フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第14話
破滅
《これまでのあらすじ》初めて読む方へ
大学生の篠田桃子はショーパブでアルバイトしている。様々な葛藤の中で、そこに自分の居場所を見つけようとしていた。そんな矢先、唯一仲良くしていたホステス仲間のミホが恋人をめぐって他のホステスと大ゲンカする。店を取り仕切る玲子は冷たくミホを突き放し桃子は戸惑うばかりだった。
あの日のことを思い出すたび、胸を暗い闇が覆う。
嫌な記憶でしかない。
騒動以来ミホは店に姿を見せなかった。
彼女の部屋に行ってみたが
いつもカーテンがひかれ外からは何も見えなかった。
考えてみたらミホの連絡先すら知らない。
私にはなす術がなかった。
そしてその日は、やってきた。
店内に客が1人残らず帰って、ホステスたちは更衣室で
帰りの身支度をしていた。
私も着替え終わり店を出ようとしていた。
その時、そう、例えるなら
熱湯をかけられた猫か狸みたいな
ギャーという声がした。
普通じゃない、絶叫といえる叫び声だった。
瞬間的にホステスをはじめ、スタッフ全員が
身動きを止め更衣室の方を見た。
更衣室の前はすでに人だかりができていた。
「アキナ?!ねえ!どうしたの!」
数人のホステスが鏡の前にしゃがみ込んで口々に叫ぶ。
中央にうずくまっていたのはアキナだった。
今夜指名が3本を超えたので仲間と祝杯をあげると
ついさっきまで意気込んでいたのに
一体彼女の身に何が起こったのか。
アキナはうずくまったまま泣き叫び続けるだけだった。
玲子が駆けつけてきて
アキナを見て何かを察したように
みるみる険しい顔に変わった。
ボーイに向かって大声で
「救急車を呼んで」
と言った。
パテオは大混乱になった。
玲子が他の者を追い出して更衣室のドアを閉めると
突然静寂の訪れたラウンジで
皆、困惑した顔を見合わせた。
誰1人、何が起こったのか分からなかった。
分かったのは救急車に乗り込む時だった。
アキナはタオルで顔を覆っていた。
そして半ばパニックになりながら、こう叫んだ。
「ちくしょう!絶対アイツだ!許さない!」
アイツ…
誰もが、つい1週間前に起きた騒動を思い浮かべた。
そしてアキナに強い恨みを持った人間が誰なのかも。
その足で私はミホのアパートに行った。
アパートが見えてきた途端
私は足を止め、息を飲んだ。
2階の窓からは、煌煌と灯りが漏れ暗闇を照らしていた。
私は早足に部屋の前まで行った。
チャイムを鳴らそうとして私はなぜか
ドアノブを握っていた。
ドアは簡単に開いた。
「ミホ?」
私は恐る恐る顔を覗かせて、ハッとした。
そこにはミホではなく、かわりにヒョロッとした背に高い
若い男の姿があった。
よく見るとミホの恋人でパテオのボーイの大野だった。
大野は大きいスポーツバッグに服やら歯ブラシやら
黙々と詰め込んでいた。
大野は振り返った瞬間、私に気がつきギョッとして言った。
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