母を自宅で看取り天涯孤独になった瞬間の話。⑬ エピローグ 前編

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エピローグ・1(2003年9月12日~20日) 「陽の光や風となりて」


あれからもう何日たっただろう。
あまりにもあっという間であり、あまりにも長い1週間だった。
沢山の仕事があって、ばたばたしてる内に時が過ぎていった。
沢山のドラマがあったが、忙しさの中で忘れていってしまう。

本当に色々あった。
沢山の人に会った。
人のつながりをきちんと整理するというのは、こんなにも多くの人と出会わなくてはならないのかと感じる。
どんな時もどこへでもヒロはついてきてくれた。
ここ1週間ほぼ24時間一緒にいてくれる。
挨拶回りも、役所関係に行く時も、家を引き払う整理や掃除も全て一緒にやってくれた。
自分に兄弟はいないが、間違いなく兄弟以上のことを彼はしてくれている。
どんなに頼もしいか、どんなに救われるか。
本当にかける言葉もない。
ありがとう。
母が死んで3日目の朝。
シャワーを浴びながら最後に母と見たTVから流れてた歌を口ずさんでいた。
「somewhere over the rainbow」
突然涙が込み上げてきた。
何日か忙しさの中に貯まっていた悲しみが一気にあふれてきた。
シャワーを浴びながら号泣した。
ヒロは驚き心配して見に来てくれた。
そして、俺がシャワーから上がったら昨晩あった不思議な話をしてくれた。
その夜の前の日ソファーで寝てたら肩が痛くなったとのことで、俺は母が使ってたベッドで良かったらと勧めていた。
俺は先に眠っていたが、彼は母の部屋で酒やタバコを吸いながら、日記や詩を書いていた。
その時突然パッと部屋の電気が消えた。
台風だったため停電かと不審に思い外を見るが、隣の家は電気が付いている。
もう一回電気をつけるとすぐにつく。
もしかして部屋でタバコを吸ったり、自分がベットで寝るの嫌だったのかなと思い、荷物を居間に移す。
テーブルや布団類も移し、母の部屋の電気だけ消そうと最後にもう一度部屋に入ろうとした瞬間、再び電気がパッと消えた。
彼がわざわざ部屋に入らなくても済むかのように。
彼は怖いという思いより、神々しいものに出会ったという気持ちで鳥肌が立ち、思わずお辞儀してしまったと言う。
母のベッドに座りながらその話を聞いていたら、こらえていた寂しさが再び溢れ出す。
声を上げて泣きあげる俺をヒロは黙って肩を抱いてくれた。
以前母と話した約束を思い出した。
「自分が死んだら窓をノックするわ。じゃなかったら、陽の光となり風となり、いずれにせよ何かしらの合図を貴方に送るわ。そしたらそれが幽霊がいるかどうかの確証になるでしょ」
母は部屋で煙草を吸おうが、ヒロがベッド使おうが許してくれただろう。
たぶんヒロに「息子をありがとう」と言いたかったのだろう。
「息子をありがとう。これからもよろしく頼むわ」
母なら間違いなくそう言うだろう。
死んでも息子を想い、俺の友人に礼を言うため現れたかと思ったらもう泣くしかなかった。
なんという愛なんだろう。
オレハ オオキナ オオキナ アイ ニ ツツマレテイル・・・

そう感じた。
ありがとう。
ありがとう、母さん。
いつも、いつまでも、ありがとうね。。。

エピローグ・2(2003年9月12日~20日) 「巡り合わせ」

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