口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる ⑩ 無茶な約束編

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著者: 健二 井出

Bが売上に関してはレベルが高い方ではないのがわかるであろう。


以前書いた、ホストのモチベーションの問題もあった。

Bは給料の歩合が悪い。

大体どこの店も、

100万以上から4割、

200万円以上から5割

など金額の差異はあるが、

売上の高さによって歩合のパーセンテージも上がっていく。

Bは管理しているサイド

(K野専務・R華社長)が

制度作りにいい加減で無関心だったのか、一律30%だった。



その頃の私は、

色恋で来てもらっているお客さんが一人もいなかった。



色恋は、男の場合は特に、体の関係は避けては通れない方法だ。


付き合うという形式をとっても、

体の関係が無ければ不信がられる。

そうなったらお客さんも次第と離れていく。

特に男が、女性と付き合って体を求めないのはやはり不自然だ。


それで許されるのは

何かトラウマがあるか、ゲイかの2パターンだけであろう。


逆に、一度体の関係を持つと、女性はガッツリと信用してくれるパターンが多かった。

もちろん、全てではないが、確実に信頼関係は強固なものになる。


「女の浮気は心の浮気、男の浮気は体の浮気。」


とその頃の水商売の女の子にレクチャーされた覚えがある。


なかなか上手いこと言うものだ。

女の子は多少なりとも心が入っていないと、ホストに抱かれる事などしないだろう。

……女の子がプラスになる事の方が遥かに少ないのだから。

金銭などの損得勘定でホストに抱かれる訳が無い……。


そして、多少なりとも気持ちが入っている上で抱かれるからこそ、

好きになってもらいやすいのであろう。


……まぁ、そんな女性達の中にも、

「ヤリたいからヤッただけ!」

という。強者もいたが………




Yとの約束に戻るが・・・

ナンバー1になる為には、どうしてもお客さんの来店のコントロールは必須だ。


「今日お客さん一人もこないから悪いんだけど、来てくれない?」


「今日、店が暇だから上の人間に怒られちゃって・・悪いんだけどきてくれない?」


「今日店のホストの○○の誕生日だから来いよ。」


「今日飲みたい気分だから店来いよ。」


「ナンバーに入りたいから、力になってくれ。」

 


などといった言葉を使うのが多いが、

それらの言葉は友達関係の女の子に言った所で効果はほぼ無い。

もし、友達関係の女の子にお願いするとしても、

相手の女性が自分の事(ホスト)を強烈に片思いしてくれているぐらいじゃないと成功しないだろう。


私の場合はと言えば……。


完全なお客さん任せだった。

営業電話はしていたが、


「今日、店来てよ。」


という事ですら、

営業だと思われる事を嫌がってあまり言わなかった。

完全にホスト失格な男であった。


お客さん任せ、風任せの営業style。

自分でも完全に予測不可能な営業スタイルだった……


そして、Yが最後に付け加えた


「……安い男にはならないで。」


という意味は、


「金にならない客に色恋しないでね」


という意味だったのであろう。

もしくはナンバー1を目指すという事は、

暗黙の了解で私が色恋をするという事になる。


ひょっとしたら、慌てて付け加えただけだったのかも知れない。



そうしたやり取りの後、

私はお客さんに対しての対応を少しずつ変えていった。

お客さんとの会話の中に、

気がある様な事を匂わせる言葉を混ぜる様になった。

人にやらされているからなのか、

ぎこちなかった様な記憶がある。


そんな付け焼刃の色恋は、

結局、中々成果は出なかった。


(こんな嘘くさい言葉で本当に信じてくれるのか?)


という気持ちで喋っている時が多かった。


迷いながら言う言葉では、

言葉の熱が弱かったのかもしれない。


だが、

それをやめる訳にはいかなかった。


売上を上げると約束したからだ。

しかも、ナンバー1になれなければ別れるという約束もしてしまった・・・。

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