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草の根から世界へ。「コミュニティ大会」への支援に特化したeスポーツプラットフォーム誕生の背景とは

著者: ログリー株式会社

みなさんこんにちは、ログリー株式会社の藤澤と申します。



ログリーには2015年に入社し、広告事業部門の責任者をしていました。昨年、会社全体として新規事業の立ち上げやM&Aに力を入れるタイミングで、新設された事業開発部門に異動、現在は社長直下でeスポーツ領域の事業責任者をしています。


「新規事業は発起人の熱量が重要である」ということで、私もゲームに魂を捧げるため、趣味の一つである音楽活動をやめて、自宅の防音室をゲーム部屋に改装しました。最近ではまったく適正がないことは理解しつつも、ストリーマーの悩みや気持ちを理解するため、齢32にしてYouTuberデビューもしてみました。


ゲーム遍歴としては、約20年前の小学6年生のころ、リリース直後のラグナロクオンラインで「ネット上の友達とリアルタイムでゲームができること」に衝撃を受け、以来クランを作ったり、コミュニティ専用のサイトや掲示板を作ったりする裏方にハマっていました。今はなきサドンアタックでFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)にはまってからは、CoDシリーズや最近だとApexをプレイすることが多いです。


ゲーマーな自分自身が、プレイヤー、クランマスター、コミュニティ運営の裏方、大会参加者、ときにはクライアントに提案するセールスマンなど、様々な角度からゲームの世界に関わる中で見えてきた課題を解決するべく、eスポーツプラットフォーム「Adictor」が誕生しました。本記事では、Adictorの誕生背景からeスポーツ市場の課題と解決方法、今後の展望までたっぷりとお話してまいります。

Adictorとは


「Adictor」は、プロeスポーツ選手を目指すゲーマーと、eスポーツを応援したい気持ちを持つ個人や企業のスポンサーを結びつけることをコンセプトとする、 日本初の全大会賞金付き eスポーツ大会プラットフォームです。日本初のネイティブ広告プラットフォーム「LOGLY lift」を提供するログリー株式会社より、2020年12月にリリースいたしました。


多くの課題を抱えている「コミュニティ大会」 への支援を通して、eスポーツ市場の拡大と新たなヒーローの創出を目指しています。



Adictor最大の特徴として、すべての大会に賞金を提供するほか、参加者の募集からトーナメントの自動生成機能、大会終了後にログを残さないチャット機能など、大会運営をワンストップで支援する機能を搭載。豊富なエンジニアリソースを生かし、毎月さまざまな新機能を実装しています。

リリースから約半年で大会へのエントリー人数は25,000人、大会開催数は1,200回を突破し、右肩上がりの成長を続けています。

eスポーツのマネタイズ手段


2020年国内のeスポーツ市場規模は66.8億円、2024年には180億円超に拡大すると予測(*1)されています。


*1 KADOKAWA Game Linkage調べ


最近では成長意欲の高いアマチュア層へのコーチング・マッチングや、ライブ配信の実況解説者・アナウンサー専門のプロダクション事業、プロチーム向けのアナリティクスツールなどさまざまなサービスが出てきているものの、現状そのほとんどがスポンサー費用によって成り立っています。


スポンサー手法としては、プロチーム・個人への投資、施設への出展、大会・イベント協賛と大きく分けて3つあります。

スポンサー手法

【チーム・選手】

スポンサー契約を結び、チームの運営資金や所属選手への給与などに投資する。Webサイト、ヘッダー、ユニフォームへの広告掲載、選手のプロモーションツイートが主。大型大会で活躍した場合メディア露出が期待できる。


【施設】

会場、付帯施設、ブース出展など、オフラインが主流。費用はさまざまだが、中規模大会へのブース出展であれば数十万円程度から参入可能で、eスポーツへの環境投資であり撤退も比較的容易。


【大会・放送】

各地で開催されているeスポーツ大会の開催資金や、出場者への賞金などを投資する。企業がeスポーツに参入する手段として、もっともポピュラーな手段。



Adictorが事業の中心としているのは「大会」なのですが、こちらも大きく分類すると公式大会、公認大会、コミュニティ大会の3つに分けられます。


大会の種類

【公式大会】

デベロッパー/パブリッシャーが主体として開催するもの。


【公認大会】

デベロッパー/パブリッシャーの許諾を受けて、第三者が主体として開催するもの。イベントとして複数の版元のタイトルを取り扱うこともある。


【コミュニティ大会】

個人が有志で開催するもの。基本的に非営利で会計は独立している。



スポンサー費用の大半は公式大会と公認大会として流通しており、コミュニティ大会は「ユーザーが有志で開催するもの」という性質上、マネタイズが難しいとされております。


「草野球」をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。草野球で入場料を取ったり、スポンサーを付けることは難しそうですよね。

