ホテルニューオータニが『鬼滅の刃』の世界一色に。企業間共創で目指す次世代の価値創出
1964年の開業以降、社名同様「Always New」の精神で、次々と新たな戦略を打ち出し、体験価値の向上に努めている株式会社ニュー・オータニ。開業翌年に日本で初めて企画し、今やライフスタイルとして定着したホテルで年末年始を過ごす「お正月プラン」や、日焼けしないプールとして20年前から好評の「ナイトプール」は、その一例です。
そんなニュー・オータニがコロナ禍で本格的に始動させたのが、各社との共創による新たな体験価値の創出。老若男女から支持されるアニメ『鬼滅の刃』のコラボ宿泊プランを2022年1月から展開し、3月末までの宿泊期間を、5月ゴールデンウィーク明けまで延長することが決定しました。
パンデミックの規制による多大な影響があるなかで、「企業間共創」を軸とした新規事業創出を目指すニュー・オータニの狙い、『鬼滅の刃』とのスペシャルコラボの背景を執行役員マネージメントサービス部長の高山 剛和が語ります。
<話し手プロフィール>
髙山 剛和(たかやま よしかず)
株式会社ニュー・オータニ
執行役員 マネージメントサービス部長
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ホテルニューオータニ幕張 副総支配人、大阪 副総支配人・営業本部長を歴任し、現職。
需要が激減したホテルで「新たなエンタメ」を提供
当社では、放送から10周年を迎えたテレビアニメ『TIGER & BUNNY』や新海誠監督作品『言の葉の庭』など、アニメ作品やアパレルブランドなどとのコラボ宿泊プランを多数実施した実績があり、お客様に好評を得ていました。
その背景には、コロナ禍において新たな需要の創出が求められていた事実もあります。コロナ禍以前のホテルニューオータニは、全1479室のうち半分以上を外国人の利用が占めていました。ですが、インバウンド需要が高まっていた時期に新型コロナが流行、一気に外国人観光客が消失しました。従来の国内需要では半分しか埋まらないために、普段ホテルを利用しない方々に、この空間を使って新たなエンターテイメント、閉塞感を開放するような楽しみを提供したいと考えました。
ホスピタリティのプロとして、期待値を超えたい
2022年1月〜3月には、アニメ『鬼滅の刃』とのコラボレーションが決定。当ホテルとしては、期間限定の『鬼滅の刃ホテル』にしようという考えからでした。
あらゆる企画提案をした中から、部屋やフロアのデコレーション、レストランでのコラボメニュー提供、オリジナルグッズの3つを軸とすることに。
デコレーションは、フロア全体に『鬼滅の刃』のデコレーションを施し、藤の花があしらわれるなど、エレベーターホールに降り立った瞬間から作品の世界観にひたることができます。部屋はキャラクターごとにテーマを分けてデコレーション。キャラクターの等身大パネルやさまざまなシーンを回想する壁面装飾のほか、館内でのみ利用できるオリジナルのキャラクターボイスが聞けるコンテンツ、ホテルの制服を着用したufotable描き下ろしのキャラクターのアメニティも。より作品の世界観に没入できる体験を取りそろえています。
※エレベーターホール・廊下装飾は「ホテルニューオータニ(東京)」のみ
レストランは、「鬼の来ないレストラン」をテーマに店内を装飾。コラボメニューがふんだんに盛り込まれたビュッフェスタイルの食事を提供します。例えば、作品の中で煉獄が食べていた「牛鍋弁当」や「そば」をヒントにして、ホテルクオリティの新メニューを開発しました。また、世界チャンピオンの実績を持つ一流バーテンダーが、各キャラクターをイメージしたオリジナルノンアルコールカクテルを作ります。
人気スイーツショップ「パティスリーSATSUKI」でも、気合十分のスイーツを用意。各界から支持を得ているスーパーショートケーキなど、厳選素材を使用したスイーツ全9種に、ホテルスタッフの制服を着たのufotable描き下ろしのキャラクターがデザインされたプレートが飾られた特製スイーツBOXと、特製マカロンBOXの2種類を販売します。
オリジナルグッズは、ミニボトルやルームカードキー、プレミアムバスローブなど、ホテルならではの体験に沿った多彩な内容としました。自宅に持ち帰ることができるので、宿泊を終えたあとも、作品の世界観を楽しんでいただけます。
ホスピタリティのプロとして、細部まで徹底的にこだわりました。
アニメ『鬼滅の刃』コラボ宿泊プランは、東京・大阪・長岡・鳥取・博多の全国6都市のホテルニューオータニで提供しています。大都市まで足を運ばなくとも、自宅の近くでホテルステイを楽しめるよう配慮しました。現在までの反響は上々で、問い合わせも多く、期待値の高さを感じています。
