Push-inからはじまり電源保護へと広がる、テクノロジーを通じた企業間コラボレーションが順調な理由とは? フエニックス・コンタクト×富士電機機器制御
ドイツに本社をもつフエニックス・コンタクト株式会社は、スイッチング電源及び各種対策機器を取りそろえ、制御盤内のDC24V電源ラインの可用性を高める「安心24ソリューション」を展開しています。そのPRキャラクターを務めるのが、電源を守る戦隊ヒーロー「クイントマン」。その活躍の様子は漫画としてWEBで公開されています。
最新話では、企業間コラボとして、富士電機機器制御株式会社のオリジナルキャラクター・制御盤防衛隊・サーキットイエローが登場し、クイントマンと協力して電源ラインの保護を行う様子が描かれています。
制御盤の電源ラインの保護、電力の安定供給を共通目的として生まれたフエニックス・コンタクトと富士電機機器制御のコラボレーション。企業の枠組みを超えたコラボレーション取り組みはどのように生まれ、どのように発展していくのでしょうか。対談形式で伺いました。
フエニックス・コンタクト株式会社 ICE統括本部 フィールドマーケティング部 木本 敏広(右)、富士電機機器制御株式会社 事業統括部 プロモーション部 福山 肇氏(左)
Push-in(プッシュイン)テクノロジーからはじまったコラボレーション
ーコラボレーションの経緯はPush-in
フエニックス・コンタクト(以下フエニックス):
フエニックス・コンタクトにはDNAとも言える、産業機器向け接続技術Push-inがあり、端子台をはじめ盤用機器に展開し、長年にわたって配線作業の効率化を進めてきました。2018年に富士電機機器制御さんがスプリング端子を搭載した電磁接触器やリレー、ブレーカなど愛称を「F-QuiQ」と称した製品群を発売されることとになり、2019年秋から本格的にPush-inを共通項とした販促マーケティングで交流がスタートしました。
以降、顧客向けセミナーや、展示会での相互協力、ウェビナー動画制作、共同フライヤ、試験等を実施。お互いのお客様から好評で、2021年春にも富士電機機器制御さんのスプリング端子製品の特設サイトに、弊社のPush-in製品を追加するなどコラボを継続してきました。そして2022年春にコラボの範囲をPush-inから電源関連機器に拡大し、弊社の電源ソリューション「安心24」と富士電機機器制御社サーキットプロテクタの共同販促を実施し、11月末には初のオンライン技術セミナーを開催予定です。
富士電機機器制御(以下富士電機):
F-QuiQを発売し始めた頃、弊社の配電制御機器とフエニックス・コンタクトさんの端子台を使い、ねじ接続方式を使わず、Push-in接続機器だけで制御盤を作るという企画にも協力いただきました。今回のコラボも、早い段階からPush-inや端子台以外でも何か一緒にやりたいねという話はずっとしていて、それがようやく叶った形になります。
日本市場での認知度向上・Push-in文化の盛り上げで利害一致
ー幅広い製品種を持つメーカーならではの課題
フエニックス:弊社は来年で日本法人設立35周年を迎えます。ようやく端子台やコネクタ等の接続機器、スイッチングハブなど産業ネットワーク機器では業界内でも一定の知名度をいただくようになってきました。
しかし弊社には10万種類以上の製品種があり、接続機器や産業ネットワーク機器以外にも、リレーやセーフティ機器、電源と保護機器、PLCやHMI、筐体・ボックスやマーキング機器など幅広い製品群を揃えています。グローバルでは広く採用されている製品もありますが、国内での認知度はまだまだ低め。これまでとは異なる提案や販促を考える必要がありました。
例えば今回のコラボの目玉となっている電源関連機器に関しても、日本では接続製品に比べ認知度が高くありませんでした。またスイッチング電源とその対策機器の両方を取り扱っているという強みがあるにも関わらず、これまで弊社はハードウェアメインの提案や単品売り中心でした。そこで新しいチャレンジとして、制御盤内の電源ラインを脅かす課題(次段落で解説するSOFIS)とその解決策に焦点をあて、新しい提案として2020年に「安心24ソリューション」を開始しました。
ー安心24ソリューションとは?
