精神科看護師として働いていた時の衝撃的事件簿⑤人を嫌うときは必ず自分の心に問題があるって話。

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[陰性感情:怒り・恐れ・焦り・後悔・不安・自信喪失・孤独感・嫌悪感などの負の感情]

精神科の看護は一般科より患者との「関わり」がメインにある。
点滴や注射薬などを確実に行くようにすること以上に、患者としっかり関わることが大事な仕事である。
なぜなら人間の心は薬では癒されない。
「心ある関わり」で人間の心は初めて癒されるから。
つまり精神科に求められるものは、医者のキュアではなく看護のケアそのものなのだ。
では実際「心ある関わり」とはなんだろう?
それは、しっかり相手の話を聞くこと、黙って側にいること、そしてなにより相手に関心を向けること。
しかし、これが実際とってもとっても難しい。
人間は自分の気持ちに余裕がないと、人の話しなんてなかなか聞けない。
患者から怒鳴られ、罵倒され、喧嘩の仲裁なんかしてると、一気に余裕なんてなくなってしまう。
夜勤の朝方なんて疲れと眠気、忙しさで気持ちに余裕なんてない。患者同士でトラブルがあったらマジで切れそうになる。
実際今までも、何度か切れて患者と喧嘩した。
こんな所辞めてやると何度も考えた。
患者に何度も強い陰性感情を抱いてきた。
しかし、精神科は陰性感情を克服するため、自己を振り返らなくてはならない。
なぜなら自らの陰性感情を克服しなければ、患者との関係が治療的な関係に発展させることができないから。
陰性感情を克服するため自らの内面を深く掘り下げ、自分を見つめなくてはならない。
それが精神科の一番辛い仕事といっても良い。
患者にむかつく、嫌いになる、それって実は「自分自身の心のあり方」に問題があることが多い。
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1年目の夜勤の時、詰所で患者同士が喧嘩して殴り合いになった。
片方は躁鬱病、片方は統合失調症の急性幻覚妄想状態。
数日前から両者とも調子が悪く、躁の患者はまるで王様のように病棟を仕切っていて、俺はその患者に強い陰性感情を抱いていた。
詰所内で両者が喧嘩を始めた時、目の前にいたのに俺はとっさに止められず、むしろ「殴られちまえ」とさえ瞬間的に思ってしまった。
しかし立場上止めに入るが、夜勤は2名で人が少なかったこともあり、仲介に入った後もなかなか喧嘩は止まず、当直のドクターを呼んでやっと収まった。

その時、その患者に「殴り合いになる前に止めれないんだったら精神科辞めちまえ!!」と言われた。

しかし、こっちは心を掻き乱されていたため余裕なく、その患者に思いっきり怒鳴り返してしまった。
「状態悪くて入院してんだから、喧嘩なんかしてんじゃねえよ!!」

その患者は病気の勢いで喧嘩してたから終わったらけろっとしていた。
俺はその後もしばらくむかついてむかついて、その患者の顔も見たくなかったし、側にも行きたくなかった。
関わりたくなかったため、ずっと関わるのを避けていた。
そんなある日、病棟の主任が休憩室でタバコをふかしながら、
「あんたなぜ自分がその患者に陰性感情を抱いたのかもっと考えてみなさい。患者の何が自分のどんなとこに影響したか。
そして、もっとその患者の側に行って話をしてきなさい。」と言ってきた。
主任の言葉は神の言葉のごとく絶対なので、嫌いな患者のとこになんか行きたくなかったけど、言われた通り側に行って久しぶりにゆっくり話してみた。
そしたらその患者はとても穏やかでノーマルだった。
病気の勢いがない時は、とてもノーマルで穏やかに音楽の話が出来た。
そして自分がなんでこんなにも患者に陰性感情を抱いたのか考えてみた。
それはとても辛く苦しい作業だった。
考えてもわかんなかったし、考えたくない、知りたくないという何かが働いてた。
思考がなかなかまとまらなかった。
そして気付いた。
俺は元々「もっとがんばんなきゃ、もっと自分は出来るはず、こんなもんじゃないはずだ」と考え、とても自我理想が高かった。

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