看取りのプロが伝える 「生きる」とは? ~私に最も「生きる」を教えてくれた末期癌の女子高生の話~中編
最初の入院時からそのことが気にかかっていて、なるべくゆっくり話しを聞く時間をとっていた。声をかければ、いつも涙を流しながら溢れる思いを話してくれていた。
だけど、もっと効果的な面接方法や、アプローチの仕方があるのではないかと不安だった私。今のままでは、不十分だと思うけれど、だからと言ってどうしていったらいいのか、というとわからなかった。
心を開く
そんな悩みを抱えていたある日、お母さんが話しかけて来た。
それが、いつもと雰囲気が全く違うのだ。何だか私に心を全開に開いていてくれて、頼ってくれているのがわかった。
何が起こった???私、何かしたっけ???
そう戸惑っていたら、お母さんが言った。
お母さん:「看護師長さんから聞きました。石橋さん(私のこと)、お母さんを癌で亡くされたんですってね。いくつの時に?」
私:「そうなんです。2年前に。母は57歳でした。胃癌だったんです。」
お母さん:「若かったのね。看護師長さんに言われてね、石橋さんもお母さんを癌で亡くした経験があるから、お母さんの気持ちをわかってくれますよって。」
そういうことか!!
看護師長のナイスフォロー。それからというものの、お母さんは本当に心を開いて色んな悩みを相談するようになっていった。
その度に、共に考え、何を大切にしていくのかを確認していった。
お母さんは最初、美咲ちゃんには「長く生きて欲しい思い」が強かったのだけど、次第に美咲ちゃんの生命を伸ばすことよりも、「美咲ちゃんの希望、やりたい事に添うこと」を大事にしたいと考えるようになっていった。
告知は必要か?
美咲ちゃんに病名の告知はされていなかった。現在、お腹が妊婦さんのように張り、足は象のように太くなっている。動くのもしんどくなっている。今後、もっと症状が進んでいくだろう。そんな中、本当に告知をしないままで良いのだろうか?
ご両親は悩み、私自身も悩んでいた。
そんな時、看護師長とお母さんが話しをする時に、私も同席させてもらった。
あの時の看護師長の言葉は私にとって宝となり、この後何度となく患者さんのご家族に伝えてきた言葉になった。
お母さん:「このままあの子に、癌であることを伝えなくても良いのでしょうか?」
看護師長:「告知をしないことでの一番の問題は、美咲ちゃんが独りぼっちになってしまうことなんです。」
告知をしない=嘘をついている
そのことから負い目を感じ、接する時に溝を作ってしまうこと。腫れものに触るように接してしまうことが本人を孤独にさせてしまうというのだ。
看護師長:「美咲ちゃんは独りぼっちではないから大丈夫ですよ。美咲ちゃんとお母さんは、お互い支え合っていて、とても良い親子関係だと思いますよ。」
看護師長は、いつも何かをすることよりも、共にあること、側に寄り添うことの大事さを話してくれる。
そして私は、これで良いんだと思えたし、お母さんもこれで良いんだと、告知しないことを選択した。
そして、絶対に独りぼっちにさせないことを心に刻んだ。
お母さんの変化
お母さん:「職場での元同僚の人がね、ご主人を癌で亡くしているの。その人なら相談できるかもしれないと思っていてね。」
私:「それは良いじゃないですか。」
お母さん:「でもね、その人も色々大変だろうし、相談することで悲しみを思い出させるかもしれないと思うとね・・・・・」
私:「でも、相談してみたら喜んでくれるかもしれないですよ。まずは一度相談だけでもしてみてはどうですか?」
そんなやり取りの後、お母さんはその元同僚に相談し、とても親身になってくれた。無事にお母さんの支えになる人が出来た。
介護休暇についても、どうしたら良いのかと何度か相談に乗る中で。
美咲ちゃんの 「家にいたい」 という思いに寄り添いたいことと、
何よりも「自分自身が一緒に時間を過ごしたい」というお母さん自身の願いに気付き、1月から介護休暇を取得することを決めた。
会う度に泣きながら話すけれど、人に話すことが自分にとって良いことがわかり、自らヘルプを出せるようになったこと、また自分自身の願いにも気付き、それを行動に移すことが出来るように変化していった。
そして元同僚の人について、後日驚くべき事実が発覚するのであった。
後編 へ続く
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