私はここにいる

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著者: 大塚 真理亜

「昔は真壁君モテてたもんね」

ほまれは真壁の首筋に唇を這わせた。


「ああ、遠い昔だ。今じゃただのオヤジだよ」


真壁は裸で仰向けになりほまれに身を任せた。


ほまれの甘い吐息がこだまのように遠い記憶へと誘う。

ほまれの唇が真壁の乳首に這った時、


「あっ!」

真壁は思春期で女を知らず始めての女というものに出くわしたかのようにあっけなく果ててしまった。


「なんで?」

呼吸をみだしている真壁にほまれは不思議そうに聞く。


「わかるだろ?ほまれ」




198×年。ほまれ18歳。高校を卒業して美術の専門学校へ入学した。


当時もてはやされていた横文字の職業に付きたかったと言う簡単な考えだった。


たった一クラス。20名ほどしかいない。


ほまれはイラスト科を専攻した。


子供の頃、漫画オタクだったからだ。

いつか自分もイラストを描いてみたい…そう願っていた。


男女合わせて20名くらい。高校を卒業したばかりの少年、少女たちはすぐ仲良くなった。まるで兄弟姉妹のように。


いつか自分の心の中を絵で表現したいと思っていた。


「いいかい?絵には正解も不正解もないんだよ。時間がきたから今日は終わり」


まるでアインシュタインみたいな出で立ちの白髪の先生が出て行った。


芸術家ってなんでみんな頭がボサボサなんだろうとほまれは後ろ姿を見送った。


クラスメイトたちは


「あーバイト行かなくちゃ!」

と教室を出る生徒もいれば

「ね、ね、どこ行く?」

楽しそうに遊ぶことしか考えてない女子生徒もいる。


「ほまれ、一緒にご飯食べに行かない?それともバイト?」


明美が誘って来た。


「ごめん、バイトじゃないんだけど用事があるから」

明美はまたかよ。みたいな顔をして


「ふ〜ん、今度はご飯食べようね」


明美は決して悪い人間ではない。このクラスメイトたちもざっくばらんで変わり者のほまれにも優しく接してくれる。居心地が良かった。

アーティストを目指す若者たちの考えは自由だった。


ほまれがカバンの中に絵の具やら入れていると


「きゃーやだぁ」

と仔猫が鳴くような声が聞こえて来た。


声の方を向くと椅子に座っている真子が真壁と楽しそうに会話していた。


ほまれは真壁という男子生徒がいまいち好きではなかった。

どちらかと言うとムカつく奴。


真壁は背が高くほまれが好きではないにしろビジュアル的にかっこいいのだ。

多分、誰から見てもかっこいいのであろう。


入学してみんなが仲良くなったころほまれは通学電車の中で真壁が見知らぬ女の子と一緒だったのを見かけたことがあった。女の子は真壁の腕に捕まり甘えたような感じだった。


真子が興味心身の様子で

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