日本初!幼小中高一貫で国際バカロレア認定の裏側。いちばん新しい未来を創る教育者たちのストーリー。
学校法人星美学園 静岡サレジオ・幼稚園・小学校・中学校・高等学校
変化の激しい時代。そう言われて久しいですが、未だに変わることができない業界も多いのではないでしょうか。子どもたちの明るい未来を創るべき教育の現場も、その一つかもしれません。
このような中、文部科学省ではグローバル人材育成の観点から、令和3年12月31日現在、世界159以上の国と地域において活用されている国際バカロレア(IB)の普及・拡大を推進しています。
静岡市にある私立の一貫校である静岡サレジオは、この春、一条校として日本初の幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通しての国際バカロレア認定校となりました。このページでは、その経緯と狙いについて、本プロジェクトを主導した理事長・学園長の末吉弘治氏、PYP・MYP・DPのコーディネーターとして実務を担った原田卓氏、下村明宏氏、望月康宏氏の話を基にご紹介します。
*国際バカロレアについて詳しくは、(国際バカロレアとは-文部科学省IB教育推進コンソーシアムHP https://ibconsortium.mext.go.jp/about-ib/をご覧ください。
始まりは4・4・4制への移行
今から10年前の2012年、静岡サレジオは従来の小中高6・3・3制ではなく、独自の4・4・4制システムに移行している。小学1年から4年の「プライマリーステージ」では基礎基本の徹底、小学5年から中学2年の「ミドルステージ」で一人ひとりの学びの型を確立、中学3年から高校3年の「カレッジステージ」で学びの型に合ったコースを選択し目指す未来へ効率的に進むという仕組みだ。
思い切った改革の狙いを、理事長・学園長の末吉弘治氏は「心と体の成長に合わせた枠組みを設定することで、問題となっていた中1ギャップを解消することが最も大きな理由でした。また、小さな頃からつながった教育、学びを途切れさせない工夫でもあります」と教えてくれた。
しかし、すぐに上手くはいかなかったそうだ。「小学校と中学校と高校で、教員の考え方が違いますから、みんなで同じ方向に進むまでに試行錯誤が必要でした」。
学校法人星美学園 理事長・学園長 末吉弘治氏
国際バカロレアとの出会い
ミドルステージの教員である下村明宏氏も、全く新しい4・4・4制への取り組み方に試行錯誤を繰り返していた。その中で「国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)」に出会う。3歳から12歳を対象としたPYP (Primary Years Programme)、11歳から16歳を対象としたMYP (Middle Years Programme)、16歳から19歳を対象としたDP (Diploma Programme)から成るIBなら、静岡サレジオの4・4・4制にも取り入れられるし、新学習指導要領にも対応できると考えたという。
同じ頃、末吉氏もIBに注目し、下村氏とプライマリーステージ教員の原田卓氏にIBの導入に向けた調査を指示する。
末吉氏は、「課題を発見し、解決に導く方法を見つけて、表現する。大学進学がゴールではなく、生涯学び続けられる学び方を学ぶという意味で、IBは私たちの4・4・4制と見事に合致する。IBの導入により学習システムが更に明確になることで、一本筋が通り、学園が一つになることも期待しました」と当時を振り返る。
2016年、下村氏と原田氏がDPコーディネーターの資格を取得。2017年には、下村氏がMYPコーディネーター、原田氏がPYPコーディネーターの資格を取得した。同年、静岡サレジオ小学校がPYP候補校に、翌2018年には静岡サレジオ中学校がMYP候補校に認定され本格的にIB認定校への道を歩み始める。しかしここからが、本当の苦労の始まりだった。
想像を超える困難、そしてメリット
PYPコーディネーターの原田氏は「IBにチャレンジすることの期待と面白さ、そこを任せてもらえる喜びがありましたが、資料の読み込みや提出書類の作成などに想像以上の時間と労力が必要でした。教科横断型の学びは、授業の作り方もこれまでとは違うので、やってみて確かめてを繰り返しながらブラッシュアップをしていきました。やることが増えて大変でしたが、どう子どもたちを動機づけてあげるかを考えることが楽しくて、毎日ワクワクしています」と笑顔を見せた。
