毒母に育てられて7

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あの日、あなたに出会わなければ私は、きっと、まだ悪の渦中で生きていたのかも知れない。

主人と出会ったのは、16歳の時。

その時、周りは悪い奴ばかりだった。

その中で断トツに良い人だったのが後に主人となる人。

話が面白い訳でもなくてパッとしない人だったし、優しいだけの友達止まりって感じの人だった。

そして、体育会系で礼儀正しく真面目な人。

正直、こんな人に出会うのは初めてで、戸惑いはあった。

私は彼に対して酷い事を言った事もあるし反発して離れようとした事もあった。

人の温かさに触れるほどに怖がりになって余計に刃向かうようになっていた。

それでも諦めずに根気よく付き合ってくれていた。

こんなに真正面から向き合って真剣に自分の事を考えてくれる人って他に居なかった。

そう思うと良心が痛むような時があって善悪の判断みたいなものが心の中で出来るようになった。

その人の事を考えると胸が痛むのも初めての体験だった。

初めての感情を沢山、教えてくれた人。

私は、この人と一緒に居る事で、喜怒哀楽を覚え、辛い時も逃げずに前を向く事も教えられた。

いつかのバス停まで見送り歩いた北風の吹く夕暮れの事を思い出した。

私はポケットに両手を突っ込んで俯き加減でトボトボ歩いてた。

なんだか寂しい雰囲気がキライだったし、そんな気持ちを悟られる事も嫌った。

彼「下向くな、前を見ろ」

天邪鬼な私は 「嫌だ…」

彼「前が嫌なら上を向け」って言って、また遠い3時間程かかる道のりを帰っていった。

いつも帰り道は、物寂しく上手く笑えず怒ったような顔になっていたように思う。

すごく可愛くない…

なんで、この人と一緒に居る時の私は怒ってばかりいて可愛くないんだろう…

なんで時間は直ぐに過ぎるんだろう?

時が止まれば良いのにって思った。

そしてバスの中で手をあげて此方を見て居る彼の事を、まだポケットに手を突っ込んだままの私は突っ立って、ずっと遠ざかるバスの行く先をジッと見ていた。

笑顔が上手くなくて涙が出そうになるから堪えて睨みつけてるようにも見えるような目で。

だから、こんな時間は本当にキライだった。

なんで、この人は、すっぽり両の手の平ですくうように温めてくれるんだろう?

私は宛ら親鳥の懐で温められている卵のように愛情をかけて少しずつ育まれているようだった。


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