世の中の癌と呼ばれて 第2回
僕の住んでいる家を知っていたその近所の方が僕が倒れている事を話したところ、
ということで、警察は呼ばず、僕が勝手に家を飛び出してしまった事になっていたと、その近隣の方に後日、話して頂きました。
病院からの帰り道、やっぱり僕はまた信じたいと思い、きっとこれで少しはやさしくしてくれるかもしれない
そう思った。
でもそんな事はなかった。
僕が病院に運ばれた事で、恥をかいたと、暴力はさらにエスカレートした。
そして、そのときから、僕を日本に連れてきたおばさんや、ブラジルにいる祖父母は、僕を邪魔だと思い、日本に送ったのだと思うようになった。
それは、憎しみに変わり、恨みに変わり
僕にあることを決心させてくれる事となった。
僕は、誰も信じず、ただ暴力に耐えながら生きるサンドバックになっていた。
1年が過ぎ、8歳を向かえ、学年で言えば小学2年生になった僕は、人生が大きく変わる人との出会いを迎える事になった。
じい様。
その人は、父親方の祖父。
そして、唯一、初めて信じる事ができた人。
何でじい様の家に言ったのかは思い出せない。
けど、その日を境に、僕の人生は、いろんな意味で変わる事になった。
頭をくしゃくしゃになでてくれたその人は、当時とある仕事で海外を行き来していた。
1年の内、日本にいるのは3~4ヶ月。
残りは海外生活のそのじい様は、僕の事を抱っこし、頭をなで、優しくしてくれた。
じい様の家には、というよりそこら中に本の山があった。
じい様は本が好きだという事が分かった。
僕も本が好きだった。だからその日はじい様の家に泊まった。
朝まで本を沢山読んだ。そして、
僕の人生を大きく変える、
海外
その話をしてくれた。
世界には、知らない事がたくさんある
世界には、素敵な事がたくさんある
世界には、沢山の人と沢山の幸せがある
世界には、自由がある
世界には、自分の居場所がある
とても前向きに話すじい様は、かっこよかった。
そして、なぜだかこの人は信じてもいいと思えた。
だから、全部話した。
親のこと、学校の事、不良の事、居場所がないこと
じい様は泣きながら、聞いてくれた。
そして、
この日から、僕はじい様の家に住むことになった。
そして、じい様は父親と母親にものすごく怒り、僕を引き取り、面倒を見る事を伝えてくれた。
このときから僕は、暴力の檻から抜け出す事ができた。
そして、このじい様がいなければきっと僕は生きていなかったかもしれない。
僕の一番尊敬する「侍」であるじい様との、海外生活が始まった。
第2話 完
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