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【リコーのアクセラプログラム】スタートアップ企業の伴走者に聞く、チームをワークさせる秘訣とは?

著者: 株式会社リコー

 

 リコーの山下社長は「TRIBUSは生き物だ」と語ったが、それは「生き物のようだ」という感想とともに、「生き物のようであるべきだ」という想いでもあったのだろう。TRIBUSは生き物のように変化し、成長していかなければならない。でなければ、TRIBUSをやること自体が目的化してしまい、その先の目的を見失うことになる。そうならないために、日々変化し、成長していくことはTRIBUSに課された宿命であり、永遠のテーマとなる。では、2022年度は、どんな変化があったのか? ポイントは「統括カタリスト」と「時間軸の変化」の2点。いずれも精緻化・重層化するTRIBUSをサポートしていこうという取り組みだ。これらのプログラムとしての進化について、2021年度に初めての統括カタリストとして活動した2人と、01Boosterの担当者から話を聞いた。

 

インタビュイー

溝口真仁 TRIBUS2021統括カタリスト / リコージャパン株式会社 マーケティング本部 自治体事業部 ソリューション推進部

前田裕司  TRIBUS2021統括カタリスト/ 株式会社リコー デジタルサービスビジネスユニット デジタルサービス開発本部 アドバンストバリュー開発センター 開発戦略室 開発支援グループ

木本恭介さん TRIBUS2020・2021担当 / 01Booster マネージャー

川岸亮造さん TRIBUS2022担当 / 01Booster マネージャー


 

■TRIBUSのスキームを加速する統括カタリスト

 

――「統括カタリスト」について、なぜその設置が検討されたのか、またその期待される役目とは何だったのか、教えてください。

 

木本 2021年度TRIBUSのスタート時に、事務局のリーダーの大越さんから、カタリスト(伴走者)の中にそういったポジションの方を設置できないかという相談がありました。2020年度の採択チームは10チームで、カタリストも1人で2、3チームに伴走するという体制だったので、僕自身、中間にもう一層あったほうが良いんじゃないかと感じていたところでした。

チームが増えたことで、だんだん、サポートしきれずにこぼれ落ちてしまっているものが出てきてしまっているんじゃないか。カタリスト側も、成果発表に向けて短期的な成果をかたちにすることに汲々としてしまいがちで、そうすると、本来ならあり得た他の可能性をつぶしてしまっているのではないか。マネジメントの層をひとつ追加することで、そのフォローができるのではと考えました。さらに2021年度は、カタリスト1人に担当してもらうスタートアップを1社にする方針で進めていたので、カタリスト同士の連携が希薄になる懸念がありました。

もちろん、統括カタリストに対して、具体的に「これをする」という役目を設定したわけではありません。カタリストを募集するときに、1項目「統括カタリストをやってみたいですか」という項目を付け加えただけで、本当にやれるのか、見通しはあまり立っていなかったんです。結果的に、溝口さん、前田さんのお二人が手を挙げてくれたんですけども、これが実際に走り出してみたら非常によくワークしたというかハマったというか。本当に溝口さんと前田さんで良かったなあと(笑)。

 

溝口 私はリコージャパンというリコーグループの販売統括会社に所属し、販売に長く携わっているので、今回はスケーラー型のスタートアップに対応しました。ちょうど前田さんと3社ずつ担当を分け合ったかたちです。このソリューションを販売したいのなら、どの部署につなげば良いかについて、リコージャパンの方針・市場戦略との整合性、企画部門の重点テーマとのシナジー、営業区の体制や活動スケジュールなどを加味して、各部門へつなぐような活動をしていました。また、リコーのカウンターパートとなる部署とスタートアップ、カタリストのミーティングに参加しながら、スタートアップ企業が言い難いリコーへの具体的な要望、スピード感と、各部署とのシナジーについても咀嚼して伝えるといったこともしていました。


TRIBUS2021統括カタリストを務めた溝口さん


前田 逆に私は開発部にいたので、どちらかといえば、シーズ寄りのスタートアップ3チームに対応しました。私もリコー勤務が長いので、付き合いのある各部門のキーマンの協力を得ながら、それぞれのスタートアップを適切な人や部署とつなぐことはできます。私がやったことと言えば、カタリストがやりきれない部分を拾いながら、社内で味方になってくれる人を増やしていくことですね。一方で、カタリストとスタートアップのミーティングにもすべて参加していまして、チームによっては、かなり中にグッと入ったこともあります。

 

木本 カタリストはもちろんいるのですが、必ずしもスタートアップが望むコネクションや経験、技量を持っているとは限らないというのは、プログラム初期からあった問題なんです。どうしてもこぼれてしまうものは、これまでもあったかもしれません。しかし、統括カタリストを置くことでより多くの課題が拾えるようになったといえるでしょう。それに、リコー社内との連携のスピードもものすごく速くなったと思います。もちろんまだ理想には程遠いんですが。

ただ、2021年度はトライアル的に導入したこともあり「統括カタリストはこれをやるべき」という役割を明示してはいないんですね。ちょうど溝口さんと前田さんのお二人が手を挙げてくれたので、「お二人で相談してやってください」と(笑)。

