母を自宅で看取り天涯孤独になった瞬間の話。⑬ エピローグ 前編
再び一方的に切られる。
とても傷ついた。
後で祖母と兄弟の別の親戚に聞いたら、その人は祖母を含めた一族皆が嫌いで、連絡をとらないようにしていたそうだ。
だから、なんだってんだ。
母が何をしたって言うんだ。
何かを欲しいわけではない。
ただ一言ご愁傷様の一言も言えないのか・・・
祖母の一族に対する恨みと母の死は何にも関係無いはずだ。
祖母の兄弟・姉妹はみな何をやってたんだ一体。
本当に傷ついたが、連絡はきちんとした。
なぜ母が死んだ後まで俺は傷つかなくてはならないんだ。
でも、休んでる暇はない。
自分の務めを全うするべく、仕事を続ける。
そして、もう一つ。
家を引き払うに当たり、とてつもない程大量のごみなどが出てきた。
粗大ゴミも燃えるごみも燃えないごみもすごい量だった。
一人ではとても片付かなかったが、ヒロが一緒にいてくれたから短期間で整理ついたのだろう。
ヒロは黙ってても率先して床の拭き掃除もしてくれた。
親戚は母の死後3日目に来たが、荷物を整理しにきたのか、欲しい物を物色にきたのかわからない感じだった。
俺は母のものは母のもの、基本的に全て捨てるか売りたい。
俺も母も物に執着しない性質だから。
祖母は母のものを全て持って帰りたかったようだ。
思い出に浸りたいらしい。
親戚らはあれこれ片付けるふりして物を物色して持って行った。
「これ、いる?貰っていい?」
「電子レンジ貰っていい?娘が今度家を出るから。」
「これ売るなら頂戴よ」
「これ捨てるなら私が貰ってあげる」
どうせ捨てるものとは言え、なんという浅ましい姿だろうか。
死んだ人間のものを漁って恥ずかしくないのか。
生き方として無様だ。
「欲しけりゃ店で買えよクソやろうどもが!てめえらが死んでみろよ!墓荒らしの畜生共が!」
喉まで出かかった。
本当に必要なものはすでに持ってるはず。
母が死んだら渡して欲しいものは、既に母から聞いている。
渡すべき人にはもう渡している。
しかし、それでも母が世話になった人達だ。
そう思い、「どうぞご勝手に」と返事をしたら、終いには俺に一言の断りもなく母の遺品を持っていった人もいる。
しかも、それは後日母の友人に渡す約束をしている品物だったのに。
勝手に遺品を持って入った人の家に行き、すでに母からの遺言があるので返してもらえないかと伝えたら、「いらないものだと思って」としぶしぶ返却していた。
そして、親戚らは欲しい物を貰っていった後、家を引き払うまでの間、誰一人片付けの手伝いなんかには顔を出さなかった。
最期まで家の掃除を手伝ってくれたのは、ヒロだけだった。
心底失望した。
祖母も祖母の兄弟姉妹、皆本当にクソだ。
そして3つめ。
母は貯金に80万円だけ残していた。
葬儀屋その他の後始末代として息子の負担を軽減しようと残していたのだ。
俺は全額もらうのが忍びなく、祖母に半額の40万円を渡した。
葬儀屋や親戚への食事代、交通費その他の後始末代で俺の分40万はすでに足が出ていたが、それはもうどうでも良かった。
喪主の勤めを果たしているだけだったから。
しかし、祖母は現金を受け取った後日こう言った。
「貰った40万円は家で失くした。いや、妹が盗んだ。いや、あんたが全部持っていったんだ!あの80万円を返せ!」
・・・もう、残念だった。
もう、この人達とは一緒に時を重ねていくことは出来ないと悟った。
自分と悲しみを共有できない浅ましい親戚達や、認知症が進み妄想を抱く祖母。
近い未来、世界中を旅するために俺が日本を発つとき、もう二度と連絡は取らないだろう。
昔、映画ゴッドファーザーで「血は水より濃い」というセリフがあったが、残念ながら俺には
「水(自分が一緒に汗を流して得た友人)は血(血縁)より濃い(絆)」だった。
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