口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ⑩ 無茶な約束編

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著者: 健二 井出


そうした営業スタイルになってから、Yに段々、変化が起きてきた。




携帯を見る様になった。

Yからの電話にでないとキレられる様になった。

お客さんから着信があると、目の前で出ろと言われる様になった。

帰りが遅いと、とんでもなく怒る様になった。

着信を見て、電話の内容を聞くようになってきた。

そして全体的に短気になってきた。



20代ホヤホヤ。


同棲など今までした事もない男だ。

女性の扱いがうまいわけがない。


少しづつ精神的に疲労していった。


売上が上がっていればいいのだが、

そっちも振るわない。

なおさら怒ってくる。


だんだんとYの家に帰るのが憂鬱になってきた。

Yの事を好きという気持ちはあるのだが、

自分が自分でなくなっていった。


Yがどうすれば怒らないかだけを考えるようになった。


我慢の毎日。
いやでしょうがなかった。


今であればとっくに言い返していたと思うし、

我慢していた自分が信じられない。

だが20歳の自分には、絶対的に経験が不足していた。


男と女が付き合っていく中で、大事な事が何一つわからなかったし、

お互いの距離感もめちゃくちゃだった。


誰かが言っていた好きな言葉で

「くっついていては、ダンスは踊れない」

という言葉があった・・・。

「男と女が付き合う」

という関係は、

くっついたり、離れたりをバランスよく繰り返している状態・・・


お互いが二人でダンスを踊っている様な関係がベストなのだろう。


二人がピッタリと常にくっついているだけでは、

綺麗にダンスは踊れない・・・。




四六時中監視されている様な関係がお互いにとって楽しい訳が無い。


そんな状態が続きながらも、

いつの間にか、期限である10月になってしまっていた。



Y「どう?売上は?」

私「いや・・・全然上がってない・・・。」

Y「私と別れたいんだね・・・。」

私「そんな訳ないだろ?…

だけどナンバーワンは、厳しいな…。」

Y「私の事どう思ってるの!?」


そんな重苦しい会話が多くなっていた・・・。





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