感染症対策製品による社会課題の解決 ~「リケガード」の抗ウイルス・抗菌・防虫機能が社会に存在する様々な感染症のリスクを低減~
感染症に起因する社会不安が世界を席巻する状況下で、リケンテクノスが事業を通じて社会に貢献していくために大切なことは何か。抗ウイルス・抗菌製品である「リケガード」の開発・販売に携わった3人が一堂に会し、感染症対策製品を通じた社会課題解決への想いを語りました。
写真左から
顧問 大谷寛文
取締役常務執行役員 営業本部長 梶山学之
取締役執行役員 技術本部長 兼 研究開発センター長 杉野等
※文章中の「抗ウイルス」はすべてのウイルスを対象にしたものではありません。
ーー「リケガード」を開発が始まった時期とそのきっかけを教えてください。
杉野:「リケガード」の開発がスタートしたのは2015年だったと思います。もともとは長靴や手すりに抗菌機能を付加するためのコンパウンドタイプでした。
大谷:フィルムタイプの方は、2017年に、とあるスマートフォンメーカーからスマホの全面は抗菌であるべきという方針が伝えられまして、当社でも感染症対策製品の開発を行っていこうと決めました。
杉野:コンパウンドも同様ですね。まずメーカーのポリシーとして、手すりを抗ウイルス・抗菌にしたいので当社に開発してほしいという要望がありました。食堂などで使われる長靴についても抗菌のニーズが高く、開発当初は抗菌の方がメインで、抗ウイルスは、どちらかといえばおまけのようなものでした。
梶山:こうした社会の感染症予防意識が高まったことを受けて、「抗ウイルス」「抗菌」「防虫」の製品を開発しようという機運が社内で大きくなり、初めて「リケガード」の名を冠したコンパウンド製品を上市したのが2017年です。
大谷:フィルムは、2019年1月に基本開発品が完成し、9月にSIAA マークを取得、12月には、極めて透明度が高く、スマホやタブレット端末の表面に貼れる抗ウイルス加工の新製品も完成させました。
杉野:もちろんお客様からの要望だけではなく、社内的な動機もあります。2016年に策定した一つ前の3ヵ年中期経営計画から「すべての生活空間に快適さを提供するリーディングカンパニーを目指す」というスローガンを使い始めたのですが、インフェクションコントロール(感染予防)製品の開発は、この「すべての生活空間に快適さを提供する」を実現する取り組みの一環でもあるのです。抗ウイルス・抗菌に留まらず、消臭、アレルギーや電磁波対策など、「生活空間の快適さ」を追求した様々な研究開発が現在でも継続中です。
梶山:このスローガンがあったからこそ、開発部門だけでなく、製造や営業に至るまで、全社員の意識を同じ目的に集約できた気がしますね。
大谷:最近、「生活空間の快適さ」を実現するためには、特に「安全・安心」を重視しないといけないのではないかという思いが強くなっているのですが、どうですか?
杉野:その通りですね。研究開発センターでは、R&Dの方針として人に対していかに安全で優しくあるかということを常に意識しています。具体的には「美しく」「軽く」「安全に」の3つをキーワードに、様々なイノベーションにチャレンジしている状況です。「人に害を与えない」「社会のリスクを軽減する」という命題は、これからも研究開発の重要なテーマであり続けると思っています。
ーー「リケガード」の開発や上市に「新型コロナ」の影響はありましたか?
梶山:「リケガード」の開発と販売自体は、新型コロナが登場するだいぶ前からのことです。新型コロナ以後の大きな動きは、国際規格に基づく抗ウイルス・抗菌試験をクリアしSIAAマークを取得したフィルム製品の投入を加速させたことです。SIAA マーク取得の抗ウイルスフィルム製品は「リケガード」が世界初です。
大谷:抗ウイルスのSIAA マークを取得したのは2019年の9月でしたが、当時市場ニーズはほとんど感じられませんでした。年明け以降に新型コロナのニュースが増えましたが、その時点でもまだまだ日本では危機感がなく、誰もがこれほどの事態になると思っていなかった気がします。しかし今では、社会全体から抗ウイルス製品に熱い視線が送られていると感じています。
梶山:SIAAは、新型コロナへの有効性を保証するものではありませんが、世界中で感染症対策に困っている状況ですので、ウイルスに対する効果を認めたSIAA マークを取得した製品を早く出したいという想いは強かったですね。社会貢献としても大きな意義がありますので、あらゆる局面でスピードを上げました。
大谷:SIAAマーク取得の「リケガードフィルム」を本格的に販売開始できたのが、2020年2月に入ったころです。まずは、モバイルや窓ガラス向けで拡販を開始しました。そして、2020年3月下旬くらいから、フェイスシールドを付けた人を見かけるようになったのですが、アクリルなどは表面がツルツルしているのでウイルスが長時間活性状態を維持しやすく、何も対策をしなければ、むしろ感染源になってしまう可能性があると考え、両面に抗ウイルスコートを施した「リケガードフェイスシールド」をすぐに開発して販売を開始しました。これによって、即時に抗ウイルス効果を発揮しはじめ、接触感染の拡大を抑制できるので、タイムリーな上市だったのではないかと思います。
ーー抗菌、抗ウイルスの仕組みを教えてください。
大谷:抗菌や除菌で、ウイルスにも効果があると考えている人がまだまだ多くいますが、実は、菌とウイルスはまったく別物です。除菌でウイルスも死ぬと思っている人が多いのですが、ウイルスは細胞膜がないので生物ではなく「ウイルスを死滅させる」とは言えないのです。
梶山:抗ウイルスは「減らす」、「リケガード」に使用されている抗菌は「増殖を抑える」が正しいですね。
杉野:抗菌から説明しますと、特定の金属イオンは菌を攻撃する性質があり、その作用で死滅させます。ウイルスも作用としては同じです。金属イオンがウイルスを不活性化、つまり活動できなくさせます。ただし、この原理は科学的に証明されているものではありません。
大谷:技術的にはコンパウンドもフィルムも同じで、マイナスに帯電している菌やウイルスをプラス帯電の金属イオンで包み込んで死滅ないし不活性化させるという仕組みですね。
梶山:抗菌や抗ウイルスの原理には様々な説があって、専門家の間でも議論が続いているのですが、「減らす」「増殖を抑える」という効果は実証されています。
杉野: 実際、SIAAマークを取得する際も、ウイルスが100分の1以下になったデータを示さないと効果を認めてもらえません。「リケガード」は、ウイルスを1万分の1以下に減少させますので、余裕でSIAAの基準をクリアしています。
大谷:1万分の1というのは、ほぼ検出限界以下と同じ意味です。独自の測定法ではなく、国際基準に準じた試験方法を導入しています。
「リケガード」を貼ったドアノブ
ーー「リケガード」の開発にあたって、特に苦労したことは何でしょうか?
