本日上京。〜人生分岐点ストーリー〜

著者: Ac Kita

本日上京。


家庭環境最悪

不良グループには追われてるし

もうここにいる必要ないし


テレビに映った東京のある街角

あの頃はここに来れば

夢が叶うと信じていた。

誰も止めるものも、何も守るものもない俺はその夜、夜行バスに乗って東へ向かった。


地元から出た事がない俺。

初めて遠いところへ

旅行でもない。何もあてもない

金もない、住む場所も

とにかく何も無い。

あるのは夢だけ。


たったそれだけで、不安は消えていく

若さは不思議なものだった。


あの日の選択が失敗なのか正解なのか

20年以上過ぎてもわからない


おそらく死の間際までわからないかもしれない。だから本日上京した若者へ

いいんだよ、それで。

良いか悪いかなんて、誰にもわからないから


極度な不安と新しい明日の期待が

絵の具で言えば、見た事も無い色に混ざり合って変な色になっている。


窓の外には、約20年間生まれてから過ごした街並みの夜景。色んな出来事が思い出させる。いつか有名になって帰ってくると、窓越しの街に約束した。少しくらいナルシストにもなるよ、自分にとっては大きな賭けをした分岐点だからね。2.3日で戻るんじゃ無いかなとか色々考えた。


夜中2時を過ぎた。

今夜はさすがに眠れ無い。

もう引き払った家、バイト、様々な物。

もう背中の向こうの街には、何も残っていない。

持ってきた最低限詰め込んだカバンの中の荷物だけ。

無一文から始まる俺の人生

親も恨んだよ、こんな人生にしやがってとね

でもどうしようも出来無い、

俺は一人でしか生きていけない環境で

帰る場所はなくて、帰る場所は自分で作るしかなかった。


そんな事を考えていたら、窓の外が少し明るくなり始めた。バスのエンジンの音が希望へと近づく。あと2時間で…「東京」


少し寝てしまった。

目を開けると、遠くに見える高層ビル群

実感がこみ上げる。

今日から俺が生きてく街

と言っても家も何も無いけど。


人は大昔から何も無いところに

住まいを作り繁栄してきた。

俺もいつか遠い子孫が、

先祖は何もなく東京に出て

一人で住む場所を作ったんだよと

そう言われる人間になろうと、考えていた。


バスは新宿駅付近に止まる

アームストロングのように

東京への初めての一歩が

右足から始まった。


【本日上京。】



ここからは様々な東京生活の出来事


そして数年後。


東京から故郷に戻る日。

また新たに本日上京の若者とすれ違う。

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