食べる量ではなく、食べる時間を変えるだけ。著者自身も17㎏の減量に成功した『時間栄養学的ダイエット』で、心身の健康を維持
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「簡単に短期間で痩せられる」とうたったダイエット法が流行しては廃れていくなか、最近は腸活など「健康的に痩せる」ことに注目が集まり、ダイエット法も見直されてきました。
「食べずに痩せる」から「食べて痩せる」時代へ。発酵食品を食べると腸内環境がよくなる、筋肉を増やすにはたんぱく質が必要だ……。何を食べると体にいいのかということは、専門家からの発信も増え、周知されるようになりました。
「何を食べるか」に加え「いつ何を食べると体にいいのか」という「時間」の視点から太りにくい体へと導く方法をまとめたのが『決まった時間に起きて食べるだけ 10時間空腹リセットダイエット』(主婦の友社)です。
著者は早稲田大学在学中から体内時計に着目した研究を続けている古谷彰子さん。自身も妊娠中の体重増加をこのメソッドで解消。ダイエットだけでなく、日々のパフォーマンスの向上、子どもたちの食育にも活用できるといいます。
「食べたらダメってわかっているけど、食べちゃいますよね(笑)」と17㎏太った経験が、栄養指導に活かされていると語る古谷さん。自身の体験をもとに、挫折しがちなダイエットを継続する秘訣を教えてくれました。
(撮影/山村祐太郎 取材・文/岩淵美樹)
何を食べるかより「『いつ』、何を食べるか」という時間の視点で考えるのが『時間栄養学』
ダイエットのお話をする前に、私が研究をしている『時間栄養学』について、少しお話させてください。初めて耳にした人も多いのではないでしょうか。
これは、「いつ、何を食べるか」と、「時間」に着目した学問です。ダイエットに限らず、健康を維持するために、「何を食べればいいか」ということをみなさん気にされますよね。実際、管理栄養士として栄養指導するときにも「これは食べていいですか?」「食べちゃダメなものってなんですか?」を聞かれることが多いんです。メディアのダイエットや健康特集でも「●●を食べるといい」と食材がメインになりますよね。
どうしても「何を食べるか」にとらわれがちですが、一日のなかで体の代謝や吸収しやすい時間帯があるため、「いつ」食べるかといった「時間帯」を考えることこそ、大切になってくるのです。
私が初めてこの学問に出合ったのは大学3年生のときです。『時間薬理学』がスタートでした。病気の種類によって発症しやすい時間帯があり、いつ薬を投与すると効果があるかということを研究していました。症状を抑える効果が高い時間帯があることから、朝の食後に飲む、就寝前に飲むと指定されている薬があることに大変驚きました。
食事でとる栄養素も薬と同じで、時間帯によって作用が変わるのではないかという学問が発展してきたのも、まさにこのころでした。
『時間栄養学』の第一人者である柴田重信教授の研究室に入り、さまざまな実験を通して体内時計のリズムに合わせた食事のとりかた、体を元気に整える食事のとり方を解明してきました。まだまだ歴史の浅い分野なので、新しい発見の連続で楽しいですね。
▲早稲田大学で時間栄養学の面白さを教えてくれた柴田重信教授。栄養士の資格を取ることをすすめてくれたのも柴田教授。心から感謝しています。
体のなかでリズムを刻む「体内時計」が乱れると、脂肪をため込みやすくなったり、気分が落ち込んだりと体のあちこちに不調があらわれます。その乱れをリセットするのに役立つのが「朝食」です。『時間栄養学』によって、いつ、何を食べると体内時計のズレをリセットしやすいのかということがわかってきました。
体のリズムを食事で整え、健康的で太りにくい体に導くダイエット法を『空腹リセットダイエット』と今回は名付けました。
専門的な話になるので、『時間栄養学』についてはここまでにしておきましょう。書籍のなかでも触れていますので、読んでみてください。
マタニティブルーから激太り。頭ではわかっていてもできないことの辛さを実感
「いつ、何を食べるといいか」と研究をしていても、大学院の研究室ではマウス実験がメイン。「人の食事」にフォーカスしなければ、応用ができないのではと思っていたときに、柴田教授から「食や栄養の知識も必要では」とアドバイスをいただき、短大に入ることにしました。
実は、短大入学の直前に結婚をし、1年生の夏頃に妊娠がわかりました。予定日は2年生に進級するころ。出産間際まで親しい人にしか報告をしていなかったので、同級生には「あれ、古谷さん、太ったのかな」と思われていて(笑)。
実際のところ短大の春休みになり、大学の研究室も産休に入ると急激に太りだし、気づけばプラス17㎏に! 通っていた産科の先生からは「少しくらい太っても大丈夫よ」と言われていたものの太りすぎですよね。
