「マイクロLED市場・技術トレンド」、執筆エピソード
2020年7月30日にサイエンス&テクノロジー社から弊社が執筆した「マイクロLED市場・技術トレンド」が発行されます。今回は執筆の経緯についてお話したいと思います。マイクロLEDディスプレイはソニー社のCLEDISが元祖と言われています。その後、Apple社がマイクロLEDディスプレイ開発のためにLuxVue社を買収していますが、いまだに同社はマイクロLED製品の投入をしておらず、この技術を量産化することの難しさを物語っていると言えます。
マイクロLEDは次世代ディスプレイ技術として期待を集めている一方で、AR・VRデバイス等、新しいユーザー体験を提供するキーテクノロジーとしても注目されています。Google社、Facebook社、IKEA社等が投資ないしは事業参画しているのは承知の通りです。私はかつて海外調査会社の調査レポートの代理販売などを通じて、マイクロLED分野の情報収集ならびに、アナリストや日本・台湾の技術者と情報交換を行ってきた過去があります。特に日本の技術者の方々からはマイクロLEDのマーケット展望や企業・技術動向に関する質問を多く頂き、この分野への関心の高さを感じたとともに、果たしてこの技術に賭けてもいいのかという迷いも同時に感じとったことを強く覚えています。
一方でどうしてもこのエマージングテクノロジーを市場に送り出したいという開発者の熱い思いにも遭遇することがあり、私自身もその思いに大きく影響を受けました。こうした開発者の方々の共通した思いは「過去の成功体験に甘んずるな」という反骨精神だと私は理解しました。この会社のミッションである「人々が働き、生活するためのフェアな場所を作る」は、持続可能な社会の形成に貢献するためにあるとともに、絶えず私たちはアップデートし、より良くなっていかなければならないという思いに突き動かされています。
書籍「マイクロLED市場・技術トレンド」では2019年12月に南京で行われた国際会議のレビューも含まれています。実は私はこの会議には健康上の理由で療養するために南京に訪れた折に参加しています。当時の私は会社員で市場調査レポートのマーケティングの傍ら、講演業務も数多くこなしていました。講演のテーマも広範囲にわたり、マイクロLEDがメインではありましたが、その他にも自動運転、マイクロバイオーム、再生医療、リチウムイオン電池、電気自動車、ヒューマンセントリックライティング、止血剤、タルクと自分でもわけがわからなくなるぐらい、なんでもやっていました。そして講演の資料作成も、もはや日常業務の範疇を超えていたのでプライベートの時間を犠牲にして取り組んでいました。
南京に訪れた際、まだ私は起業することを決意しておりませんでした。明孝陵を散策しながら、私は途方に暮れていました。療養どころか、労働から離れていることで焦燥感を感じていました。いったい何をしに南京まできたのかと。
かかるようなモチベーションで私はマイクロLEDの国際会議に参加していました。会議では中国、台湾プレイヤーを中心にマイクロLEDに関する活発な議論が行われ、大会報告では実に20名の発表者による講演が各20分というサイクルでテンポよく行われました。内容もマストランスファーの話はもちろんのこと、プロセス改善やパフォーマンス向上、ドライバーIC、マスインスペクション、マスリペアーの話も目立ち、現実の「工業製品」を前提とした議論が目立ち、パネルメーカーからもマイクロLEDないしはミニLEDをしっかりと自らの戦略に取り入れた発表がなされました。日本ではマイクロLEDの取り組みは幾分、消極的な感じがしますが、少なくともこの会議では確実に来る将来としてマイクロLEDをフォーカスしていると感じました。そして現実にマイクロLEDを取り巻く環境は随時アップデートされています。
書籍「マイクロLED市場・技術トレンド」はどうしてもこのエマージングテクノロジーを市場に送り出したいという開発者の熱い思いに影響を受け、執筆しています。技術動向については、各社の開発内容の概要をまとめています。数年前と比較すると着実に技術が進展しており、近い将来のより多くの製品化が現実的な予想として期待されると考えます。またこの本は技術動向だけでなく、マイクロLEDをマーケティングするには何が必要かについても述べています。筆者は経営学修士も取得しており、なぜ複数あるディスプレイ技術の中でマイクロLEDでなければならないかについて総合的な分析も加えました。「マイクロLEDなんか来るわけがない」、マイクロLEDトレンドの初期ではそうした声も多く聞かれました。ただ偶然か必然か、デジタル化がさらに進んでいく私たちの社会とマイクロLEDは運命的な結びつきがあるのではないかと感じています。この書籍が読者企業の事業・技術開発のお役に立つことができれば、これ以上の幸せはないと考えています。
もし宜しければ弊社下記サイトもご覧下さい。
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沖為工作室合同会社
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沖本真也
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