フエニックス:弊社のスイッチング電源と対策機器を駆使して、トータルで電源ラインを保護していきましょうという提案です。例えば工場ですと、機械や生産を止めないためには、制御盤の電源、いわゆるDC24Vの安定供給を守ることが大前提であり、その電源を脅かすあらゆる事象に対策を講じる必要があります。このことは工場だけに限らず、プラントやインフラ設備の計装や監視用の電源にも同じことが言えます。
電源の不具合の主な原因は、短絡、過負荷、故障、停電・瞬低、サージの5つに分類され、その英語の頭文字をとってSOFISと呼んでいます。弊社はスイッチング電源「クイントレッド」をはじめ、このSOFISから電源を保護する機器を取り揃えており、それらを使って電源を保護し安定供給を実現します、というのが「安心24ソリューション」です。そして、電源ラインの安定化に活躍する機器を擬人化キャラクターとして誕生したのが「安心24戦隊クイントマン」です。クイントマンはストーリー仕立ての漫画として、現在は弊社の安心24特設サイトで第6話まで公開中です。
ー技術ソリューションをやさしく漫画で発信
フエニックス:「安心24ソリューション」は単一製品ではなくソリューションであり、機器メーカーの弊社としても大きなチャレンジでした。そのためお客様だけでなく、弊社の営業、また特約店様にも内容を分かりやすく理解していただく必要があり、その手段として考えたのが、擬人化と、漫画化でした。ちょうど赤血球や白血球など体内の細胞を擬人化して体の働きをやさしく解説する漫画が流行っていて、それを電源保護に応用した形になります。
作画についても、もともとエンジニアで、現場や技術に詳しく、製造業でもファンの多い人気漫画家の見ル野栄司さんにお願いしており、おかげさまで社内外から好評です。
安心24戦隊クイントマン(左)、制御盤防衛隊 サーキットイエロー(右)(安心24ソリューションサイト)
新たなチャレンジ。安心24ソリューションと漫画を活用した共同販促
ー製品提案に加え、漫画ストーリー内へもコラボレーションが拡大したのですね
フエニックス:最新話では、富士電機さんのオリジナルキャラクター「制御盤防衛隊 サーキットイエロー」が登場し、クイントマンと協力する様子が描かれています。クイントマンにはスイッチング電源の一時側(AC側)を保護できるメンバーがおらず、そこに助っ人としてサーキットイエローが颯爽と登場し、クイントマンとのコラボで安心24ソリューションの足りない部分を補い危機を救うというストーリーになっています。
富士電機:クイントマンは私もファンで楽しく読ませていただいて、漫画や擬人化はPR手法として有効だと思っていました。そこで、以前、外食産業で同一業界の企業同士がゆるくコラボをして、それぞれに自社キャラクターを作って合同でキャンペーンを張っていたのを思い出し、弊社でもオリジナルキャラクターとして「制御盤防衛隊」を作りました。その第一弾がサーキットプロテクタCP30Fシリーズを擬人化したサーキットイエローとなります。
今回、フエニックス・コンタクトさんのクイントマンに出張し、漫画にも登場させてもらいました。
安心24戦隊クイントマン第6話より(安心24ソリューションサイト)
フエニックス: 富士電機さんは日本市場での信頼感が非常に高く、歴史ある会社であるにも関わらず、意外にもコラボにも前向きであったことから、企画から実行まではとてもスムーズに進みました。色々と斬新なアイデアも出してくださる、心強いパートナーです。
富士電機:弊社は業界内での知名度は高いものの、長期的には新規のお客様との接点を持つため、常に新しい取り組みを実行していくことが求められています。2018年に発売したPush-in製品のF-QuiQのPRに関しても、これまでフエニックス・コンタクトさんがグローバルで築いてきた「Push-inのパイオニア」としてのノウハウとポジションは圧倒的で、コラボレーションはとても魅力に感じました。
今回のコラボに関して、電源まわりの一部の製品でお互いに重なる部分はありますが、弊社は動力側、特にAC側に強く、フエニックス・コンタクトさんは制御側、特にDC側と注力分野が異なっていて、お互いに補完し合える関係にあったことで組むことができました。
成功の要因は、業界の課題認識と解決策の共有
ーコラボへの市場の反応や成果は?
