第4話(前編)アフリカへ行く彼から学んだ"生きる"こと【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
生き方の広さ
男の子2人は、由紀夫とけんちゃんといった。
3人とも年が近く、同じ九州出身ということもあり話はとても盛り上がった。
彼ら2人の出会いも面白く、2人はタイで出会っていた。
タイでの一人旅で偶然出会い、2週間程一緒に暮らし旅をして、またいつか日本で会おう!と約束した再会の日が、今日だったのだ。
そして2人の生き方は、その時の私にはあまりにも新しかった。
まず由紀夫はバレエダンサーで、来月からカンパニーに入ってプロで活躍することが決まっていた。12歳の時初めて船で世界一周をして、それからヨーロッパや東南アジアなどダンスをしたり放浪したり、海外にふらっと旅に出ていた。
けんちゃんは日本や海外のボランティアをして回っていた。スイスで農業をしてみたり、カンボジアでボランティアに参加したり、もうすぐアフリカへの短期ボランティアも決まっていた。
そしてそんなバックグラウンドを聞くより先に、2人とも大きなスマイルが最高に素敵だった。
2人の持つ空気は、ゆっくりしていて、でもとても広く、そしてとんでもなく自由でピースフルだった。
私の視界が急に大きく広がった気がした。
え?何それ。そうゆう考え方、大人になってもしていいの?
そうゆう生き方ができるの?
仕事が生き方って...なんだろう。
胸は熱く、足もとがグラグラしていた。
自分の生き方
その時の私はといえば、自分の道に迷いまくっていた。
だけどその気持ちさえ認められずにいた。
自分の持ってる小さな肩書きが全てだった。
この2人はなんでこんなに自由なんだろう....?
特別なキャリアも経歴も何も持っていないのに....?
その時の私の中では海外に行くなんて選択もなかった。目標もなく旅をするなんてよく分からなかった。
自分の頭の中には大きな道があっていつもゴールは前にあった。
道からそれるのは恐ろしいことだし止まってしまうとどんどんゴールは行ってしまう。急がないと。
でも、いつになったらたどりつくんだろう。
新しい扉
家まで着いて、また近いうちに会うことを約束すると、友達と会うからと2人は帰って行った。
ドア越しによく焼けた2人の背中を見送りながら、自分の身体中にすごい速さで血が巡っていくのが分かった。胸が熱くなってお腹の底からワクワクしていた。
今日一日の不思議な出来事が高速で回転していった。
足もとには新品のパソコンが一台転がっている。
頭ではよく分からないけど、何かが大きく大きく変わろうとしていた。
何か新しい扉が開いたような気がした。
このストーリーは2015年に書籍化となり、
2019年にベストセラーとなりました。
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