価値のある新酒の時期を逃したくない。三和酒造が初めての頒布会実施に漕ぎ着けるまでの2週間の裏側
臥龍梅(がりゅうばい)などを手がける三和酒造株式会社は、2020年に初めて頒布会を実施しました。
きっかけとなったのは、新型コロナウイルス感染症の拡大。毎年3月から4月にかけて開催していた新酒お披露目のオフラインイベントが、コロナの影響でことごとく開催できなくなったのです。その代わりにと、急遽頒布会を開催することを決定。昨年、無事成功を収めました。
今回は、三和酒造株式会社 専務取締役の鈴木孝昌が、急遽実施した頒布会の裏側や引き続き今年も開催する頒布会への思い、今後の展望についてお話します。
■コロナ禍で急遽、頒布会実施を決定
頒布会とは、季節に合わせてお酒が届く定期便のこと。コロナ禍になるよりも前から、日本酒の頒布会は存在していました。しかし、それほど多くなかったのが実情。我々のような地方の酒蔵は特に、頒布会よりもオフラインイベントに力を入れていることがほとんどでした。
そんな中で、新型コロナウイルス感染症の拡大という未曾有の事態が発生。新酒が出揃い、これからイベントなどで今年のお酒を振る舞おうという時期に、イベントがすべて開催できなくなってしまいました。
しかし、できたての新酒を味わってもらえる期間は限られています。お酒は、若いものを熟成することはできますが、その時間軸を反対に戻すことはできません。「価値がある新酒の時期をどうしても逃したくない」と思い、頒布会の実施を決定。それが2020年2月末のことでした。
2月末はまだ緊急事態宣言も出ておらず、言うならば世間がザワザワとし始めた時期。今思えば、あのタイミングで頒布会実施の決断をしてよかったと思います。決定が2週間遅れていたら、頒布会のやり方も大きく変わっていたでしょう。
■準備期間は2週間。手探りでたどり着いた実施
弊社が行った「特別頒布会」は、2020年3月末から5月末の期間で720mlの新酒を6本お送りするというもの。3月と4月は2本ずつ、そして5月にはシークレット酒を加えた2本をお送りしました。
新酒が飲めるだけではなく、限定のノベルティを作成するなどプラスアルファで楽しんでいただけることも考え実施しました。
2月末の決定から急ピッチで進んだ頒布会の準備。売り始めは3月中旬。約2週間で準備を進めなくてはいけませんでした。何もかもが初めてで、わからないことだらけでしたね。仕組み作りと準備を同時に進めていき、何とかして実施に漕ぎ着けられたように思います。
そもそも募集が滞りなくできるのかということから始まり、募集期間や売り方などといった、頒布会を進める大枠となるルール作りのノウハウも持ち合わせていなかったので、ずっと手探りで進めたのが正直なところでした。
加えて大変だったのが、販促物です。チラシやサイトなども急遽制作したのですが、おそらくこれらを外部に委託していたら、募集開始に間に合っていなかったと思います。制作物をすべて内製でできたというのは、昨年の頒布会が成功した要因のひとつでした。
■頒布会で感じた嬉しさと課題
バタバタしながらたどり着いた初めての頒布会ではありましたが、実施後は嬉しいお声をたくさんいただきました。
元々、お客様の「コロナで外出できないけどお酒が買いたい」という思いと、我々の「造った新酒をどうにかして届けたい」という思いのどちらも叶えたかったので、頒布会を通してそれらを実現できたと思います。
また、最後にお届けしたシークレット酒が想像以上に好評をいただいたことは予想外でした。
実は昨年9月に発売した「臥龍梅 三味和醸(さんみわじょう)シリーズ」は、この頒布会での皆様のお声を参考にさせていただきその後商品化したシリーズなんです。
異なる酒米を混ぜたブレンド酒で、それぞれの酒米の良いところが引き立ち奥行きを感じられる味わいのシリーズです。
10種類以上の酒米で醸す三和酒造として、日本酒の新しい可能性を感じられる商品が評価いただけたことはとても嬉しかったですね。
今後もテーマを変えながら酒米の種類や調合割合を変更してシリーズを展開していく予定です。
もちろん、急遽開催したものだったので、課題も多く残りました。そもそも地方の酒屋は東京に比べて頒布会に馴染みがないので、理解を深めていただけるようにしっかりご説明をしていかなくてはと感じました。また、広くお客様に知っていただくための工夫も必要だと感じました。
■頒布会を通して日本酒を楽しむ方を増やしたい
現在、2021年度の頒布会に向けての準備を進めています。今年もまだまだ続いているコロナ禍。今年もオフラインイベントの開催はむずかしいので、オンラインで新酒をお届けしようと考えているところです。
実は昨年の頒布会は、関東エリアのお客様に多く手に取っていただけていたのです。
というのも、東京の酒屋さんや居酒屋さんに出すときは、銘柄はほとんどが1種類、多くて2種類程度。臥龍梅の大吟醸で4〜5種類出しているお店はないので、「気になっていたけどなかなか飲めなかった」という方に届けられていたことが、実施後にいただいたお声でわかりました。
コロナをきっかけに始めた頒布会でしたが、これを機に、臥龍梅のファンの方はもちろん、より多くの方に届けられるよう続けていきたいと思います。
また、コロナが収束しても、頒布会は開催していきたいと考えています。遠方の方にも静岡の地酒を楽しんでいただきたいですね。
現在は、募集期間を決め、締め切ったあとに3ヶ月お送りする形を取っていますが、今後はより長いスパンでより多くの方にお酒を手に取っていただける仕組みを作っていきたいなと思っています。
■「臥龍梅 限定頒布会 2021」の詳細はこちらから:
https://garyubai.theshop.jp/items/41266192
■ 関連プレスリリース:
静岡・清水の地酒「臥龍梅」が3ヶ月に渡って自宅に届く企画「臥龍梅 限定頒布会 2021」受付開始
(監修:三和酒造株式会社、取材・文:ameri)
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