クラウドファンディングでコロナ禍の飲食業界を後方支援。住宅会社代表が志ざす地域に根ざした永続的なコミュニケーション
神奈川県茅ヶ崎市にて建設業を営んできた松尾建設株式会社は、2020年秋にクラウドファンディングを実施。親子3代にわたり、地域に根ざした関わり方をモットーとしてきた松尾建設が『茅ヶ崎ストーリーマルシェ』の再開をとおして目指したのは、コロナ禍における地元・茅ヶ崎の街の活性化と、飲食業界の応援でした。
コロナ禍で7年継続開催の中止を余儀なくされたのは、茅ヶ崎の人びとにとっても馴染み深い存在となっている『茅ヶ崎ストーリーマルシェ』。生産元まで出向いて選ばれる野菜や、焼き立てを提供するため300kgのピザ窯をのせたキッチンカーなど、出店者による採算度外視のこだわりの品々で親しまれてきたマルシェです。今回、代表の青木から語られたのは、先先代より受け継がれてきた“地域の守り手”としての深い想いでした。
■コロナ禍の飲食業界や、茅ヶ崎の街を応援するクラウドファンディング
Q.今回のクラウドファンディングで得られた成果を教えてください
「ありがたいことに、皆様のおかげで目標額を114%上回る結果を出すことができました。支援者には地域の方が多くいらっしゃいましたが、中にはマルシェの出店者さまや、SNSをきっかけにマルシェに参加されたことのない遠方の方からもご支援をいただきました。
11月の『茅ヶ崎ストーリーマルシェ』は、ソーシャルディスタンス確保のために出店数を減らしての開催となりましたが、結果として500名を超えるお客様にご来場いただきました。コロナ以前でも来場者平均300名ほどでしたので、クラウドファンディングを通じて『茅ヶ崎ストーリーマルシェ』を知っていただけた事がとても嬉しかったです。早速、リターンのチケットを使ってお買い物される方もいらっしゃいました。」
Q.なぜ、クラウドファンディングという形をとったのでしょうか?
「今回のクラウドファンディングの目的には、茅ヶ崎の街へ活気を取り戻すことはもちろん、コロナ禍の影響によりマイナスの影響を受けてしまった飲食業界の皆さんをサポートしたいという強い思いがありました。
リターンのひとつとして、マルシェ出店時にトレーラーキッチンを利用していただく“トライアルキッチン”を採用したのですが、出店にともなう光熱費や売上のフィーは一切いただかない仕組みにしました。マルシェの再開がゴールではなく、出店してくださる飲食店の皆さんが元気にならないと意味がないと思ったのです。そして同時に、コロナ禍でも新規出店にチャレンジする方の応援の場にできればと考えました。」
Q.実際に“トライアルキッチン”のリターンを選ばれた方とはどのような動きがありましたか?
「支援していただいた方は“いつかお店を開きたい”と思っている方々で、普段は他のお仕事をされている方が多い印象でした。
早い方は、2021年1月にはトレーラーキッチンを利用したトライアルキッチンとして出店していただく予定です。出店時のメニューを打ち合わせたり、お料理の写真を拝見すると、とてもレベルが高く、好評であれば『茅ヶ崎ストーリーマルシェ』にご参加いただいてもおもしろいと考えています。」
■地域に愛されるマルシェとなった原点は、親子3代に渡り受け継がれてきた“地域”との関わり方
Q.地域で愛されるイベントとなっている『茅ヶ崎ストーリーマルシェ』を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
「松尾建設は、昭和16年に造園業として創業しました。地元茅ヶ崎や湘南エリアを中心に、祖父から父、父から私へと“地域の皆さまに喜んでいただけること”をモットーに、形を変えながら現在の建設業に至ります。
昔、大工の棟梁は、家を建てる以外にその地域の相談役も兼ねていたと聞きます。建てた家をその後も守っていくと同時に、その家の世話を焼いたり、近所の困りごとを解決したりと、地域の守り手でもあったようです。私たちも代々、“地元の工務店こそ、そのような存在でありたい”と考えてきました。
お客様の「家を建てたい」という願いを叶え、建てた後は家のメンテナンスをする。私はそこに、さらにもう一歩深いお付き合いができたらと考え、お客様とのダイレクトな接点を求めました。それが、7年前より隔月開催している『茅ヶ崎ストーリーマルシェ』です。」
Q.マルシェを開催するようになって、地域の方々との関係性に変化はありましたか?
「当初、奈良の北条工務店さんのマルシェを参考にさせていただいたのですが、北条工務店さんのめざす所と同様、マルシェを通じて家づくりに直接関係のないお客様へも、“ていねいな暮らしづくりをしている住宅会社”として認知を広げることができています。めあての飲食店や、こちらでセレクトしたお店の雰囲気からも、当社を知っていただく機会になっていると実感しています。
また、マルシェ以外の日でも朝の散歩帰りに立ち寄ってくださる方もいらっしゃいますし、コロナ禍の現在だからこそ、屋外でおこなうマルシェやテイクアウトにはとても需要があり、多くの皆さまに喜んでいただいています。」
Q.『茅ヶ崎ストーリーマルシェ』の特徴でもあるトレーラーキッチンについて教えてください
「トレーラーキッチンは20フィート(およそ6m)のトレーラー上に冷蔵用のコンテナを置いて改造したものです。中には業務用のキッチン、水道、ガスコンロ、冷蔵庫、冷凍庫、エアコンを完備していて、調理する環境としても不足のないものにしました。もちろん土台はトレーラーですので、移動させることも可能です。」
■最新トレーラーハウスでめざす、ニューノーマル時代の暮らし方
Q.クラウドファンディングのリターンに“トレーラーハウス『mobile casa』体験”がありました。採用した理由を教えてください
「以前はキャンピングカーを所有しており、家族で全国各地へ出かけていました。キャンピングカーは限られた空間で生活に必要なものを配置する必要がありますが、どうすればより快適に過ごせるかを考える時間も大好きでした。
それから、自宅の庭に中古コンテナを輸入してトレーニングジムに改造したり、敷地内にトレーラーキッチンを常設したりと、トレーラーハウスの魅力に惹きこまれていったんです。
トレーラーハウス自体はコアなファンは居るものの、一般的にまだ身近な選択肢にはなっていないと考えています。今回は、多くの方にトレーラーハウスを知っていただきたく、リターンのひとつとして採用しました。」
Q.マルシェでの“トレーラーハウス『mobile casa』体験”の反応はいかがでしたか?