それまで激太りしたことはなく、太ったといっても高校生のときにプラス5㎏くらい。部活をやめ、受験に専念したことで夜型生活になったことが原因だったと思います。その後、大学生になると自然ともとに戻っていました。早稲田大学のキャンパス内をよく歩き、ホットヨガにはまっていたからかな。
書籍のなかでもお伝えしていますが、この「夜型」生活は、体内時計を狂わすもとですし、食生活も乱れて太りやすくなります。
▲体内時計のリズムが乱れ「体内時差ボケ」が起こると、さまざまな不調があらわれる。(書籍『決まった時間に起きて食べるだけ 10時間空腹リセットダイエット』より)
「よくないこと」とわかっていても、出産間際まで夜型生活が続いていて、妊娠中のホルモンバランスの変化もあり情緒が不安定にもなっていました。初めての出産ですから不安もあり、ちゃんと産めるだろうかと夜になるとネガティブモードになって、動画を見ているスマホで、気づいたら「出産 事故」など検索していました。
産休でやることがないので昼間はごろごろ、夜はずーっと動画を見てお菓子を食べる生活。このままではダメだと散歩に出ても、せっかくだからと食べ歩き。
食欲の歯止めがきかなくて、太った姿から目を背け、鏡を見ることもしなくなっていました。そんなある夜、スーパーでアイスを手にしいてる自分がショーケースのガラスに映り、「こんなデブの栄養士から指導を受けたくないよな」と悲しくなってその場で涙が出てきたんです。「食べたい」「でも、やめないといけない」の無限ループ。ストレスが極限まで達していました。
短大で栄養のことを学んでいるし、「時間栄養学」について研究をしていて知識はある。それなのに、できなんですよ。よく「何でできないの?」と言いがちですけど、この経験があったからこそ、栄養指導で否定から入らず患者さんの目線に立てるようになったのではないかなと思っています。
子育てもダイエットもほどよく肩の力を抜くのがいい
短大2年の4月に出産をしたのですが、無謀にも休学せずに退院後すぐに学校に通っていたんです。同級生は社会人も多く、出産経験がある人生の先輩や先生方にはたくさん心配をおかけしました。「産後はね、1カ月休むものよ。早く帰りなさい」と言われましたね。私の場合、すぐに保育園が決まり、夫も育休をとってくれたので、子育ての環境が整っていたからできたことです。また、通っていた短大が、学生に対してとても親身に向き合ってくださるところだったからこそ、すぐに戻って頑張れたのだと思います。若さゆえの無茶もあったと思います。だから、マネはしないでください。
17㎏の増量から抜け出せたのは、意外にも簡単なことでした。
保育園に子どもを預け、学校や仕事に行くためには早起きをしないといけないし、子どもを抱いて駅まで早歩きをしないと間に合わない。朝、起きるとお腹が空いているので朝食を食べますし、すると3食しっかりと食べるようになって自然と朝型になっていました。まさに『空腹リセットダイエット』の方法です。
研究してわかってきた『時間栄養学』に基づくデータを、自分で実証していくのが面白かったですね。
▲長い空腹時間をリセットし、1日の活動開始を告げる朝食が体内時計をリセットする。(書籍『決まった時間に起きて食べるだけ 10時間空腹リセットダイエット』より)
情緒不安定だったのもウソのように産後は楽観的に。体が軽くなっただけでなく、心まで軽くなっていたのです。
学校と仕事、子育てと忙しかったけれど、学校で学んだ知識が大いに活かされ、同級生の先輩ママたちからの生きた情報を得られていたので気負いがなかったのかもしれません。離乳食も「潰せばいいよね」くらいのラフな気持ちで、粗く潰していたらよく噛んで食べる子になりました(笑)。
夫は研究室で一緒だったこともあり、研究気質があってミルクの時間など育児記録をマメにとってくれていました。子どもは早くから一人で寝る習慣をつけさせようと、20時になったら寝室へ連れていくようにしました。3カ月で睡眠ホルモンと言われる「メラトニン」が確立されると言われているのですが、だいたいその通りになりました。我が子の子育て記録を活かしたのが、前著の『時間×食事で賢い子が育つ! 簡単・最強子育て』(幻冬舎)です。
子育てをしながら実感したのが、「こうでなければいけない」という決まりは世の中にはないということです。ダイエットにおいても、「絶対こうしなければいけない」ということはありません。
『空腹リセットダイエット』でも、食べる時間を守ったほうがいいけれど、無理ならこうしたほうがいいよという抜け道を示しています。
できいてたらやっているし、太らないわけです。それは、妊娠中の私がよーく知っていますから。
「このままだと死んでしまう」この危機感がやる気スイッチを押すカギ