コロナ禍のホテル経営には「可能性」しかない
ホテルニューオータニでは、「お客様が求める、その先にあるもの」を想像しながら、この2年間でさまざまなチャレンジを重ねてきました。
例えば、接触感染のリスクが指摘されていたビュッフェにおいては、「選ぶ楽しみが醍醐味であり、基本的なサービス設計を変えるべきではない」と結論づけ、安全に楽しんでいただけるよう設計を見直しました。30分ごとに30名ずつ入場するスタイルとし、密にならないよう配慮。また、接触感染を防ぐため1人1本のマイトングを提供しました。
2021年4月の緊急事態宣言期間には、1479室の客室全てをレストランの個室(プライベートダイニング)と位置付け、約300種類のドリンクと約120種類の食事メニューを楽しめる「スーパールームサービス」を展開。一流ソムリエやバーテンダーが部屋を訪れ、目の前でサービスする演出も好評で、非常に多くの方にお越しいただきました。
お得に長期滞在ができる1週間プラン、2日続けてナイトプールを楽しめる36時間プランなどの柔軟なプランも発売。今ではどこのホテルでも提供していますが、その先駆けが当社でした。その結果、長期滞在の利用者は激増していて、コロナ以前と比較して連泊の利用者が約5倍に。以前は都心のホテルは1泊利用者が大半でしたが、ホテルの宿泊価値が高まり、当社のスケールメリットを活かしやすくなっています。
常に新しい価値を創出することを意味する「Always New」という当社の方針は、コロナ禍以前から存在しており、この苦境においてもその姿勢は変わりません。2000年に社名から「ホテル」をなくしたのも、ホテル事業は当社の主たる事業ではあるが、それがすべてではないという思いから。実際、オフィスや商業店舗の不動産賃貸事業は約15%の売上を占めるほど成長しており、長期滞在専用の「新江戸レジデンス」やホーム・イン・ホテル「ホテルニューオータニ サービスアパートメント」も開業しました。
コロナ禍においては、需要が蒸発したり、あらゆる規制で厳しい経営環境に置かれたりする一方で、大いなる可能性も感じています。ここ数年はインバウンド需要の波もあり、追い風に乗ってきた感覚でしたが、今は「自立のとき」ではないかと。新しいバリューを創出する機会を得て、実際その取り組みのいくつかは確かな手応えを感じている。それを手がかりに、より一層お役に立っていけたらと。
企業間共創がブレークスルーに
そして、次のブレークスルーが、まさにアニメ『鬼滅の刃』とのコラボ宿泊プランのような他社との共創だと考えています。当社では、この事業を定番として発展させていきたい。今までは、レストランや部屋といった空間をそのまま提供していた感覚でしたが、今後は、どんな場所で、どんな時間を過ごすのかというライフスタイルを提案しようと。
これまでのようなアニメ、アパレルだけでなく、株式会社Luup様のようなスタートアップや食品メーカーなど、あらゆるジャンルの企業との共創が考えられます。当ホテルをプラットフォームにした新商品の開発もできるでしょう。いち早く消費者の反応を得ることができるので、そのフィードバックをもとにPDCAを回すことで、真に需要のある商品の開発につながると思います。
「食」のジャンルでは、すでに商品開発事業のサイクルが回り始めています。全国の特産物や隠れた名産を使った商品を提供することで、顧客の体験価値を高めることができれば、その食材の継続利用のみならず、生産地に赴いてもらうことにもつながります。当社が日本全国の観光地のゲートウェイになるようなイメージ。生産者を支援することで、地方創生の一助になれたらと考えています。
また、小規模のコミケ(コミックマーケット)を当ホテルで行うという企画も、以前からの構想のひとつ。コミケは世界中から観光客が訪れる一大イベントであり、宿泊施設やレストランの需要も高まる。それならば、あらゆるサービスが集結しているホテルは利便性に長けていますよね。
あらゆる共創事例を通じて、日本の消費者の鋭い感性と厳しい選択眼に鍛えられていった暁には、来たるべきインバウンドの回復期において、単なる宿泊先ではなく、日本が誇るアニメコンテンツが体験できるホテルとして、旅行の目的地に選んでいただけるのではないかと。常に新しい体験価値が生まれ続ける、国内外の観光のゲートウェイ。そんな将来像を思い描いています。
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