「お腹の子は、無脳児でした。」最終話 ~妊娠498日の約束~

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前話: 「お腹の子は、無脳児でした。」~葛藤と感動に包まれた5日間の記録~



「むひひひひ。」


はんちゃん、笑う。


「赤ちゃん、帰ってきたぞーーーー!


ばんざーーーーい!」




妊娠466日目
七夕



「さーさーのーはーさーらさらー。」


「鳥の形したー、星の背中に乗ってー、


織姫と彦星がー、一年に一回だけ会える日なんだよー。」


保育園に向かう下り坂。


そうたろうが長靴の底を軽快に鳴らしながら、教えてくれた。




7月7日といったら、忘れもしない。


ちょうど一年前。


「お腹の子は無脳児です。」


と告げられた日。


頭の中が真っ白になって、明るい未来が見えなくなった日。




昨年の7月がどれだけ暑かったか。


覚えていない。


誰にも会っていない、


外にも出ていない、


仕事もしていない。


思い出が、


何も残っていない。




でも一年後に、また笑って生活しているなんて、想像できなかったな。


また妊娠しているなんて、想像できなかったな。


あの日の自分に、明るい未来があると教えてあげたい。


園の中央には、子どもたちの夢で装飾された、竹がしなやかに揺れていた。




「ところで、そうたろう。七夕のお願いごと、何て書いたの?」


帰宅したはんちゃんは、そう訊いて、お味噌汁をすすった。


「おかねもちになりたい!」


右手にブロックを持ったそうたろうは、どうだ!といわんばかりだった。


「それはさ、結果であって、目的ではないよ。


お金とは、ありがとうなんだ。


誰にどうやって喜んでもらうのか。それが目的だ。」




「なるほどー。」


乾いた返事をしたそうたろうは、くっつかないブロックと、格闘を続けた。




妊娠490日目
似た者同士のないものねだり



産まれそうな気配はあるのか。


ないのか。


異常はあるのか。


ないのか。


予定日前、最後の健診日。


もう臨月だというのに、いまだに朝から不安になる。


待合室にL字に並ぶ暖色のソファに座り、「平常心、平常心」と言い聞かせる。


しばらくして、エコーへと案内された。


約一時間待った。


ビッグ・サンダー・マウンテンと同じくらいだろうか。


エコーは、毎度、ナーバスになってしまう。


先生が無言になるだけで、心拍数があがる。


計測をやり直したり、進行がいつもと違うと、不安になる。


エコー写真が少ないと「見せられないのがあったのかも」と勘ぐってしまう。


そんな私の性格を知っているはんちゃんは、


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