フエニックス:社内外でおおむね好評です。コラボしたことで、富士電機さんのお客様や販売店様などにも知ってもらうことができ、今まで接点のなかったユーザー様や販売店様から問い合わせが増えています。
また、今回コラボするにあたり、富士電機さんの吹上工場で両社製品の組合せ試験により、有効な技術的裏付けを取って頂きました。WEBやチラシ等で両社の製品が試験実証済み・メーカー推奨組合せ製品の掲載は、選定の際の安心材料になると思います。またお客様が自社で確認する手間が減り、ご発注までの納期の短縮にも役立ちます。
富士電機:弊社でも社内外の反応が良く、引き合いも発生するなど相乗効果が出ていますね。
ー施策がお客様に受け入れられている背景とは
フエニックス:弊社も富士電機さんも、お互いに産業機器メーカーとして共通した認識と課題感を持ち、その解決に向けて積極的という点も大きいと思います。
産業現場では、人手不足と熟練作業者のノウハウの継承の難しさが以前から言われ、様々な変革が必要とされています。また世界的な気候変動により、これまでにない大雨や大雪、猛暑など過酷な環境への対応が必要となっています。
お客様を取り巻く環境と意識の変化もあります。制御盤を必要とする機械メーカーやエンドユーザーはこれまでは保守的でしたが、最近は自動車のEV化など市場環境の大きな変化やデジタル化、さらには納期遅延等の影響もあり、提案型、コンサルティング型の営業が求められています。
時代の変化に対して、両社ともにPush-inテクノロジーをはじめ、IoT化や予防保全などのソリューションを、課題を含めてお客様に展開し続けていることも、新たな施策がお客様に受け入れていただける一因となっているのではないかと思います。
11月末に初の合同ウェビナー、技術知識を訴求し業界内外の連携を加速!
ー企業間コラボは今後どのように展開していきそうですか?
フエニックス:直近では、2社を含む制御盤関連メーカーで11月29日にオンライン技術セミナーを開催予定です。テーマは北米向けの生産設備の電源ライン、規格・認証に関する内容です。北米でFA向けの制御盤でサージ保護機器の設置が義務化されるなど、今一番熱い話題を取り上げます。
また、FA市場ではPush-inがかなり浸透してきていますが、インフラ市場ではまだまだ広がっていません。こうした新しい業界に対してPush-inを普及させていくには、敵も味方もなく、業界を挙げて取り組んでいく必要があります。それこそコンソーシアムなものを作って一丸となってやるくらいでも良いと思います。今回のコラボをきっかけに、そうした活動にもチャレンジしたいと考えています。
富士電機:合同ウェビナーに加え、WEBサイトでも電源とサーキットプロテクタのコラボページを充実させることを計画しています。北米の安全規格では制御盤にSCCR(短絡電流定格)の値の表示が義務付けられていることもあり、SCCR関連情報を多く掲載し、製品選定を効率化する、選定を手助けできればと考えています。
お客様の課題に対して、スプリング端子機器という視点で、いま一番の相談相手になってくれているのがフエニックス・コンタクトさんです。Push-in接続の普及も含め、弊社の色や特長を出しながら、相乗効果が得られるような企画を実施していきたいです。
フエニックス:今回の一連の取り組みによって、Push-inでも電源周辺機器でも、テクノロジーを通じて企業を超えた連携、成果につなげる活動と実績の型がみえてきました。今後他の分野でも、自社だけではできないコラボにより、お客様の課題を共に解決していきたいですね。
制御盤と電源ライン製品のイメージ
【参考】
- フエニックス・コンタクト株式会社ウェブサイト
- 富士電機機器制御株式会社ウェブサイト
- 安心24ソリューション特設サイト(フエニックス・コンタクト社)
- スプリング端子製品特設サイト(富士電機機器制御社)
- 【3メーカー合同ウェビナー】北米向け生産設備の「安心」電源ライン~意外と知られていない規格・認証のポイントとは?~
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