『4-in-ONE (フォー・イン・ワン)』開発物語 ---英語4技能 「読み・書き・話す・聞く」の力を総合的に身に付けるシリーズは、こうして生まれた!
2021年春、株式会社アルクが発売した『4-in-ONE advanced 上級』『4-in-ONE intermediate 中級』。 タイトルにある「4-in-ONE」とは、4 skills in one book(4つの技能を1冊の本で)の意味。「読む・聞く・書く・話す」の、コミュニケーションの4技能を伸ばすための本です。
「4技能って、大学入学共通テストの改革が目指していた、英語のアレ?」と、ぼんやり記憶されている方もいらっしゃるかもしれませんが、そう、そのアレです! 子どもたちが今、挑戦している4技能を、大人もやろう、というか、むしろ大人の英語に必要なんですよ!という、アルクの新シリーズです。編集担当の永井薫さんに、この企画が生まれた背景と、どんな方に、どんなふうに使ってほしいか、お話しを伺いました。
永井薫(ながい・かおる)
株式会社アルク・出版編集部。東京外国語大学英米語科卒業後、同社にて、英語学習書、通訳・翻訳者向け専門書などの企画・編集に携わる。月刊『ENGLISH JOURNAL』、通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」で編集長を歴任する。オフは着物講師・着付け師として活躍する「和」の人。
現実世界のコミュニケーション・コンテクストで英語を学ぶ
Q: この本が生まれたきっかけを教えてください。
永井:この「4-in-ONE」の2冊は、2019年初頭に刊行された「実戦力徹底トレーニング」シリーズをベースに生まれたものです。このシリーズ名、社内でもイマイチ定着していなくて、「実践力」の間違いですよね?と聞かれたりします。ビジネスの現場などの「実戦」で使えるように、とわざわざ「実戦力」と命名したのですが…もう、訂正するのも面倒で(笑)。
この実戦力シリーズは、4技能を習得する『聞く英語』『読む英語』『話す英語』『書く英語』という4冊で構成されているんです。この4冊も、実はそれぞれ、1冊の中で4技能を習得するものだったのですが、そのコンセプトがあまり伝わらなかった。
Q: たしかに、4冊買ってコンプリートっていうふうに見えるかも…
永井:そうなんです。でも例えば、『聞く英語』であれば、入り口が「聞く」という技能にあるだけで、会話を聞いた後に、意見を言う(聞く⇒話す)とか、プレゼンを聞いたあとに、内容をまとめてメールする(聞く⇒書く)とか、戦略的に4つの技能をそれぞれ1冊の中で学べます。
この、インプットした英語の概要を素早く把握して、相手にわかりやすくまとめたり、必要な情報を抽出したり、時系列にそって整理したりというアウトプットに結び付けるというトレーニングが多くの方に受け入れられ、発売後すぐに増刷がかかりました(『話す英語』と『書く英語』は、まずアウトプットから入るので、学び方が少し違うのですが)。
そこでこのシリーズのメソッドを使って、1冊で4技能をカバーしてますよ、ということがわかるように、4-in-one(4 skills in one book=4つの技能を1冊の本で[学ぶ])という新シリーズを作った、というのが企画の経緯です。
この2冊でも、読んだり、聞いたりした(inputした)英語を、要約して書いたり、誰かに話したりする(outputする)トレーニングをします。現実世界のコミュニケーション・コンテクストで発生する英語に忠実な流れで学び、「読み、書き、話す、聞く」の4つの技能を統合的に身に付けます。
Q:「実戦力」シリーズと「4-in-ONE」とで、タイトル以外に何が変わったんですか?
永井:「実戦力」ではオフィスで使う英語を素材にしていましたが、「4-in-ONE」では、日常的に目にする、たとえば商品の解説書とかニュースとか小説の抜粋といった英語でトレーニングを積みます。また、intermediate=中級とadvanced=上級の2冊に分けましたので、幅広いレベルの方にお使いいただけます。
赤ちゃんが言葉を話すプロセスを考えてみる
Q:英語を聞いたり、読んだりしたあとに、話したり、書いたりするわけですよね。
永井:はいそうです。4技能という言葉は、大学入学共通テストとの関連でよく耳にしますが、実際には、大人の学習者にも必要です。コミュニケーションの英語って、話せるだけ、聞けるだけではダメですよね。英語ができるイコール英語がペラペラ話せること、と思われがちですが、世界的に通用する英語の使い手は「読む・聞く・書く・話す」がまんべんなくできるのです。むしろ「話す」のが一番早く身に付く、という方もいらっしゃいますから。
Q: そうなんですね! 日本人は英語を「読む」のはまあまあできて、「話す」のが不得手なのかと思ってました。
永井:output(「話す」「書く」)は、膨大な量のinput(「読む」「聞く」)の上に成り立ちます。「実戦力」、それから「4-in-ONE」シリーズの著者や監修者の先生方は、口をそろえて、日本人学習者はinput量がまったく足りない、とおっしゃいます。赤ちゃんだってそうですよね。生まれてすぐに、意味のある言葉を話せる赤ちゃんはいません。親や周りの人からの話しかけをたくさん聞いて(inputして)、それからようやく話せる(outputできる)ようになるわけです。
大人の英語学習も同じ。たくさんのinputをせずに、outputだけ練習しても、大人にふさわしい内容のoutputはできません。ですから、「4-in-ONE」シリーズはとにかくたくさん、英語を聞き、読むことからトレーニングを始めていただくんです。