 

溝口 それが良かったと思います。私は「あれをやれ」「これをやれ」と決められたことをやらされるのは、息苦しいというか、あまりやりたくなくなるので(笑)。

 

前田 とはいえまったくの放任かと言えばそういうわけではなく、進行をちゃんと見ていて、厳しく締めるところは締めてくれるので一緒に仕事をしていて安心できました。

 

溝口 各チームの進捗のキーになるポイントで、木本さんがカタリストのことを褒めてくれるのもうれしかったですね。社会人になって縦割りの組織の中に長くいると、日常で褒められることも少なくなるので、外部の方に褒められるのはカタリストにとってのモチベーションアップにつながり、統括担当としても非常に助かりました。

 

川岸 お二人の活躍を踏まえて、2022年度の統括カタリストは4人置いているんですよ。2022年度は、あえてバラバラの部署から入っていただいています。所属が偏ってしまって、拾えないものが出てしまう可能性もあるので。

また、カタリストに若い方が増えてきているのも今年度の特徴ですね。若いうちから積極的にチャレンジすることは良いことでもありますが、逆に経験が少ないことから拾えないものも出てきやすくはなります。カタリストとして実績を残そうという使命感から、「リコーとの協業」に囚われすぎているケースもありましたが、拙速に行き過ぎるのも良くないので、こういうときに統括カタリストが良い作用をしてくれていると思います。 

 

01Boosterの川岸さん

 

木本 そういう意味では、統括カタリストの素養というのは、知識や経験、ネットワークなどはもちろんですが、柔軟性なのかなと思います。変にブレーキをかけずに、とりあえずさっと動いてみればいいじゃん、というフットワークの良さ、受容性の高さなどもそれに付随するものだと思います。

 

――統括カタリストとしてご苦労されたこと、大変だったことはありますか。

 

溝口 リコー側がスタートアップの温度感、スピード感を理解しきれず、スタートアップ側にストレスを与えてしまっていたことがあります。ミーティングでも答えを出さないといけないときになかなか答えまでたどりつかない。そういうときは、リコー側のカタリストや関係者をフォローしつつ、宿題にして回収するといったようなことをしていて、それはちょっと大変だったかなと。

 

木本 ミーティング中に溝口さんの顔を見ていると、いろいろ溜まってきているのが分かって面白かったです(笑)。

 

溝口 あ、顔に出てましたか。それはいけませんね(笑)。一方で、スケーラー型のスタートアップからの要望の中には、リコージャパンが持っている顧客や関係会社を紹介してほしいということがよくありましたが、お客様接点として紹介する立場の責任を伴うことになるので、両者の落としどころを探るのも苦労したところですかね。

 

前田 私の場合は、カタリストのチームビルディングの難しさを感じました。スタートアップ、カタリストが話し合っていれば、自然とリードをとる人が出てくるものですが、そこの足並みが揃わないこともある。統括カタリストとしては自らリードするべきではないので、「これがあったら動かざるを得ない」というような、最終局面までの計画書、フレームワークのようなものを作成して、それとなく差し込んだこともありました。入り込み過ぎないように、また、それぞれの立場を保てるように、というところで気をつかった覚えがあります。

あとは、社内で協力を求めるときにも、必ずしも最初からうまく行くとは限らない。そんな時、すぐに次のアクションをするべきか、プロセスを練り直すべきか、チーム内で意見が分かれることもありました。そういうことを、カタリストと夜ビールを飲みながら「次どうしようか」と話をしたり、サポートしたりということもありました(笑)。 

 

 TRIBUS2021の統括カタリストを勤めた前田さん


溝口 大人の対応ですよねぇ(笑)。

 

前田 いや、普通の組織でもよくあることですから、そういうことを丁寧に拾っていくことが大事ですよね。

 

溝口 そういう視点で言うと、統括カタリストってマネージャー候補生が経験すると良い役割かもしれませんね。

 

前田 マネージャーになる前が良いのか、後が良いのか。経験がトラウマになっちゃったら困りますよ(笑)。

 

溝口 私はいろいろなところに首を突っ込みたいタイプなので、統括カタリストは性に合っていました。すごくワクワクして楽しめたし、リコーを見直す機会にもなりました。社内のいろいろな人と関わって、リコーにはすごい人材がたくさんいる。これをそのままにしていてはもったいない、もっと活性化したいと感じました。

 

前田 私もなんでもやってみたい派なのと、TRIBUSを見ていて、会社の本気度をすごく感じていました。なんらかのかたちでTRIBUSに関わりたいと思っていて、統括カタリストもあまり深く考えずに(笑)エントリーしてしまったのですが、さまざまなスタートアップの皆さんと関わることができて面白かったです。そして、TRIBUSが本当に生き物なんだなと感じました。会社にとっても、社内・社外の壁を超える、ものすごいツールとして利用できる。これを活用しない手はないと、改めて思います。

 

■組織を変えるツールとしてのTRIBUS

 

