利益ゼロどころか赤字でもチーム支援事業を進めるベンチャー企業「グリーンカード」が成長し続ける理由~3~
(代表取締役社長 羽生)
【第2話あらすじ】
welq問題を乗り切った株式会社グリーンカードは、アマチュアサッカー業界最大級のサイトに成長する。ルーキーリーグの配信も始まり、順風満帆な2020年のスタートは、新型コロナウイルスに阻まれる。そのとき羽生の心によぎった原風景は。
新型コロナウイルスの流行を受けて緊急事態宣言が決まったとき、羽生は一つの決断をくだした。
「これでは日本のアマチュアスポーツがダメになる。今、守らなければいけないものは指導者の『熱』だ!」
「どうやって食いつなげばいいのか」
羽生のところにはときどき電話による相談が舞い込んできていた。アマチュアサッカーチームの窮状について。運営の苦労話。
それを聞く羽生の頭の中には、あのときの風景があった。
子どもたちがまだ小さかったときに見たスポーツチームの姿。月謝だけでやっていけなくて、ほかで仕事をしながら、手当のつく残業を断ってグラウンドで子どもたちの指導にいそしむコーチたちの姿。
どうしてこうなってるんだ。
なぜ、指導者は指導だけをしていられないんだ。
なんで誰かが身を削らないとスポーツが成り立たないんだ。
そんなおかしいことがあるか。
アマチュアスポーツチームの仕組みを変えなければいけない。
「薄給で当たり前」「好きなことをしているから給料は二の次」という指導者の意識と、「月謝をもらってるんだから運営できて当然」という世の中の意識を変えなければならない。
チームにスポンサーをつけよう。
強いチームにしかスポンサーがつかないなんておかしい話だ。
地域に支えてもらえるスポーツチームがたくさんあったらすてきじゃないか。
そうして立ち上げたのが「グリーンカードサポーター」という、チーム支援のためのポータルサイトである。
「こんなときにチームから金が取れるか!」
そこには羽生のもうひとつの決断があった。
ホームページの運営には人件費や運営費がかかる。
それを採算度外視し、「9月末まで手数料は取らない」と明言した。
相次いだのは、疑いの声だった。
「9月を過ぎたら膨大な手数料を取られるんだろう」
「手数料無料って怪しい。何を考えてるんだ?」
「心配なので契約書を発行してほしい」
自社メディアからの広告収入は激減している。収入元がないことに加えて、この時期の採算度外視は、感謝の声よりも戸惑いや疑惑の声の方が多かった。
「今チームからお金を取ってる場合じゃないんだ!このままいくと、コロナが終息した後に見渡してみたら、地元スポーツチームの8割がなくなってましたなんてことがほんとに起こる。
そんなことになっていいのか。今僕たちがやらなかったら誰がやるんだ。アマチュアサッカーのために僕たちが始めたこの事業が、今手を差し伸べなくていつやるんだ!
今の金額の多寡を見るな。必要なことに必要な経費をかけろ。そこをケチって今こんなときにスピードを抑える方が罪なんだよ!」
社内を叱咤して準備を進めつつ、羽生は金策に走った。資本対策もした。社員もフルスロットルでそれに答えた。「グリーンカードサポーター」のオープンは緊急事態宣言発令6日後の4月14日だった。
現在、グリーンカードサポーターに「支援を募集/スポンサーを募集」したいという希望を持って登録しているチーム数は124※。希望する指導者にはLINEグループを作って情報共有をし、毎週木曜日には質疑応答会をオンラインで開催している。支援してくれる人も増え、現在支援金額は1,991,000円※にのぼっている。(※いずれも6月8日現在)
更に社員を増やして対応に当たらせるため、6月にはクラウドファンディングを立ち上げた。用途は社内の経費とチームへの支援だ。続々と支援者は集まっている。
(【コロナウイルスに負けない】スポーツチームの存続危機を救おう)
ベンチャーの役割は「わくわく」にある
(羽生とチーム支援事業部の甲斐田(画面左)と川原(画面右))
実は株式会社グリーンカードは、ここ5年間で一度も黒字を出したことがない。にもかかわらず、手を差し伸べてくれる投資家は後を絶たない。羽生の過去の教訓から、借金もしない。
「いや、守りに入った瞬間お金はつかなくなると思うんですよ。僕たちはベンチャー企業。ベンチャー企業は将来に対するわくわく感がないといけない。
