とあるゲーム業界のブラック会社で夢の代償に僕が失った物。(終章)

2 / 3 ページ

前話: とあるゲーム業界のブラック会社で夢の代償に僕が失った物。第3夜


班長
あ、もやし乙ついでで、シナリオ係りお前にするわ!


もやし「あの、シナリオの経験がないので出来ま…」


班長
あ?なんつった?出来ねえじゃねえんだよ!やるんだよ!クビになりてえのか?!(怒


(机の上の僕のフィギィアを投げる)

もやし「いえ、でも出来ないものは出来ま。。。」


どんがらがっしゃーんぎゃほーーーーーーー


(アスカとレイ、フィギィア大破、もやし緊急事態で涙)


班長
おい、糞蛙、今からこいつにシナリオの描き方を伝授せよ!ニンニン


こうして3日目、


もやし担当は

   メインシナリオライター兼メインプログラマー

となりました。


無理やこれ…軍曹もグラフィッカーなのに…


どーも君失踪(プロジェクト3日/365日)


セイラさん編(徹夜のまま210日経過)


開発が全然終わらぬまま、最悪のタイミングでゲームショウ開催

1人2役なんで全然仕事が進まない。


猛暑の中、某有名マスコットの中で8時間パンフレットを配りました。

これもゲーム業界ならではの体験、

しかし憧れていたゲーム業界が実際こんな辛いとは思ってもみませんでした。


ユーザーさんからはゲームに関する質問や、グッズを買ってくれる人を見て僕は、

なんとかこのゲームを完成させよう、そんな気持ちになったのでした。


(ちなみに開発は数年遅れで、ユーザーはすでにキレながら質問してくる)


コスプレしたセイラさんとグッズや、声掛けを頑張ってました。

バッグヤードでふと、セイラさんが水をくれるついでに話しかけてきました。

セイラさん
モヤシ君、この会社に関わらない方がいいかもよ…

もやし「急にどしたんですか?」

セイラさん
内緒だけどうちの会社、版権元と、派遣会社がグルで上の人が悪い人って書き込みあったの…
(小声で有名なヤクザの組を教えられた)

もやし「そっかそっかー」


…5分ほど沈黙

…えっ!!!


(暑さとか関係無しに、一気に噴き出る汗)頭が真っ白に


セイラさん「あと…今週で仕事辞めるからwおっ先~w」



最後の言葉は全然頭に入ってこない

セイラさん「内緒だけど子供出来たかも、旦那はリーダーね?言ってる意味解るね?ね?」


もやし「あ…はい…」


現場でこいつらは何をしていたんだと思ったりしつつ、

とりあえず口止めされた事は察したもやし少年。

今はそんなこと、気にしている猶予はないんだ…

夏の蝉の鳴き声がまだ聞こえる最中、

僕は自分の仕事を終わらせて、早く本社に戻ろう…そう決めたのでした。


セイラさん退職(プロジェクト210日/365日)

班長もどさくさに紛れて退職(プロジェクト210日/365日)


ケロロ軍曹編(徹夜のまま365日経過)


気づくとプロジェクトは、軍曹と自分の2名だけ…

軍曹と僕は会社の屋上(12F)で一緒にタバコを吸ってました。


ケロロ軍曹
なあ、もやしはさ、派遣だから給料いいんだろ?


もやし「いや…生活費引いたら無いに等しいです」


ケロロ軍曹
それじゃあなんでー、こんな辛い仕事してんだー?

もやし>

        昔からの夢でした。


  ゲームのエンディングに自分の名前が載る事


 でも実際載るって決まっても、今は嬉しくないんです


(夢が叶う瞬間ってもっとなんかあると思ったんですけどネ…)


自分なんかおかしいですよね?


ケロロ軍曹
俺もさ、いっそ屋上から飛び降りた方が今の仕事より楽だとたまに思うんだ。

さらっと危ない事を言う軍曹。


もやし「自分もそれはたまに思ってます…

それに、こんな辛い夢なら叶えなくて良かったんじゃないかって」


軍曹>

        でもな、人生にコンテニューはない

       やり直せない、だから一度しかない人生で

          夢を叶えたお前は立派だよ


もやし「ありが…とう…ござ…(もやしへたれこむ)」


深夜24時、僕はタバコと軽食を取りながら考えました。

…もう夢は叶った

じゃあ僕、なんでこの仕事をしてるんだろう…

少し時間が止まって、思考が出来なくなり、屋上の手すりを超えました。

しかし手すりを掴んだ手を、ずっとすっと放すことは出来ず…

泣いて職場に戻りました。

戻ると軍曹も何故か泣いてました。

こんなのは人がやる仕事じゃない、俺達の扱いはあんまりだよ…


軍曹と2人きり、ずっと1年間、月400時間労働し寝泊りを一緒にしてやっと完成させたこのソフト。

ひょっとして働く事が生きる事より辛いんじゃないか。

そんなことを少し感じた夜でした。


唯一の生存者、軍曹(プロジェクト365日/365日)


ストーリーをお読みいただき、ありがとうございます。ご覧いただいているサイト「STORYS.JP」は、誰もが自分らしいストーリーを歩めるきっかけ作りを目指しています。もし今のあなたが人生でうまくいかないことがあれば、STORYS.JP編集部に相談してみませんか? 次のバナーから人生相談を無料でお申し込みいただけます。

著者の中条 信一さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。