狂乱のパリ – 夏の夜の夢 –

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仕事でパリに数日滞在した。

この時期からのパリは実に楽しい。7月の初旬あたりからグンと日照時間が伸び毎日天気の良い日々が続き、街中がお祭りのような気分に浮かれる。寒く長く暗い冬眠の季節が終わり、熱い夏が始まる。夜遊びに活気が出てくる季節だ。


夏のパリは8時から9時頃まで空が明るく、仕事を終えた後でも遊ばないと損した気分にさえなってしまう。とりあえず仕事後のビールは欠かせないものになり、6時頃にもなれば街の至るところで乾杯が始まる。


僕はとりわけこの季節になるとパリのマレ地区にあるサンマルタン運河に行くことが多い。その運河沿いには多くの若者が地べたに腰を下ろし、至るところでプチパーティーが繰り広げられる。歌を歌うものもいれば音楽を奏でる奴も。日本で言うなればお花見のような気分が一夏中続く場所なのだ。


テロ事件以来少し緊張感のある場所にはなったが、僕はこのハッピーな気分ができるだけ多く感じられるように、この季節になればこのサンマルタン運河近くに宿をとるのが定番とさえなっている。仕事の疲れさえも吹き飛ぶ夜の宴の地だ。



この時期からパリ中の老若男女の問わずお祭り気分になり、このマレ地区ではゲイの人達の血もまた騒ぎ出す。丁度僕の滞在中のパリではGAY PRIDEのイベントが行われていた。


GAY PRIDE とは、サンフランシスコ、ニューヨーク、シドニー、アムステルダム、ロンドン、ベルリンなどなど、世界中のい様々な都市で行われているゲイ(レズビアンやバイセクシャル、トランスジェンダーを含む)のパレードのことであり、このパリでも毎年6月の後半からこのイベントが始まる。一応東京でも開催しているがその規模は他国に比べもにならない程小さい。


この時期になるとパリにはこんなにもゲイの人達が居るのかと驚くほどで、ディズニーランドのエレクトリックパレードのように色とりどりの服装で街を練り歩く。この日ばかりは街の人々に裸になることさえも暗黙の了解を得られ、ゲイの人たちは半裸(ほぼ全裸な人も)になってこの日の喜びを露わにする。



このパレードの日は昼夜問わずお祭り騒ぎで、夜通しパーティーが繰り広げられる。夜になると多くのゲイの人達はマレ地区に集まり、あちこちのバーやレストランで乱痴気騒ぎが始まる。一部では半裸の男達でストリートを埋め尽くされ、そこを服を着て通るのを億劫になるくらいだ。


ファッションウィークとも重なる事も多く、ゲイの多いファッション業界の人達も参加し大いに盛り上がる。ストレートの男性だからって参加できない訳ではない。爽やかに誘いをお断りする紳士な対応さえ身につけていればとっても楽しいイベントだ。





ファッション業界に従事していると当たり前のようにゲイの人達と出会う。日本ではまだ多くはないが、パリやロンドンのとりわけレディースファッションで働く人達は5割くらいはゲイなのではないだろうか。そう言っても大袈裟ではないはずであろう。


僕が若い頃にロンドンにあるファッションPR会社で働いている頃に同じオフィスで働く同僚が6人居て、僕以外が全員ゲイ(LGBT)だった。決してゲイ専門のファッションの会社でもなんでもなく、ごく一般的なファッションのPR会社でそこに出入りするスタイリストも多くがゲイの人達で、よく男性同士の熱い抱擁とキスを日々目にしていた。


日本から来た何も知らない若き少年はその光景に初めこそ度肝を抜かれたが、もはや日常的に繰り返されるその姿に次第に慣れ、自然とゲイの人達のそのような熱い姿に違和感を抱かないようになっていった。


僕の6人の同僚のうち一人は女性のレズビアンで、4人がゲイだった。その内の一人と割と僕と気の合う男気のある男性が居て、彼の男らしい言動から絶対ゲイじゃないだろうなぁと思っていたのだが、何かの会話の時に「いや、俺どっちもイケるし。」との発言に衝撃を受けたのを覚えている。彼は二刀流使い、バイセクシャルだったのだ。僕は若くして性の多様性というものを学んだのだった。



人間の慣れというのは不思議なもので、それこそ1年もそんな環境で日々ゲイの人達と触れ合いながら働いていると、自分がストレートであることに疑問さへ感じてくるのだ。何故自分は女性が好きなのか。女性の何に惹かれるのか。疑問にさえ思わなかった当たり前の自分の感情にビッグクエッションが浮かんできたのだった。それこそバイセクシャルの人って男性も女性も好きになれて羨ましいという感情さえ若い僕は抱き始めていた。


ある日の事、夜遊びにクラブに行った際にも「 一緒に飲もうよ!」と誘われる事があり面白いので知らないグループと一緒に飲む事があった。クラブで知らないゲイの人達が居てその人達と飲むのはロンドンではもはや日常的な事で、見た目が男な女の子と接してるような感覚とさほど変わらないのだ。もちろん別にこの人達とどうこうなるのなんて想像もしない。でもある時にそのうちの一人に突然、手をぎゅっと握られ目を見つめられて「一緒に店出ようとよ。」誘われた。


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