ただ、それが「日本全国で行われている草野球の試合すべての会場にポスターを貼ることができる」、「500万人の草野球選手のユニフォームすべてにロゴを掲載できる」であればどうでしょうか。


例えば、blogというメディアがあります。ひとつひとつは個人が運営する数百〜数千のトラフィックですが、集合体となることで大きな広告効果を生み出します。

同様にひとつひとつは規模が小さなコミュニティの大会でも、それらを束ねることで広告として価値を生み出せるのではないかと考えました。


当社の主力事業である「ネイティブ広告プラットフォーム」という事業を推進してきた中で、インターネットやテクノロジーを駆使することにより、個々のものを集合体に変換すること、そしてその集合体に価値が生まれることは十分に理解しており、今はまだ前例がありませんが、今後eスポーツスポンサードプランのひとつのスタンダードになることを確信しています。余談ではありますが、当社の昔のビジョン「集まれば新しい価値が生まれる」にも通ずる部分があります。


コミュニティ大会は毎日あらゆるオンライン上でたくさん開催されているのですが、それぞれは連携しておらず、ツールやレギュレーションもバラバラです。紙のトーナメント、エクセルの集計、Twitterのリプライ上でエントリー管理、集客方法や告知ページに至るまで、まだテンプレートが定まっていません。逆にいえば未整備の原石ということです。


非常に困難ではありますが、この分野の支援をすることは大きなチャレンジであり、ポテンシャルも大きいと見込んで、2020年3月、コミュニティ大会に特化したサービスにすることを決めました。

eスポーツ市場における課題


大きな転機となったeスポーツ元年と呼ばれる2018年以降、テレビ局やブランド企業の各種表明、コロナ禍によるゲームプレイ時間の増加など、順風満帆に思えるeスポーツですが、その内実さらにスケールするためには課題も多くあります。


メディアでも話題に上がりやすい、法整備関連の問題や、世界と日本国内の人気タイトルの偏りなどの構造的な課題以外で、私自身がもっとも大きいと感じていることは、


①スポンサーを集められる大会・企画は一握りである

②eスポーツで稼げている個人・法人は一握りである


という事実です。

YouTubeで10万人規模の同時視聴者数を集める大型大会や、100万人の登録者を誇るYouTuberの裏側で、その100倍以上の収益化できない大会と実況解説者の卵たちが、静かに姿を消しているのです。


このマネタイズのカバレッジ不足と配分の偏りこそが、場所と人、両者に共通する根本的な課題だと思っています。メディアとしても、興行としても、eスポーツは根本的に自転車操業であり、エコシステムが築けていないということです。


eスポーツに限らずイベント事業全般の伝統的な課題でもありますが、歴史が浅く先の法整備絡みもあって、ことさら歪な二極化をしているという見立てです。


「コミュニティ大会」とは


さらにその最たるものが「コミュニティ大会」です。


これは私個人の考えですが、大きなムーブメントの原動力となるのはコミュニティの熱量です。地下アイドルの始祖であるAKB48にしても、フリースタイルラップの先駆けである渋谷サイファーにしても、圧倒的な「草の根の熱量」が、エンタメとしての地位を押し上げ、テレビのコンテンツとなり大衆にその魅力が届いたということだと思っています。


有志が集まって、夜な夜な開催される(なぜか26時開始の大会とかも結構多いです)コミュニティ大会ですが、かつてはそのほとんどが身内で盛り上がるもので、ゲームセンターの一角を借りて、ある種秘密裏に行われていました。現在はYouTubeやMirrativを通して多くの大会が配信されるようになったことで、eスポーツタイトルの盛り上がりのバロメーター、Esports Tier List(ライブ配信の視聴時間合計)としても機能しています。


私自身は、DCG(デジタルカードゲーム)やFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)のコミュニティに身を置き、プライベートでスクリム(練習試合)やコミュニティ大会に参加していました。一番のめり込んでいた時期でいえば、会食中に事情を説明したうえで団体戦に参加していたり、休日は子供の寝かしつけをしながら布団の中から大会に参加したこともあります。その節は大変申し訳ありませんでした。


・・・話がずれてしまいましたが、そうした参加者側の立場で感じていたことをひとことで言うと「大会主催者がとにかく不遇」ということに尽きます。

大会主催者の不遇な事情


大会主催者は下準備やルール整備に時間をかけ、告知画像を作り、人を集めて、当日も長い時間を拘束されながら、トーナメントの進行やポイントの集計、配信者との連携などたくさんの「やるべきこと」と向き合っています。