大谷:菌はミクロン、ウイルスはナノという極小の大きさであることですね。特にウイルスの減少は化学反応のような世界ですから、金属イオンがウイルスを攻撃している場面を写真や映像で見せることができません。
梶山:ウイルスは、目に見えない「プラーク」を形成し、その減り方を確認します。様々なウイルス種で試験を積み重ねてきました。
大谷:さらに難しいのは、もともとの商品機能や商品価値を落とさずに抗ウイルス・抗菌機能をプラスしなければならないことです。例えばスマホの保護フィルムであれば、タッチパネルの反応が悪くならない、指紋が付きにくい、擦っても傷がつかないなどが求められます。抗ウイルス機能を追加することで、本来の使い勝手を損ねないよう、配合技術・加工技術を駆使した対策をそれぞれの商品ごとに施さなければなりません。そもそも抗ウイルス・抗菌機能を追加しながら、フィルムとしての高い透明性を保つことは、非常に高い技術力が求められることなのです。
梶山:コンパウンドとフィルムでも使う場面やニーズが異なりますので、それぞれの事情に合わせていくのは、かなり大変でしたね。
杉野:例えばスーツケースの車輪にもコンパウンドの「リケガード」が使われているのですが、摩耗の多い車輪に抗ウイルス機能を付加するのは、フィルムとは異なる加工技術を必要とします。それぞれの商品価値に合わせた設計・生産技術を確立することはとても手間がかかります。
大谷:もう一つは、開発スピードです。例えば「リケガード」を使用したフェイスシールドは、テレビで見てから2 週間後には完成させました。一人でも多くの感染者を減らし、社会に貢献したいと強く思い、病院や介護の従事者など、困っている人を助けるためには、そのくらいのスピード感が重要だと考えたからです。
杉野:ウイルス関連のテストは時間がかかりますから、技術部門でも可能な限り早くデータを示すことができるよう頑張っているのですが……。
大谷: あと販売方法の多様化にも苦心しました。個人経営の歯科医の方が当社のホームページを見て「リケガード」製品についてお問い合わせをしてきたのですが、発売当初は3~4個という小ロットで販売できる体制が整っていませんでした。そこで、高透明タイプのフィルムについては、小口販売やネット通販ができるようにしましたが、その体制を構築するまでに予想以上の時間がかかってしまいました。
ーーこれからも3ヵ年中期経営計画に連動した価値創造を続けられると思いますが、今後
のビジョンを教えてください
杉野:私自身は、開発者として「諦めない」ことをモットーに歩んできました。開発の仕事は、1 年や2 年で花が開くことは稀で、様々な挑戦を積み重ねる必要がありますし、何度も壁にぶつかります。しかしそこで「やめた」と言ってしまったら、永遠に花が開くこ
とはありません。続けていればこそ、いつか必ず風が吹いて報われる。この信念をこれからも大切にして、新たな価値創造に挑んでいきたいと思っています。
梶山:私は営業本部長として、技術者の諦めない信念から生まれた新しい価値を、いかに社会へ、そして人々へ迅速にお届けするか、引き続きここに集中していきたいと思います。価値とは本当に多様で、何に最も価値があると感じるかは、人それぞれで異なります。リケンテクノスは樹脂を様々に加工して提供する樹脂メーカーですから、その使命を全うするために「すべての生活空間に快適さを提供する」というマインドを常に持ち、技術や製造とも協力して、絶え間のない価値提供を続けていきたいと思います。
大谷:さらに、その価値提供は「愛」を持って行うことが大切ですね。環境への配慮やSDGsの目標達成も同じですが、活動の基本に「愛」がないと、社会不安に乗じてひと儲けすることと区別がつかなくなります。人々のために貢献するという想いを持つことが必要で、今後はそうした「想いの共有」が重視される世界に移行していく気がします。社会に貢献する、人々を愛し守るという思いが先にあれば、後に利益という結果もついてくる、私自身はそう考えています。
「リケガード®」抗ウイルス・抗菌ソフトシート 3枚入り
リケンテクノスホームページ:https://www.rikentechnos.co.jp/
リケガード®特設ページ:https://www.rikentechnos.co.jp/product/guard/
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