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障がい者水泳日本代表選手監修「Wheelchair Bag Project」構想から3年弱 車いす生活者向けバッグの開発に込めた想い

著者: 株式会社ゴールドウイン

株式会社ゴールドウインが展開するスイムウエアブランド「Speedo(スピード)」は、当社CSR推進室所属の障がい者水泳日本代表・鈴木孝幸が監修した「Wheelchair Bag Project」において、車いす生活者向けのバック「ウィルチェアバックパック」と「ウィルチェアウィーラーバッグ」を11月に発売。ブランドオフィシャルオンラインストアなどで販売されると共に、両製品は当社が「障がい者と健常者の共生社会」の実現に向け2016年からオフィシャルパートナーとしてサポートを務める一般社団法人日本身体障がい者水泳連盟にオフィシャルバッグとして提供した。「一人でも旅行や遠征に行けるバッグが欲しい」という車いす生活者のニーズに応えるべく、鈴木自らが当事者として製作に携わり、構想から実に3年弱をかけて誕生した製品だ。




「ウィルチェア専用にするのではなく、健常者にとっても使い勝手の良い製品にしたい」


鈴木は先天的な四肢欠損で、これまで長い時間を車いすと共に歩んできた。本プロジェクトを監修するにあたって、製品をウィルチェア専用にするのではなく、健常者にとっても使い勝手の良い製品であることを常に視野に入れてきた。それは、このプロジェクトを障がい者と健常者という、この国では少し隔たりがあると感じる2つの世界をつなぐツールとして捉えたいという想いからだ。

 


バッグのデザインを担当した知久(ちきゅう)は、ゴールドウインのアウトドアブランドである「THE NORTH FACE」でバッグのデザインを担当しているが、2017年にSpeedo事業部からこのプロジェクトへの参加を依頼された。通常の職域を超えることになるが、「人の役に立てるバッグなら作りたい」という想いから、プロジェクトへ参加。その後、鈴木とは2018年に初めて会い、それから幾度となく意見交換をし、プロトタイプを作った。その際には、広く意見を取り入れたいと、鈴木以外にも車いすラグビーや車いすテニスの選手にも意見を聞き、打合せを重ねた。


これまでは一般用のバッグを付き添いの方に持ってもらうことが常だったが、鈴木は「やっぱり一人でも旅行や遠征に行けるバッグが欲しい」と夢を語る。障がい者水泳の選手たちは通常、スイマーが使いやすいように作られているスイマーズリュックを使っているが、ショルダーストラップを車いすのハンドルに無理やりかけているため、バッグ自体が傷みやすく、使い勝手が良いとは言えなかった。「スイマーズリュックは容量が大きい事は良いのですが、幅があるせいで車いすの後ろにかけるとタイヤと擦れてしまう。また、後ろに重心がいって倒れそうになるとか、難儀なところが多かったんです。」という鈴木のリアルな体験談から知久は課題を抽出した。


実際にプロトタイプを確認した鈴木は、「最初のバージョンは生地がけっこう柔らかくて、口を開くとペロンと落ちてしまって、閉めようと思っても手が届きませんでした。一方で、形は最初から完成されていましたね。」という感想を持った。

その感想で改善点が明確になり、知久は「通常バッグの開口は上部から大きくオープンして、下部へ落ちていく。その点で四角い形は合理的です。また生地に関しては、生産をスポーツラインから僕が普段使っているアウトドアラインに変更したことが大きく好転し、そこからスムーズにサンプル作りが進行していきました。」と、自身のバッググラウンドを生かし、即座に解決方法を見出した。 

 



「障がい者と健常者の共生社会」の実現に向けて


鈴木は「障がい者に特化したものってちょっとダサいんですよ(笑)。だから自分の場合も機能性とデザインを天秤にかけて、お洒落なものを無理して使っていたっていう。他の障がい者水泳選手たちもわりとそういう思考のほうが強かった気がします。」と、道具の見た目の良さへの拘りを明かす。

知久はその想いを叶えるべく、デザイン面も追求。「ロゴもそこまで目立たせず、全体をオールブラックにしました。それと、一言に障がいといっても様々な種類があるので、そこは他の障がい者アスリート達にもご協力いただきながら、様々な声を取り入れるように意識しましたね。」

車いすを使用しているアスリートでも、それぞれ抱えている悩みは違う。鈴木の場合は四肢欠損のため、体幹には比較的しっかり筋肉がついている。例えば、頸椎損傷の選手であれば握力がほとんどない選手もいるため、そこでどのような不具合が生じるかを都度確認し合いながら開発を進めた。知久は、鈴木の意見を軸として捉えつつも、彼から他の選手の状況もヒアリングし、様々な意見の最大公約数を目指した。 

知久は、「僕たちもまだまだ気づかない事ばかりなので、鈴木選手がぼそっと冗談のように話す事全てが改善のきっかけになります。今回もそのおかげで、広く、色んな人が使えるようなバッグになっていると思います。」と今回のバッグに確かな手応えを感じている。



~鈴木孝幸の想い~

「このバッグを説明する際に『障がい者専用』という言い方はしたくないですね。車いす生活者が必要な要素は健常者には必要ない事もあります。必要ないものは中にしまったりもでき、つまり『車いすの人にも使いやすい』という見方もできて、結果として『誰でも使ってもらえるバッグ』になっていると思います。

4方向に動くキャスターは、車いす生活者にとってはとてもありがたい仕様です。キャスターが4方向だと、バッグを後ろにつけていても車いすの機能性が落ちず、狭いところでもUターンできます。それと最初は、サイドについた設置用のループでちゃんと車いすとフィットするか懸念していたのですが、それもまったく問題なく。例えば、今まで2泊3日の遠征時には後ろと前にリュックを抱えていたのですが、今はこのセットで十分です。さらに、このバッグは本当に良いところだらけなんですけど(笑)、ファスナーもスムーズで。ショルダーストラップがタイヤに絡まってとれない、みたいなこともなくなって、僕の要望は全て叶えて頂きました。水泳チームのみんなも早く欲しいと言っていますよ。」


 


~Speedoの想い~

「この道具を通してみなさんに障がい者の目線からみた世界を少しでも『知ってもらうこと』が重要。

Speedoがスポーツブランドとして掲げているのが「障がい者と健常者の共生社会」。この実現の為に、先ずは現実を知る事。健常者の立場からすると、最初はドキドキして何か手伝ってあげなければなどと考えますが、実は彼らはとてもしっかりしていて、できない事に対しては自分から声をあげる。知らないと身構えてしまいますが、実際に接して理解できれば、心の垣根はなくなります。

ブランドとして大切にしているのは、老若男女、LGBTQも含めて全員がスポーツを楽しめる環境づくりにむけて、継続的に障がい者アスリートをサポートしていくこと。そして、そこで得られた声を集めて、高齢化社会の中で技術として繁栄させていくこと。いずれ私たちも車いすを使う生活が待っているかもしれないですし、その時なんかは今回のバッグで培ったスキルが応用できます。そうやって、自分たちの中では全てがつながっているものと捉えています。」




■プレスリリース

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