【フランスの森の中⑭】上裸でドレッドな妻子持ちヒッピーと、廃バスの中で成立した英国人カップルたちと、テントの中で「人間失格」を読みふける僕(19)と、時々犬連れてるおっさん。

前話: 【フランスの森の中⑬】上裸でドレッドな妻子持ちヒッピーと、廃バスの中で成立した英国人カップルたちと、テントの中で「人間失格」を読みふける僕(19)と、時々犬連れてるおっさん。
次話: 【フランスの森の中⑮】上裸でドレッドな妻子持ちヒッピーと、廃バスの中で成立した英国人カップルたちと、テントの中で「人間失格」を読みふける僕(19)と、時々犬連れてるおっさん。

On y va, la fête!!

フランスのド田舎には、まじで人種が固まっているというお話。自分がいた森は実は北西部のある大都市圏の近くになる田舎町、のはずれにある森の中だった。水も出るし、一応電気も通っている。果たしてこの土地自体、電気・水がジペの所有・契約しているものなのかどうか一切不明だ。それくらい森の中なのだ。自転車で10分ほど漕いでいった先に実は小さな小さな村がある。控えめな聖堂を持つ小さな教会を中心に、広場に小さなタバコ屋とバー兼カフェがあるくらいの小さな村。ちょいちょいお使いで全員分のタバコを買いに行ったりしていた。この村にはまじで白人しかいない。
フランスという国は実は多民族国家だ。フランスで生まれればフランス人というほどには、出生地主義でないにしても、いくつかの条件がそろえば、国籍も取得しやすく、事実あちこちで多民族な人たちが暮らしている。パッと見てすぐわかるのは、アフリカ系、アラブ系、アジア系など様々。地方によってはアフリカ系が多い、などあるし、アジア系で多いのは圧倒的にベトナム系(旧植民地のため)。肌の色も混血が進んでいるので、グラデーション的に様々いて、フランス語しゃべってればフランス人的なところがある。(実際にはハイコンテクストな国なので、いわゆる”フランスカルチャー”を有してれば、が解釈として近い)大都市圏では観光客も含めて多種多様な民族の人々が行き交う人種のるつぼともいえる、フランスだが、さすがにド田舎まで来ると、白人しかいない村もある。自分がいた森の近くはまさにそれだった。
その村に行くたびに、自分は注目を集めた。アジア人だからだ。しかも19歳の日本人なんてまじで子供に見えるらしい。タバコやお酒を買うとき、なんども年齢を聞かれた(笑)パスポート見せろとも言われたが、持ち歩いていなかったので、ちょっと怪しい不法入国者のように思われてたかもしれない。とある日、村でお祭りが開かれているという。ジペが行ってみたら?というので、いつものメンバー(若手外人3人組)で向かうことに。既に時系列的には、ジョンとメアリは廃バスの中でカップル成立している。自分は完全にお邪魔だ。ただ、なぜかジペがめずらしく、俺も行こうかな、と乗り気になったのだ。(!)ジペは基本、文明というか近代的なものには興味を示さない。ただし、お祭りは別らしい。良かった。これで気まずくならずに済む。
実際にお祭り行ってみると、中世のお祭りかというくらいタイムスリップ感はあった。小さな教会の前の広場に、特設ステージみたいなものができ、中年のおっさんバンドがメタルソングを熱唱。みんなノリノリで聞きながらビールをかきこむという、世界共通?なお祭りではあった。ただし、バーとか古い感じの中世的な造りだし、おっさんバンドも新しくはない。そんな中、周囲は全員白人。イギリス人でさえ、服装や見た目でちょっと浮くくらいだ。(みんな外人だとわかるらしい)その上に、上裸のロングドレッドヘアー(ジペ)。汚い恰好したアジア少年(僕)。村人からは完全に異様な一行だと思われるらしく、めちゃくちゃ絡まれたり、話しかけれられたりした。
帰国した後、留学生の友達を地元の田舎に招待したことあるんだけれど、田舎のお祭りではこの時と全く同じ状況になった。日本人しかいない中、一人白人、みたいな。その時、僕は友達の気持ちがわかる気がした。「ああ、こいつら、めずらしがってんな。おれはサーカスのパンダじゃねえ」という奇妙な感じ。怒る訳でもなく、悲しい訳でもない。多分、日本人は一度はこういう、マイノリティという経験をした方が良いと思う。色んな人に優しくなれる。少なくとも気持ちが理解できるよ。

続きのストーリーはこちら!

【フランスの森の中⑮】上裸でドレッドな妻子持ちヒッピーと、廃バスの中で成立した英国人カップルたちと、テントの中で「人間失格」を読みふける僕(19)と、時々犬連れてるおっさん。

著者の本田 秀一さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。