「祖父」

著者: さとおじ

死んだじいちゃんの話を。 私に似ている。と、思う。 めちゃくちゃだ。 ただ、明治生まれで、幾多の大戦争をうまく生き抜いてきた、優秀な人材である。 私はその詳細を知らないが、孫の私の前で、ばあちゃんとどっちが先にプロポーズしたかで、大モメ。 私はそんなことどうでもいいのだが、本人たちにとっては大問題らしい。... まぁ、私が知っているだけでも、じいちゃんの武勇伝、というかまぁ、色々話はあるが、酔っ払って玄関のガラス戸をぶち破って帰ってきたとか、何日も家に帰ってこないので、ばあちゃんが子供を雀荘の入口にたたせておいた、とか、いろいろある。 若い頃、板前をやっていたので、友人と東京の神楽坂に店を出そう、という話で盛り上がった。 昭和30年代、田舎からいきなり東京に店を構えるというのは、博打に近い。 それも、あの時代の神楽坂といえば有名料亭と芸者がセットだ。 それが大成功。 当時、東京には北海道料理(郷土料理)の店がほとんど無く、三平汁でたちまち有名店になった。 追い打ちをかけるように、千代の山という有名力士(昔は相撲力士はヒーロー的存在)が子分を連れて来るようになり、店の知名度はたちまちうなぎのぼり。 行列ができるくらいに・・・。 じゃぁ、貸店舗ではなく、不動産ごと現金で買って商売したほうが良い。 ということになり、横寺町に店舗を移転することに。 このタイミングでじいちゃんは詐欺にあう。 昭和30年代で200万を支払い、権利書や不動産売買証明書などを取りに行くと、事務所はもぬけの殻。 もちろん地権者も、そんな話は聞いたこともないと・・・。 友人とケンカになったというが、どうしようもないので北海道に帰還。 生前のじいちゃんは、笑いながら「あの時は友人におこられたなぁ。ははは。」 「ははは」と笑っている。 私もいろんな意味で一緒に笑った。

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