口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ⑤ 崖っぷち編

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ホストを本業とするつもりで入店してきたKJさん。


色黒長髪のイケメンでホストが本業のJO。



やはり職業柄個性的な人間が多かった。その時期はたまたまだったのだろうが、JUさん、KJさん、JOは男の私から見ても魅力的な人間たちだった。

 

JUさんの年齢は、私の二つ上で、スポーツ学科の大学生らしく肉体に自信があり、酔っぱらうと腕立て伏せを掛け声と共に披露しだす様な人で、話もおもしろかった。

 

KJさんは私の一つ上で独特なクールな話口調でシュールなギャグを得意としていた。女の子が全く笑っていないのに従業員だけ笑っているという様な場面を多く作る人だった。

 

JOは私の一つ下で色黒でかなり明るい茶髪のロン毛のイケメン。

その頃の今時の子という感じだった。しかもノリもよく話もおもしろかった。

 

 

 

その3人が入店して少し経った頃には、3人とも仲良くなり、仕事をしていると思えないぐらい楽しい日々がしばらく続いた。

 

そして確かに仕事をしていると思えないぐらい給料も安かった・・・・。

 

入店してから2か月半ぐらいだったであろう。

今だに自分を指名してくれるお客さんもできず、

 

(自分なんかを指名してくれるお客さんなんかいるのか?

まじでこのままじゃ恥ずかしくて人に言えねぇ・・・。)

 

と焦っていた。

しかし無情にも保証期間は四月に差し掛かり終了した。

 

(来月からは固定給(雀の涙)がない!

携帯電話2ヶ月分未払だと止められるから、

4月はまだいいにしても、5月末には完全に停止する。

そうなったら・・・打つ手がない・・・。)

 

その頃には携帯のメモリーにはかなりの数の女の子の電話番号が登録されていたが、

「店に定期的に来てくれる様になる可能性がある子」

となると絶望的だった。

 

キャッチした子「店を関係なしだったら遊んでもいいよ!」

キャッチした子「え~。連絡もらっても私店には行かないよ?それでもいいならいいけど・・・。」

 

 

なんという皮肉!!!!神様はイタズラ好きだった・・・。

 

ホストをやる前は自分で

 

女の子とのコンパをセッティングできるようになりたい!

携帯電話に女の子の名前と顔が一致しないぐらい電話番号を登録したい!!!

ホテルの最上階でワインを飲みながら女を抱く・・・。

 

というのが目標だったのに!

ホテルの最上階で・・・という事以外はもうすでに実現しているのに・・・。


そんな浮かれている状態ではなかった。

生活そのものが懸かっていた。

 

さらに

(この人達(店のホスト達)ともっと一緒に仕事をしていたい。)

という、いつの間にか新しい気持ちも生まれていた。

 

 

保証期間が終了して、一か月経つか経たないかぐらいの頃、

その頃には季節もだんだんと暖かくなってきていた。

本格的にもう後がなかった。

 

ヘルスの近くで女の子に声を掛けるという行為がメインになっていた。

 

ナンパの延長で、もしうまくいったらお客さんになってくれるかな?

などと悠長な事をやっている事などはできなかったからだ。

 

このままホストを辞めざる負えない状況になってしまったら…

自分が後悔するのが分かりきっていた。


 

(俺はこんなもんなのか・・・・?)

 

堤防の時とは違う自問自答を繰り返していた。

 

「なんで人間は生きているのか・・・。」

「俺は何がやりたいんだろう・・・。」

 

という、以前の自問自答ではなくなっていた。

 

「俺はこのまま、ホストを辞めるのか?」

「自分を指名してくれるお客さん・・・・いや女の子がこの世にはいないのか?」

 

そのような事をキャッチの合間・・・女の子を待っている間にも考えていた。

 

ホストだけに関わらず、

人に指名してもらう・・・

指名してもらう価値がある人間になる…


人から自分を指名してもらうという難しさを痛感していた。

 

そんな迷いの中

「ニーハオファイヤーボンバー!」

とやけくそ気味に声をかけ続けていた・・・。

 


 

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