現在は研究を続けながら、管理栄養士としてクリニックでの栄養指導も行っています。病気を抱えている方たちですが、指導してもなかなか行動に移せない人も多くいます。痩せたいと口にするものの、「痩せないとヤバい」ということに気づいていないからです。
耳鼻科で勤務しているときの話です。鼻の手術をするにあたり、太っていると手術中に舌根沈下といって舌が落ちてしまうリスクが高くなるため、体重を減らしましょうと指導してきました。しかし、その方は言い訳ばかりでなかなか痩せなかったんです。このままでは手術が難しい状況になったので、「痩せないと麻酔を薄くするしかなく、痛みが強く出ますよ」と伝えると、その後は指導通りに食事を変えするすると痩せていきました。
脅すつもりではないのですが、「このままでは死んでしまうというくらい危機感を持たせないと、スイッチが入らない人の方が多いのが現実です。
これは極端な話ですが、悪しき習慣を断ち切るためのきっかけさえあれば誰でも変わることができると思います。私の場合、それが出産でした。
ダイエットをしようと思う人の多くは「痩せないとヤバい」と頭ではわかっていても、痩せたときのメリットと、痩せるためにすることのデメリットを天秤にかけ、デメリットのほうが勝ってしまうと挫折しがちです。いつも続かないという人は、メリットとデメリットを書き出してみるといいでしょう。
目標に一気に到達したいと考える人も多いのですが、小さな山を一つ一つクリアしていくほうが続きやすいと感じています。『空腹リセットダイエット』でも、まずは朝食を食べることを意識して1週間続けてみる。1週間できたら、次は食事内容を意識しながら1週間……と少しずつできることを増やしていけば、1カ月後には習慣化されているはずです。
第三者の声も励みになります。「やせたんじゃない?」というひと言で、もっと頑張ろうという気持ちがわいてくるもの。もし、周りにダイエットを頑張っている人がいたら、少しの変化でも声掛けをしてあげるのも、モチベーション維持に役立つと思います。
70歳、80歳も元気で過ごすためにも『時間栄養学』が役立つ
激太りしたときにお腹の中にいた子どもは、小学2年生になりました。私もお母さん8歳です。相変わらず「ま、いいか」の精神で肩の力を抜きながら子育てをしています。
家庭でも食事をしながら時間栄養学の話を自然としています。ある日、「夜に血糖値が上がると眠れなくなるらしいよ」というと、子どもは興味津々で「血糖値って何?」と聞いてきました。「甘いものを食べると血液の中に甘い成分が増えて眠れなくなるらしいよ」と答えると「そうか。お風呂上がりにアイスを食べるから眠れないんだ」と実体験を話してくれました。アイスをやめさせたかったので、ベストタイミング。「だったら、お風呂の後のアイスをやめてみたら。朝に食べていいから」というと、素直に実行。すると翌朝、「めっちゃ眠れたよ!」と早起きしてくれました。(アイスが食べたかっただけかもしれませんが)
小児肥満も増えていますから、子どものうちから体内時計のリズムを整え、健康的な体を維持することはとっても大切です。しかし、どうすればいいのかという情報はまだまだ広く届いていない状況です。
肥満や糖尿病などの生活習慣病を抱えている人だけでなく、健康な人でも栄養指導が受けられるシステムができれば、病気を未然に防げるのに……とさまざまな講演会で話しをするたびに思います。高齢化社会になり、健康寿命を延ばすことはこれからの課題です。『空腹リセットダイエット』が、心身ともに健康的な生活を送るためのヒントとなればうれしいです。
夜型は精神的に不安定になりがちという話もしましたが、ライフスタイルが多様化した現代において「朝」「夜」の概念は人それぞれです。夜にお仕事をしている人、シフト制の人にとっての「朝」があるのです。「絶対にこうしなければいけない」はありません。そのために、今までダメと言われていたことでもいい抜け道を探せるよう、まだまだ研究を続けていきたいと思っています。今は、太る原因のひとつ「夜食」の実験を行っています。食べることを禁止するのではなく、何を食べればいいのか、いい抜け道が見つかったらまたご紹介したいと思います。
『決まった時間に起きて食べるだけ 10時間空腹リセットダイエット』書誌情報
著者:古谷彰子
定価:1540円(税込)
仕様:A5判・144ページ
ISBN:978-4-07-454652-7
電子書籍
【Amazon】https://www.amazon.co.jp/dp/4074546523
【楽天BOOKS】https://books.rakuten.co.jp/rb/17428637
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