MYPコーディネーターの下村氏の言葉が熱を帯びる。「MYPと日本の学習指導要領とでは、どうしても合わない部分が出てきます。そこのすり合わせに苦労しました。年4回あった定期考査を2回に減らすなど、先生方にも戸惑いはあったと思います。しかし今では、世界基準の教育、概念理解につながる探究学習をしているのだと自負できるようになりました。また、IBの考え方は本校のキリスト教の教えと親和性が高く、思いもよらず人間教育の面でも役に立っています」。
コーディネーターを中心に、沢山の人たちの協力によって、先ず静岡サレジオ小学校が2020年2月に、PYP認定校として承認された。「認定に際しては、学校だけでなく、教師の熱意も審査されています。先生方の子ども達に対する愛情が、評価のカギだったと考えています」。そう語る原田氏の表情には自信があふれていた。
静岡サレジオ小学校プライマリーステージ PYPコーディネーター 原田卓氏
上向く生徒の目線、試される教師の力量
下の年代から環境を整えていく方針であったため、MYPから遅れること2年、2020年に高等学校がDP認定に向けて始動する。大役を任されたのは望月康宏氏。前年に赴任したばかりの英語教師で、様々な高校で国際交流を担当してきたベテランである。望月氏は2020年10月にDPコーディネーターの資格を取得、翌月静岡サレジオ高等学校がDP候補校に認定された。
「以前、オーストラリアのIB校で研修をしてから、教科横断的な学びには興味がありました。しかし、DPの認定がこれほど大変だとは思ってもみませんでしたね。膨大な資料と格闘しながら、各種研修会に参加し、必要な設備も整えなくてはいけない。とにかく忙しかった。体育祭の最中も、オンラインでシンガポールの担当者と面談していました(笑)。紆余曲折を経て、2022年1月、静岡サレジオ高等学校はDP認定校となりました」。
ユーモアを交えながら話していた望月氏の顔が引き締まる。「本当の苦労はここからだと思います。DPを導入することで、生徒たちの目線は確実に上がりました。学力面でも、人としてもたくましい子が育つはずです。本校に入学を考えている子ども達と話しても、これまでの偏差値で輪切りされた価値観にとらわれていない子が多い。新しい局面に入った気がします。広くて深い学び。その内容を生徒にどう伝えるか。私たち教師の力量が試されます」。
静岡サレジオ高校 カレッジステージ DPコーディネーター 望月康宏氏
幼小中高一貫のIB認定校、誕生
そして2022年4月、静岡サレジオ中学校がMYP認定校となり、幼小中高一貫のIB認定校が誕生した。MYPコーディネーターの下村氏は、「認定を受けたことはうれしいが、まだスタートラインに立ったばかり」と気を引き締めた。同時に「IBワールドスクールの一員となったことで、世界中の学校とのネットワークができる。他校の考え方や方法論を学んで、更に質の高い教育を静岡サレジオの子ども達に提供したい」と期待を込める。
理事長・学園長の末吉氏は、「海外の大学に行くとか、英語が得意になるとか、静岡サレジオのIB導入の出発点はそこではありません。一般的にIBは英語教育と思われがちですが、私の理解としては、IBは母語を含めた言語認知、言語教育です。先ずは母語での思考・判断・表現を徹底的に行う。そこに英語をかぶせることで、思考や表現の幅は飛躍的に広がります。そこに私たちの狙いがあるのです。
幼小中高一貫のIB認定校になったことで、独自の4・4・4制と合わせて、小さな頃から途切れずに質の高い教育を提供する仕組みがより強固になりました。大学の進学実績では、学びの成果が出始めていますが、卒業生たちが10年後20年後に社会で活躍するようになった時に、本当の成果が出ると思っています。私たちの取り組みが、日本の教育がより良く変わるきっかけになればと考えています」と、真剣な眼差しで話を締めくくった。
教育者の情熱がカタチとなった日本の一条校初の幼小中高一貫のIB認定校の誕生に、教育のいちばん新しい未来を見た気がした。
静岡サレジオ小・中学校ミドルステージ MYPコーディネーター 下村明宏氏
国際バカロレア認定特設サイト
https://donbosco.ssalesio.ac.jp/ib
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