【最終話】『僕の宝物』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜

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新しいスタートを切った。



「最後まで、この旅を噛みしめよう。」



「すべてを感じ、すべてに感謝し、すべてを受け入れよう。」



これまで、どんなに過酷な場面でも、僕は無事だった。


多くのモノに助けられた。


人、土地、天気、自然…


それは目には見えないモノにまで。


奇跡としか言えないようなことばかりだった。


そして今、僕は生きている。


僕はこのすべてに、生かされたんだ。



きっとこれが、僕の運命なんだ。



すべてを受け入れよう。





日本海までは、目の前の道を真っ直ぐ進む。


4kmほどの道のり。


最後の道のり。



その道のりは、昨日とはまるで別モノだった。


昨日の僕は、真っ暗闇の中、ヘッドライトの小さな灯りのみ。

足元だけしか見えなかった。



前も後ろも真っ暗闇の中。



何も見えなかった。



しかし今、前には日本海へ続く道。


後ろには、僕が歩いて来た道があった。



後ろを振り返ってみる。





遠くの方に大きな山々が連なっていた。



「あの山を越えてきたんだな。」



自分でも信じられなかった。



でも、確かに越えてきたんだ。



ひたすらに前を向いている時は、


自分が何をしているのか、


何をしてきたのかは分からない。


でも、ふと振り返ってみた時、


自分のしてきた事の大きさに気がつく。


自分が成し遂げてきた事の凄さに気がつく。



本当に、よくここまで来たと思った。




「自分で自分を褒めてあげたい」



今まで、何でも中途半端。


嫌になったら、すぐ辞める。


そんな時は、


「よくやったよ!」

「もう十分だよ!」

「他にもっといい事があるよ!」


こうして自分を慰め、正当化してきた。


そしていつも、少しの罪悪感や、劣等感が残った。




でも、今回は違う。



「お前すげぇよ!」


「よくやったな!」


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