最近では、コミュニティ大会へ理解を示してくださるIPホルダーも増えてきていますが、原則として利益追求の禁止が掲げられていたり、その支援は十分ではありません。

金銭的な報酬が得られるわけでもなく、むしろ手弁当で賞品を準備することも多い彼らのモチベーションは、注目されたい的な承認欲求はゼロではないにしろ「自分が大好きなタイトルのコミュニティが盛り上がること」の一心で支えられています。


しかし実態としては、主催者への感謝の言葉よりも、むしろルールの不備やドタキャンの責任を追求されることも多く、ジャッジが不公平だと糾弾され炎上するケースも悲しいことに存在しています。

学業や仕事に追われるうちにいずれモチベーションの火は消え、趣味としてゲームを楽しむ、そんな日常に帰っていくことは仕方のないことでしょう。


このように、コミュニティ大会の主催者が受ける強烈な向かい風は、どんな便利なツールがあったとしてもそれだけでは解決できません。


最近では、一部の大型コミュニティ大会では一般社団法人として独立し、大会主催以外の方法(運営ノウハウの提供やコンサルティングなど)で得た収益を大会主催に充てているケースもありますが、一般の主催者にとってはハードルが高いと考えられます。


ちなみに、海外では日本と比べ物にならないほどコミュニティ大会が多く存在していますが、多くの場合$5ほどのエントリー費用を徴収するマネタイズモデルとなっています。このモデルを横展しようにも、日本国内においてはエントリー費用をプールして賞金へ回すことは刑法(賭博罪)に当たるのではないかと解釈されており、既存の枠組みでは実施が難しいと考えられています。

Adictorを通じて支援したいこと


諸々の課題を分解していくうちに至ったアプローチが、「優勝者への賞金」を負担しつつ、「主催者に大会運営報酬を渡す」という解決策です。当社は広告を主たる事業として行う会社なので、将来的にスポンサーを獲得する部分を代行することも考えながら、「日本初、全大会賞金付きeスポーツプラットフォーム」としてWebサービス化しました。


IPホルダーにとってはコミュニティが盛り上がり、広告主は低コストで投資できる選択肢と面が増えます。主催者のモチベーションが上がることで、参加者も大会のバラエティやクオリティが上がって嬉しいはずです。

さらに結果として「ガチ勢」が増え、日本の選手層を厚くし、世界へ羽ばたくチームが出て盛り上がっていく、そんなことを切に願っております。


※個人的な野望としては、もう一歩手前に現実的且つ壮大なものがあるのですが、ここでは言えないのでご興味をお持ちいただけたら個別で回答いたします(内緒です)。


また実際に、Adictorで開催された大会で活躍した当時無名の選手がプロチームからスカウトされるという発展もありました。


当時、比較的無名だった「ガチ勢」が、Adictor主催の大会で入賞し、プロeスポーツチームに加入した際の実際のツイート


今後、プロeスポーツチームとの連携面もシステム提供できればと思っています。

eスポーツ業界初のビジネスモデル


私もいち企業人なので、売上や利益を生み出さず、参加者への賞金と主催者への報酬を負担し続けると、いずれはサービス終了してしまいます。嬉しい悲鳴ではあるのですが、Adictorのグロース状況は期初計画の5倍程度で推移しており、Webサービスとして一定のパワーを備えてきたことから、スポンサー向けメニューの展開をはじめました。


一言でいうと、「10万円から始められる、業界最安のeスポーツスポンサードメニュー」です。



既存のイベントスポンサードとの比較


コミュニティのeスポーツ大会をアドネットワーク化する、業界で類を見ない新たな取り組みです。


広告会社に所属していながら若干気まずいのですが、eスポーツオーディエンスの大半がZ世代かつ「広告嫌い」であるということは既に自明であり、この点を非常に考慮しております。


アイデアベースではさまざまな広告商品を考えているものの、Webサービスである以上「広告効果」を生み出せなくては価値がないので、ご興味のある広告主の方がいらっしゃいましたらぜひディスカッションさせていただければ幸いです。


当社のアセットとして、ログ分析・自然言語処理・機械学習などがあるので、まだあまり可視化できていない「熱量」を新たな指標としてレポートできないものか、などとあれこれ考えています。


エンジニアもスポンサー向け機能の開発にスタンバっていますので、難題問題、何なりとお申し付けください。



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ログリー株式会社

eスポーツ事業責任者 兼 Adictorプロデューサー

藤澤 裕人





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