母を自宅で看取り天涯孤独になった瞬間の話。③

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1つはIVHポートを入れて、自宅でも点滴がスムーズに行えるようにすること。

2つ目は訪問看護を受けることだ。

1つ目の提案に母はかなり渋った。
点滴なんかそもそも必要ないと思っていたからだが、医師の説明によりと言うより、俺の負担の軽減を考慮し受け入れた。

2つ目は俺が是非にとお願いした。
なぜなら紹介された訪問看護ステーションは俺が学生時代の恩師が所長をしていて、とても信頼できる人物だったからだ。

母は了解し、その後数ヶ月の間、週2回訪問看護を受け体調管理をしていた。



訪問看護に来た看護師から指導を受け、俺も点滴の接続をやらしてもらった。
こんなところで新しい手技を学ぶとは思わんかった。
IVHポートの浮き上がっている皮膚に直接針を刺す。
針は90度に曲がっており、案外力がいる。

母は顔を背け、かなり嫌そうだった。
ゆっくりゆっくり点滴を落とし始めたが、吐き気が出て、お腹も張ってきたという。
腹水がたまったのか?

いつの間にか下肢が昨夜より浮腫んだ感じがする。
栄養状態が悪いので点滴しても浮腫むだけなのでもうしない方向となった。


午後に買い物した後、フェスに行く約束をした友人に電話をしたら、「一緒に行けなかったのは残念だけどがんばってね」って励ましてくれた。
うれしい、ありがとう。
チケットは地元の後輩に電話したらたまたまいたのでタダで挙げた。
後輩も心配してくれ励ますつもりでか焼き鳥弁当おごってくれた。
不器用だけど可愛いやつだ。
親の死は覚悟してるけど、いつまでここにいたら良いのかとまだ迷ってる。

2003年8月14日 last 27 day



ドクターが訪問診療に来た。
点滴はちょっと様子見として、ものだけは一応自宅に置いておくことになった。
そして後で訪問看護の所長さんと担当医と俺で3者面談しましょうってことになった。
夕方色々な用事を見つけて母には内緒でこっそり家を出てきた後、久しぶりに恩師でもある訪問看護ステーションの所長さんに会った。
相変わらず元気。
笑顔を絶やさない。
今は本当に支えになる。
頼りになる。

不思議な縁がある。
結構淡々と緊急時の連絡先や蘇生をどうするか、予後はどのくらいか、介護ベットやエアーマット等安楽なものをレンタルしてみないか、認知症気味の俺の祖母のことが心配だなどなど話した。
結構話を冷静に受け止められた。
だって、ずっとそうやってしっかりもんになるよう育てられてきたから。
「あんたは男だから、あんたは長男だから、あんたが父親に代わって母さんを支えなきゃダメなんだから、あんただけが頼りなんだからね」と幼少期に祖母に繰り返し言われてきた。

今思えば呪いと一緒だ。

「みんなでがんばりましょう!」といってくれた所長の言葉と、最後に「どっか寄ってく?」って誘ってくれてくれた言葉が印象的だ。
この人なら安心。
任せられる。
大丈夫だ、俺も母も。
親戚の家に行って母が貸していた足マッサージ器を取りに行ったら親戚らに捕まった。
早く帰りたかったのに。
彼女達もショックだったのだろう。
普段は連絡もしないのに。

家に帰ったら、まだ親が生きてることに安心した。

それぐらいいつどうなるかわからない状態だった。

でも、母には担当医と所長さんとの面談については言えずちょっと心苦しい。
一人だと苦しい。
今にも押しつぶされそうだ。
明日友人に話そう。

2003年8月15日  last  26 day


昨夜のうちに電動ベットとエアーマットをレンタルしてみてはどうかと母に話し、所長に朝電話したら早速昼前に届けに来てくれた。
さすが所長、仕事が速い。
頼りになる。
また、母のベットを部屋の隅から、リビングの真ん中に移す。
状態がますます悪くなった時の介護の必要性からと、この家の中心が母であることを示すために必要だと所長さんの助言から実行に移した。
母は恐縮がっていた。
他に住んでいる者はおらず、ここは母の家なのに。

エアーマットはまずまずの寝心地で仰向けにもなれると言ってたが、それも15分が限界だそうだ。
すぐに腹部が苦しくなるから少しでも安楽になれるよう、色々と体位を検討してみる。
なんだか我ながら看護してるなぁと妙に思ってしまった。
一日一日が大事だが、雑務も多い。
買い物したり、掃除したり、職場に状況報告したり、時間作ってネット屋で日記書いたり。
迷ったけど、主任に思い切ってこのまま休んでいいか聞いたら「仕事は気にしなくていい。休みも後でどうにでもなるから」って言ってくれた。
所長さんに「最期に間に合うのも大事だけど、それまでの時間を一緒に過ごす事の方が大事だよと教えられ、そうしようと決めたのだ。
どう過ごすか。


日記打ってる間も結構心配。
早く側に戻り、居てあげたい。

でも、これは決して忘れてはいけない記憶なのだ。
だから記録する。
これからの日数で母から何を学んでいくのか。
それはまだわからないけど、ただただ一日一日を大事に生きている。
俺も母も・・・

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母を自宅で看取り天涯孤独になった瞬間の話。④

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