ず含まれる。今はネットにしたってそうだ。一度外国に出て現実に触れてみて欲しい。
べつに商人になってバリバリ起業しろとまで言っているわけではない。海外に行ったことのない人は、なんとなく遊びの1泊2日で良いから出てみて欲しい。そこで初めて日本の良い点とあまり良くない点/海外の方が良くない点・良い点がわかる。実際に触れて感じられる比較対象があるから初めて成立するのだ。
台湾でも韓国でも中国でもフィリピンでもウラジオストクでも良い。今はかつて無いほど外国に行きやすくなっているし、是非どこかに行ってみて欲しい。日本人のパスポートは世界最強のパスポートの一つなのだ。つまり日本人は国際社会から信用されている。
国際社会から日本人が信頼されているという証拠はビザ発給のしやすさに限らず山のようにある。だから毎週毎週わざわざ誇張された幻想を放映するテレビでその事実を繰り返し確認する必要はない。
なので、真に「日本人のとしての誇りを持ちたい」と言うのであれば、手始めにカレールウを持ってLCCで隣国へ行き、ちゃんとしたレシピでカレーを作り、地元の人達に日本のカレーを振る舞ってはいかがだろうか?
現地の人の胃袋を掴んだ時の「国際交流に成功した」感は異常
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