「中に入ってみて「これだったら暮らせるね」とおっしゃる方がほとんどでした。マルシェ後も事務所の駐車スペースに展示していますが、1日に数組、見学希望のお声を掛けていただきます。
mobile casa(モバイルカーサ)は移動を重視したキャンビングカーと違い、居住スペースが広く安定性が大きいことが特長です。運転席がないことで、およそ8.5畳のゆとりあるスペースを確保できています。高さを有効活用したロフト部分には、最大で4名が横になることができます。住宅用と同じトイレやシャワーユニットを設置しているので、本当に“動かせるワンルーム”とも言えます。その辺りが、「これだったら暮らせる」という感想につながっているのだと思います。」
Q.テレビ番組にも取り上げられ、コロナ禍における需要としても注目が集まっていますが、放送後はどのような反響がありましたか?
「テレビでの放送後は、視聴した多くの方から反響をいただきました。『トレーラーハウスで海の家をできないか』『運営しているバーベキュー場に置きたい』『駐車場として使っているところを活用したい』など、さまざまな問い合わせがありました。
トレーラーハウスは建築確認の必要がないので、これまで建築できなかった場所に置けるのではないかと考える方が多いようです。税金面では、固定資産税ではなく車検をとっているので、自動車税しか税金がかからないことも検討のプラス要因として働いているのだと思います。」
■フレキシブルな居住を提案しながら、地域で迎え入れる存在でもあり続けたい
Q.トレーラーハウス『mobile casa』は、今後どのような活用が考えられますか?
「コロナ禍で外出も懸念される中ですのでお子さまの誕生日のお祝いや、仲間との新年会など、気兼ねなく飲食できる環境としても利用しやすいのではないかと思っています。また、テレワークの必要がありながら、なかなか自宅では集中できない方のワークスペースとしてなど、さまざまな需要があると考えています。
これから日本の人口が減って、ご両親から家を相続してもらい受けることも考えられます。その際に、実家は残しながら庭にmobile casaを置いて暮らしてみたり、人に貸すのも良いかもしれません。
住居がフレキシブルに変化できるということは、それだけ自由な生活を送ることが可能になるということです。“家が動かせることで私たちの暮らし方のバリエーションが増える”のは間違いないと思います。mobile casaが、そのような住まいかたの一端を担えたら豊かに暮らせる人が増えると考えています。」
Q.トレーラーハウスの普及という点において、今後のビジョンがあれば教えてください
「mobile casaは、3社による共同開発プロジェクトにより生まれました。私たち松尾建設が施工を行い、デザインや設計をカーサプロジェクトさん、トレーラーハウス全体の監修をYADOKARIさんと組んで行ないましたが、同じようにトレーラーハウスを広めていきたいという志をもつ方々で社団法人を作りたいと考えています。
日本ではトレーラーハウスやタイニーハウスはまだまだ認知度が低く、興味があってもどこに頼めば良いかわからないのが実情です。社団法人をつくることで、トレーラハウスやタイニーハウスの選び方や、施工をどこにお願いすれば良いかなどを相談できる場を設けて、新しい住まい方を広めていきたいと考えています。」
Q.最後に。地域に根ざした住宅会社としての今後のビジョンを教えてください
「『茅ヶ崎ストーリーマルシェ』は、地域の方々が集う場所になってくれることを願っています。小さい活動ですが、少しでも茅ヶ崎が元気になるお手伝いができると嬉しいです。
コロナ禍で多くの飲食店さまが休業したり、時間短縮での営業をしたりする中、お店をたたまれる決断をされる方もいらっしゃいます。マルシェやトライアルキッチンが、このような状況でも『いつか自分のお店を出したい』と希望を持っている方の後押しになれば幸いです。
そして私たちのマルシェだけではなく、このような地域に根ざした活動が増えていき、毎週どこかでマルシェが開催され、人々が集まる場所が増えていくといいのではないかと考えています。」
マルシェとトレーラーハウスの活用により、コロナ禍での住宅会社のあり方をも柔軟に変化させている青木代表。新しい住まい方や家づくりの提案をしていきながら、地域に根ざした活動も続けていくというスタンスです。トレーラーハウスの開発により、“居住”という一箇所に留まり続けることの概念を覆しながら、マルシェでは、逆に茅ヶ崎に来る人を迎える立場でもありたいと話します。
この先、フレキシブルな住まい方が当たり前になった時に「茅ヶ崎で立ち寄るなら松尾建設」という、馴染みの場所になっていく未来も想像できます。コロナと共存しながら、日々“新しい時代”に対応しなければならない私たちにとって、このように地域で迎え入れてくれる存在は、全国各地で必要になってくるのかも知れません。
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