――統括カタリストをはじめ、TRIBUSがまた新しくなろうとしていますが、今どんな変化が起きているのか、あるいは今後どんな変化をさせていこうとしているのか、お考えがあったら教えてください。

 

木本 企業というのは、全体を見れば起業家マインドを持った人の比率は少なく、大半がオペレーションを回す人たちで占められているのが普通です。しかし、TRIBUSはその比率を変え、組織を変えていくツールとして機能するようになり始めていると感じています。社内起業家、カタリストとして活動した経験を認められて、新規事業開発の部署に引っ張られたり、あるいは周囲に好影響を与えて、社内起業を始める人が出てきたり、いろいろなことが起こり始めていて、面白くなってきました。


また、カタリストを経験した人が社内に増えていけば、TRIBUSの取り組み自体がスムーズになるでしょう。スタートアップを紹介するのも「ああ、TRIBUSのね」と話が早くなる。社内でも、新しいことに取り組む空気も醸成されていく。そういう人のボリュームが増えれば、統括カタリストのような層もまた必要になるでしょう。

オウンドメディアで情報発信をしているのも、実は事務局の超ファインプレーだと思っています。他の会社では情報発信のハードルが高くてなかなかできないことなんですが、TRIBUSがどんなものか、何をやっているかを外に向けて発信してくれるおかげで、「そういうことをやれる会社なら入りたい」という人が増えるだろうし、実際に2022年には何人かそういう社員が入社したと聞いています。

 

01Boosterの木本さん


溝口 また、広報からメディア向けにTRIBUSのニュースリリースを出しているのはすごいことだと思いますね。スタートアップにとっても良い援護射撃になっているのではないでしょうか。

 

木本 TRIBUSは、毎年「今年はどうしようか」と、やり方から都度考えて変わっていくところに特徴があります。我々01Boosterも、一緒に話し合いながら決めている格好で、TRIBUSはまさに変化し成長する「生き物」という感じがしています。2022年度は、後工程に重点を置くことを強く意識し、時間軸を含め全体設計を大きく変えました。

後工程というのは、アクセラ期間が終了した後の動きを指しています。これまでも2月の成果発表会の後、カタリストの方も一緒になって活動を継続したいというチームがありました。これを明確にかたちにするため、5カ月後にもう一度発表する場を持つことにしたのです。4カ月のアクセラ期間で一定の成果を出すことはもちろん必要ですし、うまくいかなかったことも含め、その経験を新たに次につなげる場を設けることで、アクセラレーションプログラム全体がうまくワークするのでは?と考えています。

この後工程については、カタリストが参加してもしなくても良いし、リコーと協業してもしなくても良い。一足飛びに外に行けないなら、リコー内部で一緒に基礎を固めるという作業があっても良い。つまり、こうあらねばならないというかたちは決めていません。参加しているチームの皆さんのご意向に合わせて、進めていきたいと考えています。

 

川岸 スタートアップ側にしてみると、アクセラ期間だけの活動という制限の中で、期間中ずっと拘束されて、プログラムにカチっとはめ込まれるのはツライということは多かれ少なかれあると思います。特にスケーラー型だったらその傾向は強いかもしれません。私もスタートアップを創業していたときにアクセラに参加して、そういう思いを味わったことがあります。なので、アクセラ期間が終わっても、その期間だけの活動として終わるのではなく、その先があって一緒に取り組める可能性があるというのは、スタートアップにとっても決して悪いことではありません。特にスケーラー型には、すごくメリットがあるのではないでしょうか。

普通アクセラレーションプログラムはシードフェーズのスタートアップとは相性が良いのですが、スケーラー型には合いにくいものなんです。ところがTRIBUSはスケーラー型に門戸を開いている。これはとても珍しいケースです。スケーラー型のスタートアップにとっては、通常協業しようとすると、一度話を持ちかけた部門でうまく話が進まなかったらそれでおしまいという形になってしまいますが、アクセラ期間やその先の期間で、「アクセラの採択企業」ということを紋所に別の部署の方にも二の矢三の矢が打てることは、かなりの魅力です。TRIBUSは普通のアクセラプログラムと比較しても自由度が高いので、こちらの部署が対応できなくても、あちらの部署が援護射撃をしてくれる、ということがあって、ステージが進んだスタートアップにとっては、非常にありがたいです。

 

木本 2022年度のプログラムは7月まで継続しますので、先走ったことは言えませんが、2023年度以降は「拡張」を意識していく時期だろうと考えています。4期終えて、ある程度リコーグループ社内の周知は進みましたが、再周知も必要でしょう。将来的なアイデアとしては、カタリストのような活動を拡張して、ベンチャーへの「短期留学」のようなかたちにしてみたい。今は業務の20%までという縛りがありますが、その期間は100%ベンチャーに入ってもらう。ベンチャーの目線に馴染んだ人がまた社内に戻ると、空気が変わってくるような気がします。

もうひとつが「グローバル化」。リコーもグローバル企業ですから、国内だけでなく広く海外からも募集するのは有りではないか。特に日本のスタートアップは環境分野に弱く、海外のスタートアップに優れたものがある。環境に力を入れているリコーだからこそ、可能性を探ってみたいです。




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