生きると決めた日、それを忘れた日々、思い出した今日。⑥
⑥忘れた日々、思い出した今日。
本州を回って帰ってからも、何度も現実にまた打ちのめされた。
それでも音楽をやめなかった。
勉強もやめなかった。
あらゆる仕事に手を出した。
もっと大きくなりたかった。
無力ばかりが目についた。
日々に追われて次第に忘れ、薄れていく自分に怯えた。
焦るせいで、人に騙されることもあったし、それがきっかけで大きな負債も抱えた。
でも諦めはしなかった。
何度も忘れたし、わからなくなったけど、本当にやりたい事がはっきりしていたからだと思う。
その後ついてもいろいろな話がある。
仕事の話やアメリカに行った話、先生のアシスタントをした話。短い恋の話や、友だちとの話。自分が人に教えごとをし始めた時の話…
何もなかったように感じた日々は、あの頃の俺から全て地続きなのだと、今は感じられる。
思い返せば、その全てについて語れるくらい、俺は生きていた。
苦しい事が多すぎた。
コロナの一件のせいで、トリプルワークまでして貯めた15万は消え、その後の収入はマイナス10万が3ヶ月も続いた。
俺が教える方のレッスン予約も消えたし、
引越しの計画も潰れ、ライブは五本も潰れ、漕ぎ出すはずだった企画も消え。
俺は今ずっと絶望していた。
あの女性に言われた言葉を思い出した
「忘れなてはならない」
あぁ、まだ死んでなかった。
思い出したよ。
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