すべての英文に音声がついているのも、この本の魅力。コロナ禍のため、狭い録音スタジオにナレーターさんに何人も入ってもらって、会話のかけあい収録をすることができず、苦労しました(写真は収録用のスクリプト)。
すべてをわかりたがりすぎる日本人学習者
Q: 「4-in-ONE」の2冊には、それぞれ10本の聞く英語と10本の読む英語が掲載されていますね。1本の英語につき1つのTASKが設けられています。
永井:はい。このTASK(問題)を解くことを目指して、まずは英語を聞いたり、読んだりしてもらいます。裏を返せば、この段階ではTASKに答えられればいいので、聞いたものや読んだものをすべて理解している必要はないんです。聞き落とすところがあっても、読んで理解できないところがあってもかまいません。
日本語でもそうじゃありませんか? 誰かと話をしていても、ついつい上の空になって聞いていなかったり、あるいは周りの騒音で聞こえなかったりすることだってあります。でもなんとか前後の情報をつないでコミュニケーションを持続させますよね。スマホでニュースを読んだりするときだって、一語一句に注意を払っている人はほぼいないと思います。でも、自分が興味のある話題や、誰かに伝えたい情報は、ちゃんとインプットできる。
英語も同じです。特に「4-in-ONE」シリーズがターゲットにしている中級~上級の学習者は、自分の目的に沿った、戦略的な聞き方、読み方をする必要があります。仮に途中でわからなくなっても、それですべてがリセットされるわけではありません。内心、ドキドキしながらも、「私、わかってますもんね」という風を装って(笑)、コミュニケーションを破綻させないことが大切です。聞き続けたり、読み続けたりすれば、どこかでわかるポイントが現れるかもしれないので、振り落とされないようしがみつくこと。そういう練習も、この「4-in-ONE」シリーズでしていただきたいのです。
自分で問題を作ると、英語力が伸びる
Q: この「4-in-ONE」を制作する上で、ご苦労された点などありましたら。
永井:やはりTASKの作成が一番、難しかったです。といっても、これは私の苦労というよりも、著者のご苦労ですが。
単なるリスニングやリーディングの問題集/参考書であれば、英文スクリプトと訳を載せて、空所補充問題とか内容理解問題とかを作成すればいいわけです。でもこれは、inputしたものをoutputさせなければならない。英文素材は先に作ってあるのですが、その英文の目的や核となる情報が理解できていることがわかるoutputをしてもらうためには、こういうTASKを作ろう、というふうに。学ぶ側はinputしたものをTASKを通してoutputするのですが、制作側は逆側から作りこまなければなりません。なので、ここが一番大変で、と同時に制作の醍醐味でもありました。
Q: そういうことも、編集者のお仕事なのですか?! 学校の英語の先生がテストをつくっているみたいですね。
永井:本によって、編集者と著者の関わり方は異なり、もちろん、英語で答えさせるものはネイティブスタッフにも入ってもらっているわけですが、かなり時間をかけて工夫をしていますので、ぜひこのTASKを活用して、学んでいただきたい。必ず力がつきますから。さらに言えば、余裕がある方は、英文を基に自分で問題をつくってみるといいと思いますよ。これは自分が、英文のどこが重要かわかっていないとできませんし、どういうoutputに結び付くのかを頭の中で考えてみることは、実際のコミュニケーションのリハーサルにもなります。
Q: それはすごいですね。でも、英語を自分で教えてみると、自分の英語力も伸びる、と言われますよね。
永井:そのとおりです。それから、4技能を授業に取り込まないといけない、中学校・高校の先生方にも活用してもらいたいですね。ご自身の英語力アップのトレーニングにももちろん役立ちますが、授業でどういうoutputの練習を生徒にさせるかを考えるための、アイデア本としても役に立つのではないか、と思っています。また大学の英語の授業も現在、複数の技能を組み合わせたものが主流ですから、大学生の皆さんにもお勧めできます。
Q: 具体的にはどんな英語が掲載されているのでしょうか?
永井:特に中上級者であれば、学習のためだけに英語をインプットするのはもったいないと思います。この「4-in-ONE」シリーズには、知的好奇心を刺激する英語素材を硬軟とりまぜ、たっぷり掲載しています。がん生存率の上昇に関するニュース、オンラインの銀行口座の開設の説明、会社の給湯室でのおしゃべりや夫婦げんか、アメリカ名作文学や自己啓発エッセイの抜粋など。ご自分が興味のあるトピックが必ず見つかり、飽きずに学習が続けられて無理なく力がつきます。英語は毎日、少しずつでかまわないので、継続することが大切。そのためには、聞きたい、読みたいと思える素材を選ぶこともポイントでしょう。
英文は、ポートランド(オレゴン州)とロンドンの二人のライターに作成を依頼(写真は発注の依頼書)。メールのやり取りのたび、現地のコロナ状況の情報交換も。
特にこのコロナ禍、みなさんが興味を持ちそうな新薬の開発や高齢者介護施設への訪問について、また昨今話題の働き方改革、LGBTに関するリポートなども掲載しました。書籍は長く売り続けるものなので、今、流行りの話題だけ取り上げると、そのうち古びて見えてしまう、という難点もあります。そのトピックが、今後も長く社会的に注目されそうかどうかを見極めることも教材編集者には求められます。
また、4技能のお話ばかりしてきましたが、英語習得のベースになる単語、フレーズも学べますし、構文や文法についても、豊富な解説がついています。すべての素材に音声もついていますので、ぜひフル活用して、英語の体幹を鍛えていただきたいと思います。
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