ビッグデータで粉飾決算を検知したい。決算書の「異常値検知機能」開発の裏側をご紹介。
私たち一般社団法人CRD協会は中小企業金融の円滑化を目的とした非営利非公益の会員組織(168会員)であり国内最大規模の中小企業に関するデータベース機関です。
当協会には日本政策金融公庫等の政府系金融機関や全国51の信用保証協会、メガバンクや地域金融機関がコア会員になっている為、全国、全業種の幅広い中小企業の決算書やデフォルトデータが集積されています。
https://www.crd-office.net/CRD/
昨年12月には全国100万社のデータから企業の健康状態を診断する「中小企業経営診断ツール」をリリースしました。
<リリース記事>
<ストーリー>
「全国100万社のデータから企業の健康状態を診断する「中小企業経営診断ツール」の3大機能と開発の裏側をご紹介。」
https://prtimes.jp/story/detail/wrV2Wjse8Gr
今回は当ツールの三大機能の一つである決算書の異常値を注意喚起するアラート機能(CRDアラート)を元に、当協会の粉飾決算検知の取り組みについてご紹介していきたいと思います。
■開発の背景
粉飾決算は過去にも様々な企業で問題になってきましたが、最近は手口がより巧妙化していることもあり見抜くのがますます難しくなってきています。
一般的に粉飾決算を見抜くには銀行マンの長年の経験と勘によるものや既存の粉飾検知システムの利用などが考えられると思いますが、
CRD会員様へのヒアリングでも粉飾決算への対応は頭を悩ませているケースが多く、
既存の粉飾検知システムを利用してはいるものの効きが悪い、ロジックがブラックボックスでわかりにくいといった声が上がっていました。
■CRDにしか出来ない国内最大規模の中小企業決算データベースを使った決算書の異常値検知機能開発への道
CRD会員様へのヒアリングでは上記のような声がある一方で、「財務指標を業界平均値と比較しているが、CRDの大規模データから算出された値との比較であれば非常に参考になると思う」といった声も上がっていました。
このような声に対してCRD協会として何か出来ないか検討を重ねたところ、
粉飾を言い当てることは出来ませんが、1995年以降の長期間データを使った業種別の基準値を算出し、各財務指標値が過大/過小かを判定してアラートを出すという仕組みであれば、ロジックはシンプルでわかりやすく、ブラックボックスでわかりにくいという声にも答えられるということで開発の方向性が決定しました。
また、導入もPCにインストールするだけで簡単に利用出来ることを目指しました。
■決算書異常値検知の仕組み
例えば、典型的な粉飾決算のパターン『架空の売上債権計上による売上高の水増し』 では、『売上債権回転日数』同業種データと比較し、過大な水準かどうかを判定します。
判定にあたっては、CRD協会に蓄積された法人データ全件(1995年~約2,400万件) を業種別に集計した、27の財務指標に関する異常値(過大/過小)とみなす水準と比較します。
<出力帳票サンプル>
■活用事例紹介のオンラインセミナーを開催(判定結果の事例紹介)
2022年6月8日にはCRD会員様向けに当ツールの活用事例紹介のオンラインセミナーを開催し、判定結果の具体的事例として、不適切な会計処理(売上の前倒し事案及び架空売上事案による会計不正)があった会社の決算書を基に当機能がどう注意喚起していたのか紹介しました。ここではその内容をご紹介します。
<粉飾決算の決算書を3期分を当機能に入力した際にアラートがヒットした項目>
①「1.売上債権水増しチェック」と「9.循環取引チェック」の異常値判定が目立っており、『架空の売上債権による売上高の過大計上』という典型的なパターンの可能性を示唆しています。
「15.営業利益と営業CFとの乖離チェック」では数億円規模と極端に営業利益の方が
大きくなっており、『売上債権の水増し』による収支偽装の可能性を示唆しています。
②実際の調査報告書でも、過年度財務諸表において売上計上していた不適切な取引には、1.売上の前倒事案、2.架空売上事案が多数存在し、これらに係る売掛金の回収遅延発生や、隠蔽目的の偽装入金などが指摘されています。
③このCRDアラートの判定結果をきっかけとして調査を行い、売上の前倒事案や架空売上事案を行うに至った同社の情報を把握できれば粉飾決算を検知できたかもしれないということが言えます。
■今後の取り組み
CRD協会ではCRDアラートの活用促進に加え、当ツールの利便性向上を高める為に①どの債務者にどの指標でアラートが立ったか債務者毎にわかる一覧表や②債務者区分別、企業規模別、業種別にどの指標の効きがよいかの検証レポートの還元も準備しています。
冒頭の通りCRD協会には、全国、全業種の幅広い中小企業の決算書やデフォルトデータが集積されています。この大量の決算書データベースを活用した、粉飾決算発見の仕組みを作れないか更なる研究も進めています。
粉飾決算を見抜くのは容易ではありませんが、今後もCRDの強みである国内最大規模の中小企業決算書データベースから新たな付加価値を生み出して参ります。
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