「宇宙から降り注ぐデータでビジネスの課題を解決する」宇宙ビッグデータを提供するJAXA認定の宇宙ベンチャー天地人の強み
民間企業の有人宇宙飛行や、Amazonの本格参入などで年々注目度が増している宇宙産業。ニュースに取り上げられることも増えたので、ひと昔前よりグッと宇宙が身近に感じられるようになりました。
身近になったとはいっても、ご自身が携わるビジネスと宇宙を繋げようと思う方はまだまだ少ないかと思います。その架け橋になるのが「衛星データ」であり、JAXA認定の宇宙ベンチャー天地人です。
天地人はJAXA職員と農業IoT分野に知見のある開発者が2019年5月に設立した会社です。地球観測衛星のデータを活用した宇宙からの視点で、お客さまの課題に対して一緒に解決方法を探り、新たなソリューションの提案・開発や、独自開発の土地評価サービス「天地人コンパス」を使用してビジネスの目的に合わせた情報の提供を行なっています。
衛星データはどのようなデータなのか、そして衛星データがどうビジネスの課題を解決するのか。 天地人コンパスの開発に携わる吉田裕紀さんと宮崎真由美さんに話を伺いました。
衛星は地球のあらゆる場所の情報を取得できる
ーー 衛星データは、どのようなデータなのでしょうか。
吉田 :
衛星から取得できるデータというと、光学衛星画像が有名ですが、画像データ以外にもたくさんのデータが取得できます。例えば、降水量などの気象情報や、3Dマップに代表される地形情報、赤外線によって観測される地表面温度、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの濃度といったものまで分かるんです。それに、人工衛星は地球の周りをぐるぐる回っているので、地球のあらゆる場所の情報を取得できることも特徴です。
イメージとしては、宇宙からデータが地球に降ってきているような感じでしょうか。取得できるデータが膨大なことから「宇宙ビッグデータ」と呼ばれています。
宮崎:
衛星データはデータを組み合わせることで真価を発揮します。例えば、ある地域に生育する植物の種類や活性度がわかる図をつくれたり、ある地域の水の分布や透明度がわかる図をつくれたり。無限大といって良いほど様々な組み合わせが可能です。
ーー 宇宙ビッグデータは天地人以外にも複数社提供されていますが、天地人の強みはどのような点になりますか。
宮崎:
JAXA認定のスタートアップ企業ということもあり、JAXA職員が複数名在籍しています。衛星データに詳しいだけでなく、人工衛星そのものや宇宙開発に精通しているメンバーがいることで、それぞれのお客さまに合った情報を組み合わせ、提供できることが強みのひとつです。
また天地人には、元々不動産業界にいた人間や、建設コンサルタント業界にいた人間など多種多様な業界で働いていたメンバーがいます。どんな業界がどういったデータを必要としているかを分かっている人間と、それをどうやったら衛星から取得できるかを分かっている人間がいるので、そのかけ算が上手にできているのが天地人の強みではないかと思います。
吉田:
膨大な宇宙ビッグデータからお客さまにあった組み合わせを考えるのを例えるなら、お医者さんが患者さんそれぞれに合った処方箋を出す感じです。専門的な知識や経験がないと最適なものを提案できません。
ーー 衛星データの中でも天地人が得意としているデータと、そのデータを活用した事例を教えてください。
吉田:
天地人が得意としているのは、温度や降水量などの気象データです。
天地人自身が取り組んでいるものをご紹介すると、米卸で国内大手の神明さまと、農業ITベンチャーの笑農和さまと協業して 「宇宙ビッグデータ米」というお米の栽培をしています。
日本の農業は、生産者の高齢化や減少によって供給力が足りなくなることが課題となっています。日本人はお米が大好きですが、このままだと「米が足りなくなる」ということ。そこで、将来的な米の生産増につながるとして、宇宙の技術を活用した農業を確立するプロジェクトを3社で立ち上げました。
お客さまが持っているデータも重ね合わせて使える「天地人コンパス」
ーー 土地評価サービス「天地人コンパス」について教えてください。
吉田:
天地人コンパスは、ビジネスにおいて最適な土地を宇宙から見つけることができるサービスです。宇宙ビッグデータの情報を見られるだけでなく、お客さまが元々お持ちのデータ、例えば地上観測データや、統計情報などと、宇宙ビッグデータを重ね合わせて見ることもできます。
ーー お客さまが持っているデータも重ね合わせられるのですね。
宮崎:
そうですね。一般的に使われているオンラインMAPには、地図の上に道路情報やお店の情報、お気に入りの場所など色々な情報が表示されています。あれは、地図のデータの上に、お店のデータなどが重なっているんです。
