世にも奇妙なお客様final

前話: 世にも奇妙なお客様part4
著者: 大槻 健志
 世の中に奇妙なお客様は、たくさんいらっしゃいますが、あまり非難めいたことを書くのもどうかと思いまして、今回で最後にします。
 ホテルでのこと。お客様がルームサービスの食事を注文されました。「おすすめはなんですか」と聞いてきました。まるで「これは使える英会話」といった感じのテキストに頻繁に顔をだす表現です。ただしそこは外国でもなければレストランでもありません。それはいいのですが、「味噌ラーメンなどおすすめです」と答えたところ「いやあ、僕味噌苦手な人なんですよ」といった答え。「じゃあカレーなどいかがでしょうか」と言うと「じゃあ大盛りで」といった答え。一応料金が加算されるむねを伝えたところ、「じゃあ、料金が加算されない程度にできるだけ大盛りで」といわれました。なんだか少々文学的な表現でしたが、そこは小説の世界でもなければ映画の世界でもありません。「いやそういったサービスはしておりません」と返事したところ「じゃあ、あるものなんでもいいんで、一番ボリュームがあって一番安いやつを」とお客様が言いました。
 私が返事に窮していると、隣にいたフロントのおばさまが電話をとりあげ、「かしこまりました」と答えてそのままガチャリと電話をきりました。その後そのお客様から電話がかかってくることはありませんでした。

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