確かにコロナは大変です。でも、僕が見ているのは今じゃない。僕の使命は、根本的に指導者や企業の意識を変えていき、本当の意味でスポーツを通して豊かな社会にすることだ。
もっともっと影響力を持ったとき、必ずすべてのマーケットを僕は塗り替えられる。
そのとき今サポートしてくれている投資家の方々に恩返しをしていくことができると信じている。」
ルーキーリーグも最初は無報酬から始めた。
世の中に最初に価値を問うとき、報酬なんか関係ない。
6年前に糸島で釣りをしていた男は、今アマチュアスポーツの世界を変えようとしている。
「確かに羽生は…当時は週に3日出社していたら多いかな、というくらいの出社頻度でしたね。社長ってそういうものなんだな、という感じで気にもしてなかったですが(笑)」(梅野)
緊急事態宣言は解除された。
だが、本当のスポーツチーム受難の始まりはここからだと羽生は読んでいる。
「月謝で運営していたチームが活動停止を余儀なくされ、無収入の中で固定費だけを払い続けた。その余波はこの後必ず来る。新入生を入れなければいけない時期だったのに、始動もできなかったチームも多い。
僕には、チームにとって役立つことを本当に作っているという自信がある。濃いものを作りたい。濃いものを作っていけば、そこから広げることができるんだ。」
2020年度、株式会社グリーンカードは、福岡県U-18の県リーグの運営をサポートする。無観客試合をどうしても保護者に見せたい、という思いから無観客試合もAIカメラでLIVE配信する準備がある。
先週末にあたる6月13日、14日には佐賀県のインハイ代替大会である「SAGA 2020 SSP杯 サッカー競技」で計21試合のLIVE配信を実施した。続いて徳島、富山、沖縄大会での配信も決定している。
「糸島で、まだ4人くらいでやっていたころ、みんなで夢みたいなことを語り合ってた時代があるんです。会社をもっと大きくして、だれでも知っているサイトにして、ほんとの意味でチームのためになる会社になるといいねって。
今、本当にそれに近づいていけている感覚があります」(梅野)
5月下旬、出先から帰ってきた羽生を梅野が手招きした。
覗き込んだ画面には、社員とライターがたくさんいた。
「ハッピーバースデートゥユー、
ハッピーバースデートゥユー、
ハッピーバースデー、ディア、ヒロキ~!♪」
5月24日に50歳を迎える羽生のサプライズハッピーバースデーだった。
シャイな羽生は照れ笑いしながらそそくさと画面の向こうに消えていったが、「代表、おめでとう!」の声は長く続いた。
自分のふんどしで相撲を取る。オリジナルのサービスで、オリジナルの組織でやっていく。そう決心してから11年が経っていた。
株式会社グリーンカードはこれからも挑戦し続ける。
(完)
【コロナウイルスに負けない】スポーツチームの存続危機を救おう
執筆者:水下真紀(株式会社グリーンカード統括編集長)
利益ゼロどころか赤字でもチーム支援事業を進めるベンチャー企業「グリーンカード」が成長し続ける理由~1~
利益ゼロどころか赤字でもチーム支援事業を進めるベンチャー企業「グリーンカード」が成長し続ける理由~2~
会社概要
会社名 : 株式会社グリーンカード
オフィス : 〒810-0001 福岡市中央区天神2-11-1 福岡PARCO新館5階
代表者 : 羽生博樹
設立 : 2015年1月
URL:https://www.green-card.co.jp/
事業内容
・メディア運営
・チーム・スクール・大会HP制作、運営
・運営・集客コンサルティング
・クラウドファンディング型チーム支援サイト運営
・ECサイト運営
・イベント企画・運営
・ライブ配信サービス
主な運営サイト
・月間170万人が訪問 - 「ジュニアサッカーNEWS」
https://www.juniorsoccer-news.com/
・地域密着サッカーポータル - 「全国少年サッカー応援団」
・チーム専用HP制作サイト - 「グリーンカードWEB」
・スポーツキュレーションメディア - 「グリーンカードニュース」
・アマチュアスポーツ動画配信サイト - 「グリーンカードLIVE」
・チーム専用ECサイト - 「グリーンカードSHOP」
https://gc-ec.net/ (2020/7 OPEN予定)
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