天地人コンパスでも同じように様々なデータを重ねることができます。
ーー 天地人コンパスを活用した事例で宇宙ならではの視点のものなどはありますか。
吉田:
キャンプ場の企画開発運営のRecampさまと、「キャンプ場候補地を宇宙から衛星で探すプロジェクト」を行なっています。キャンプ場の候補地を探すのって大変で、時間のかかる作業なんです。
まずはキャンプ場として利用できる可能性がある未活用地をオンラインマップを活用して探します。候補地が見つかっても、地面の特性などは分からないので、何度も現地に行って環境を把握しないといけないそうです。夏と冬で環境も大きく変わりますしね。
でも、天地人コンパスを活用して宇宙から衛星でキャンプ場候補地を探せば、広域の自然環境を把握できますし、ピンポイントの気象データも参考にできるため、リサーチの精度もあがります。
例えば、「8月の温度が30度以下で、春先の降水量が100mm~150mm」といった特定条件で土地を検索できますし、「特定地域の地表面温度と気温推移のデータ」「特定の季節、特定の時間の地表面温度を計測したビジュアル データ」といったようなデータも取得できます。
天地人コンパスでキャンプ場候補地を探すのは、現地に何度も行かなくても良くなりますし、宇宙ならではの視点だと思います。
お客さまごとにカスタマイズ可能な「天地人コンパスAPI」で課題解決
ーー 2021年5月から提供を開始した「天地人コンパスAPI」について教えてください。
吉田:
天地人コンパスAPIは、天地人が使っている土地評価サービス「天地人コンパス」に蓄積された膨大な量のデータを解析・分析した情報に、APIからアクセスできるサービスです。
すでにサービスやアプリといった自社システムをお持ちの場合は、そのシステムに天地人コンパスAPIから得たデータを連携させることもできます。
例えば、施設園芸業界の先駆的な総合メーカー誠和さまが提供する、暖房設定、昼平均CO2濃度、栽植密度、日射量でトマトの収量を予測するサービス「プロフィットナビ デモ版」の場合。
これまで日射量は全国47か所の気象台の「地域日射量」を使用していましたが、天地人コンパスAPIの日射量データをご利用いただくことで、郵便番号での地点指定が可能になり、収量予測できる地点が全国12万地点へ拡大するなど精度の高い情報を提供しています。誠和さまにも大変満足いただきました。
宮崎:
農業の話でいうと、気象情報と土壌データなどを組み合わせれば、その土地で本来育てるのに適した作物を見つけたり、作物の育て方を見直したり、病虫害などのリスクを見つけたりといったことも可能です。
ーー 自社システムに組み込むのは簡単にできるのでしょうか。
吉田:
導入しやすいようにWEB API化して提供しているので、難しくはないと思います。誠和さまのケースでいうと、誠和さまの地上センサーと衛星データを照らし合わせて、誠和さま用にカスタマイズして提供しました。
誠和さまのように、お客さまごとにデータをカスタマイズすることもできるので、「うちのシステムに組み込めるか」疑問だったり、迷っていたりする場合は相談してほしいですね。
宇宙ビッグデータの可能性を感じてみたい方はぜひ声をかけてほしい
ーー 農業以外の使い方ではどのような使い方が考えられますか。
吉田:
例えば、コンビニのような小売業の場合は、店舗付近の気象情報や温度変化を把握することで、「仕入れる商品を変える」といったこともできると思います。精度の高いデータを過去何年分にも渡って見られるので、「急激な温度変化のあとはこのジャンルの商品が売れやすい」といった過去との照らし合わせも可能です。
宮崎:
特定の地域で二酸化炭素がどのくらい排出されているかを可視化するといった使い方もできます。今の社会情勢では海外に行きにくいですが、衛星であれば地球の裏側の情報も精度高く見られます。ですので、海外の土地を探している方にも使っていただきたいですね。
ーー 宇宙ビッグデータは本当に色々な使い方ができるんですね。
吉田:
そうですね。だからこそ、漠然と「宇宙ビッグデータで何かやりたい」と思っている企業さんにも声をかけてもらいたいなと思います。実際に、「うちのシステムに天地人コンパスAPIを組み込んだらどんなデータを取れるようになりますか? どんな可能性が広がりますか?」といったお問い合わせもいただいています。
宮崎:
宇宙からの視点は皆さんが想像しにくい領域だからこそ、ビジネスの課題解決に新しい方法を提案できると思うので、気軽に声をかけていただけると嬉しいです。
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